【レポート・俳優養成】新国立劇場演劇研修所「演劇研修所説明会」12/09新国立劇場演劇研修所

 9月に続いて、新国立劇場演劇研修所(⇒facebookページ)の説明会に参加しました。今年は9/30(東京・現地)、10/29(東京・新国立劇場)、11/25(兵庫)、12/09(東京・現地)と計4回開催されました。
 演劇研修所説明会のレポート⇒2015年12月2016年12月、2017年12月(このページ)

 新国立劇場演劇研修所は日本唯一の国立の俳優養成所で、授業は全日制(朝から夕方まで)で3年間返済不要の奨学金あり(2年次と3年次)。今年も募集人数は16人程度で、2年次への進級前に選考があり、12人程度に絞られます。

 ⇒【公式サイト】第14期生の募集内容(募集要項、願書はPDFファイルでダウンロードできます)
 ⇒【俳優養成】新国立劇場演劇研修所「14期生(平成30年度入所)募集」
 ⇒願書受付期間:2017年12月5日(火)~12月20日(水)(郵送必着)
 ⇒受験料:8,000円(税込。願書提出後、12月20日(水)までに振込)

 詳細は必ず公式サイトでご確認ください。
 願書は計3枚あり、書くことが多いです。早めに書き始めましょう!

 以下、私がメモした内容です。現役研修生6人が質問に答えてくれました。

 遅れてくる参加者を少し待って10:20ごろから開始し、最初に事務局からの説明があり、12時ごろまでで終了。後半は現役の3年生である11期生(男3人、女1人)と、2年生の12期生(男女1名ずつ)への質問タイムでした。

■事務局より
・授業料は3年間で55万円+税。
・奨学金は月額6万円(2年次と3年次のみ)。返済不要。
・奨学金は研修のための必要経費にのみ使えます(観劇料、戯曲や小道具の購入など)。食費や家賃、日々の交通費には使えません。
・第一次試験は1/17(水)、1/18(木)のいずれか1日で、日にちの選択はできません。午前中に筆記試験あり。
・第二次試験の時に健康診断書を提出していただきます。第一次試験の2日後が第二次試験なので、二次に進むつもりがある方は、事前に準備しておいてください。
・第一次試験の選考では、筆記試験よりモノローグを重視します。

【11、12期生との質問タイム(参加者が3つのグループ分かれ、研修生が2人ずつ各グループへと移動)】

■選考試験

●受験時のモノローグは何を選んだ?
【11期生】
・アルベール・カミュ作『カリギュラ』から選んだ。2009年に青森から東京に旅行している時に観て、自分が演劇を志すきっかけになった作品だから。
・自分は女性だが『写楽考』の蔦屋重三郎のセリフにした。高校の授業でやったから。高校では女生徒が多かったので自分は男性役をやることが多かった。男性も演じられる俳優になりたかったから男性のセリフを選んだ。
・自分が安心できるもの、実力が出せるものを持って行った。
・自分とコネクトしやすいモノローグを選ぶといいのでは。

●入所試験はどんな状態だった?
【12期生】
・2回受験した。1度目はただただ圧倒されてしまった。2度目は自分がそこに居ることに集中した。
・自分は大学卒業前と時期が被っていたので、とにかく忙しくて、なりふり構わない感じだった。駆け抜けた感じ。
【11期生】
・演劇愛をさらけ出す。ダダ流しにするのがいいと思う。

●履歴書に貼る写真はどうした?
【11期生】
・写真館で撮ってもらった。
・家の襖の前で家族にバストアップを撮ってもらい、全身は学校の壁の前で。
 (14期生の願書に必要なのは全身のカラー写真1枚のみ)
・服装は体にピタっとしてる方がいいと思う。体の線が見える方がいい。

■放課後の過ごし方/1年次から2年次への選考

●授業終了後の夕方の過ごし方について
【12期生】
・1年次は16時に終わるけれど、2年次は18時まで授業があるので、あと最低2時間は学校に居られる。その間に稽古をしたりもする。
・バイトに行ったり、観劇をしたり。月4~5本は観劇する。
・バイトは早朝5時からしてる人もいる。自分は派遣に登録して週末に働いたりしている。

●1年次から2年次への選考について(※12期生から始まった制度です)
【事務局】
・所長、副所長、コーチらが1年間の出席状況や提出物、発表などを細かく見て選考している。1年次の最後の方に面談あり。
・研修所を出た元12期生らは外部活動をするなどして、それぞれに大人になっている。現12期生にも彼らのようにがんばってもらいたい。
【12期生】
・1年次は特に選考を意識はしていなかった(忙しいし、課題に追われてそれどころではない)。
・同期と親密だったので、査定(選考)というやり方に最初は反感を持っていた。でも研修所を去った元同期が小劇場で公演をするのを観に行ったりして、彼らは他の道に進んだだけなのだと思えた。

