パルコ・兵庫県立芸術文化センター『TERROR テロ』01/16-28紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA

 観客投票で有罪・無罪が確定し、ラストが変わるという話題の舞台『TERROR テロ』。観て参加してきました~。面白かった!! 上演時間は約2時間55分、途中休憩15分と評議(観客の投票時間)10分を含む。

 「今、『TERROR テロ』と『アンチゴーヌ』を同時上演中のパルコは凄いね」と知人が言っていて、本当にそうだなと思いました。両方とも観客に問いを突きつけて、考えさせてくれる骨太の会話劇です。お薦めです!

テロ
テロ

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フェルディナント・フォン・シーラッハ
東京創元社
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 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
2013年7月26日、ドイツ上空で民間旅客機がハイジャックされた。犯人であるテロリストたちは、7万人が熱狂しているサッカースタジアムに飛行機を墜落させて多数の命を奪うと共に、世界的なニュースになることを目論んでいた。しかし、緊急発進したラース・コッホ空軍少佐は、独断でこの旅客機を撃墜する。
乗客164名の命を奪って、7万人の観客の命を守った彼は英雄なのか、犯罪者なのか。裁判は民間人が評決に参加する参審裁判に委ねられる。検察官による論告、弁護士による最終弁論を経て、判決は一般の参審員(観客)が決めることとなる。観客の評決によって、無罪と有罪の二通りの結末を持つ衝撃の法廷劇。
 ≪ここまで≫

 長いセリフを語り聞かせてくださる俳優さんに感謝しました。弁護人の橋爪功さんはチャーミング。そもそも橋爪さんが演出の森新太郎さんと『TERROR テロ』のリーディング公演をしてくださっていたんですよね。シーラッハ作品の上演に積極的で、私は『TABU タブー』も拝見しました。

 裁判長の今井朋彦さんは幕開けから観客の心をつかんで誘導し、厳かな空気を作ってくださいました。説明もはっきりと胸に届きます。橋爪さんの裁判内での敵にあたる検察官は神野三鈴さん。『アルカディア』『死の舞踏』と同様のどっしり&ズッシリの存在感で、情熱的かつ計算高い語り掛けは切り替えが見事。被告のコッホ少佐を演じた松下洸平さんは、『スリル・ミー』『十九歳のジェイコブ』『アドルフに告ぐ』『木の上の軍隊』などに続き、一目で松下さんとはわからない変貌っぷりを見せつけてくださり、惚れ惚れしました。若きエリート軍人であることが姿勢と体格から感じ取れて説得力があり、“まな板の上の鯉”状態の弱者の揺れ動く感情も見せてくださいました。コッホ少佐の上司役で証人をつとめた堀部圭亮さんも軍人らしさに納得できました。同じく証人で被害者遺族役の前田亜季さんは、他の役柄とは違い素直に感情を出す方向性を貫いて、一般の人々の心を伝えてくださったように思います。

 私が観た回は無罪190票、有罪173票(あ、174票だったかな…うろ覚えです)で、評決は無罪でした。

 ここからネタバレします。

 私は「有罪」に投票しました。前半始めの方の「ハイジャックから飛行機狙撃までに約50分間かかった。しかしスタジアムの観客を避難させるのには15分しかかからない」という検察官の言葉で、私的には即決でした。弁護人が証明したように、コッホ少佐もラウターバッハ中佐もスタジアムの観客の避難に責任があるわけじゃないし、彼らには避難を呼びかけることも遂行することもできなかったのでしょう。でも彼らの頭には「テロリストにハイジャックされた旅客機をどうにかすること」しかなかった。「7万人の移動」なんて全く想像しなかったという事実が明らかになりました。軍人、軍隊という仕組みについての、私の懐疑心がさらに大きくなりました。

 コッホ少佐に罪があるかどうかではなく、彼を有罪(または無罪)にすることが、現在と将来にどういう影響を及ぼすのかが、問題になってくるんでしょうね。判決後の裁判長の独白で少々怖くなりました。

 窮地に追い込まれ、たった一人で責任を取らざるを得なくなった時、私はどうするのか。コッホ少佐はそんな立場に突然、立たされたわけですよね。なんとかして、そういう境遇にならないようにしたい…(超~逃げ腰)。でも災害や困難はいつ降りかかってくるかわからないし、(私かもしれない)誰かが決断を下さなければならないわけで…。はぁぁ…。

≪東京、兵庫、愛知、広島、福岡≫
【出演】
弁護人:橋爪功
裁判長:今井朋彦
コッホ少佐:松下洸平
フランツィスカ・マイザー:前田亜季
ラウターバッハ中佐:堀部圭亮
検察官:神野三鈴
裁判所の職員(?):原田大輔
脚本:フェルディナント・フォン・シーラッハ
翻訳:酒寄進一
演出:森新太郎
美術: 堀尾幸男 照明: 佐藤啓 音響: 高橋厳 衣裳: 西原梨恵 ヘアメイク: 中原雅子
演出助手: 須藤黄英 舞台監督: 林和宏
宣伝美術: 東學 宣伝写真: 渞忠之 宣伝写真衣裳: 松竹衣裳 著作権代理: Meike Marx
プロデューサー: 栗原喜美子 / 尾形真由美 制作: 滝口久美 東京公演製作: 井上肇(パルコ) 
企画: 兵庫県立芸術文化センター 共同製作: パルコ 兵庫県立芸術文化センター 協力: 東京創元社
【発売日】2017/10/15
<全席指定>7,800円
U-25チケット:4,000円(観劇時25歳以下対象・当日指定席引換・
要身分証明書・一般発売日以降パルステ!・チケットぴあにて前売り販 売のみ取り扱い)
http://www.parco-play.com/web/program/terror/
http://www.parco-play.com/web/play/terror/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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