■授業内容

●「戯曲」の授業について/何冊読むことになるのか
【11期生】
・河合祥一郎先生の戯曲分析の授業。戯曲を読んで自分の意見を言えるようになるために、3回に分けて8冊ずつ読むので、1年に最低24冊は読むことになる。読めば自然と他の本が読みたくなる。
・マイズナー・テクニックの藤野節子先生の授業。好きな本を誰かにプレゼントして、プレゼントされた人はそれを読んで感想を手紙で返す。それも含めると年間に30冊以上は読むことになる。
・思ったことを言葉にするために、観劇したらレポートを書くといった課題がある。

●2年次の「シーンスタディー」について
【11期生】
・質の高い上演を目指すのではなく、シーンを使ってスキルアップを目指す授業。仕上げが目的ではない。
・1年次に学んだテクニック(ヴォイス、マイズナー・テクニック、アレクサンダー・テクニークなど)を2年次で使ってみる。
・演出家の谷賢一さんの授業では戯曲『proof』を使った。途中で“会話をすること”に集中して取り組む方向に変わったため、発表時の上演時間は短くなった。講師が研修生の状態によって内容を変更してくれる。

●「歌唱」の授業について
【12期生】
・カラオケでうまく歌えるようにする…ような内容はない。音程指導や楽譜の読み方などはもちろん教えてくれるが、歌が上手くなるための授業ではない。俳優が舞台で歌うためのことを教えてくれる。例えば言葉をたてることや演技を歌に載せる方法など。

●「トレーニング」の授業について
【12期生】
・「トレーニング」の時間は文字通り筋トレをする。2時間の間に10分休憩を数回挟む。めちゃきつい。吐いた人もいる(笑)。
・柴田先生は栄養学に基づいた食事のアドバイスもしてくれる。
・付けた筋肉を使えるようにするメニューを各人向けに作ってくれる。
・1年次は与えられたものをやる。2年次は自分たちでやることになる。自分でチョイスしてできればいい。
・岡本健一さんの「体をさらす」授業があり、(下着は付けた状態で)裸になった。トレーニングをやってて良かったと思った。

●体調管理はどうしてる?
【11期生】
・筋肉トレーニングがいい。自分は入所当時はガリガリの体型だったけど、今は筋肉が付いた。おかげで風邪を引かなくなったと思う。
・筋肉は休めないといけないが、腹筋は毎日やってもいいと柴田先生に教えてもらった。3年次は授業がないから自分でやらないといけない。たとえば腹筋でも複数種類あって、30回を2セットずつとか毎日やっている。
・自分の内側の毒を出すようにするのがいい。研修中、ストレスで体調を崩す人が多いことに気づいた。自分でため込まないで出す仕組みを作った方がいい(大声を出すとか、他人と話すとか、筋トレするとか)。

●「体」にフォーカスした授業が多い気がします。「台詞術」を学ぶ授業はありますか?
【11期生】
・「台詞術」というより、「体」を使う発声や「体」を通して自分の声を発見する授業が多い。「台詞」だけを取り出す授業はほとんどない(だから外部とのギャップがあるのかもしれないが)。
・舞台に立つことは、セリフを言うこととイコールではない。セリフは結果。だからまず体をやるんだと思う。

■その他

●この研修所に入所を希望した理由/養成機関のメリット
【12期生】
・俳優がやるべきことを学ぼうとすると、歌、踊り、声、体について教えてくれる場を自分で探していかなければならない。でもこの研修所に入れば全て揃っているので、自分はただやるだけでそれが得られる。その環境が強みだと思う。
【11期生】
・養成機関のメリットは「自分は今回、作品発表に間に合いませんでした」と言えること。恥ずかしくない。取り繕わなくてもいい。現場だとそうはいかない。

●俳優に必要なものとは?
【11期生】
・どんな仕事もそうなのかもしれないけど、楽しさや喜びがないと続けられないと思う。人の目を浴びながら自分の心を開くのは怖い。でも心を開いた時の喜びがあるからできる。
・探求する喜びがあるかどうかが大事。演出家が怖くても、喜びがあればやっていけると思う。
・貪欲な好奇心が必要だと思う。色んな興味を持つこと。多岐にわたって知ろうとすること。知りたくなったら自分で調べる。いろんなことを知ろうとすることで、どんな役にもなれる。自分の役だけじゃなく他の役についても知ろうとする好奇心が大事。
・三田和代さんがある会見で「自分のような未熟者は…」とおっしゃっていた(驚いた)。俳優はそういうものなのだろうと思う。

■10期修了生である阿岐之将一さんらのツイート(ご参考まで)

研修生:川澄透子(11期生)、生地遊人(11期生)、小比類巻諒介(11期生)、椎名一浩(11期生)、中坂弥樹(12期生)、石原嵩志(12期生) 
http://www.nntt.jac.go.jp/play/training/young/

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