新国立劇場演劇『かがみのかなたはたなかのなかに(再演)』12/05-24新国立劇場小劇場THE PIT

 2015年7月に初演された長塚圭史さん作・演出・出演の親子向け舞台『かがみのかなたはたなかのなかに』の再演です。初日の上演時間は約1時間25分弱(途中休憩なし)。

 今回もスリリングで楽しくて、最後はやはり考えさせられました~。長塚さんに首藤康之さん、近藤良平さん、松たか子さんという豪華キャスト。何も知らずにご覧になるといいんじゃないかな~と思います。劇場へはお早目に!!

劇場入り口前で、新国立劇場のくまちゃんと記念撮影できますよ♪
劇場入り口前で、新国立劇場のくまちゃんと記念撮影できますよ♪

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
兵隊さんのたなかと、鏡のむこうのかなたは、おたがいの孤独に同情し、さみしさをなぐさめあう。
ある日たなかは、鏡の向こうのけいこにひとめぼれ。つられてかなたもけいこに恋をする。
向こうでかなたがけいこに近づくと、たなかはこちらでこいけに近づいてしまう。
けいこを取りあうふたり。それがだんだんうれしくなるけいこ。
鏡をはさんで、たなかとかなた、けいことこいけは行ったり来たり……。
はたして4人はどうなってしまうのでしょう?
 ≪ここまで≫

 パンフレット(800円)には上演台本がまるごと掲載されています。太っ腹! チラっと見てみたんですが、すごく面白い!七五調!!
 

ロビーに展示された舞台美術の模型↓です。美術:乘峯雅寛
ロビーに展示された舞台美術の模型です。美術:乘峯雅寛

 ここからネタバレします。

・詳しい目のあらすじ

 海兵のたなか(首藤康之)は一人暮らし。出征前に遺言状を残そうにも、手紙の宛先となる“愛する人”がいない孤独な若者です。ある時、自分とそっくりのかなた(近藤良平)と鏡越しに出会い、2人ともが同時に、可愛い女性けいこ(松たか子)と恋に落ちました。けいこにも片割れの女性こいけ(長塚圭史)がいて、二組の男女のデコボコの恋模様が笑いを誘います。

 男性2人は動きがシンクロし続けるのが見どころ。さすがはダンサー! たなかは真面目で、かなたにはサボリ癖があります。女性2人は最初から対照的で、けいこは可愛いいのに自信がなくて、こいけはいかにも「女装」とわかる外見だけど自信満々です。お揃いのデザインで色違いのワンピースがめちゃくちゃ可愛らしい!斜めのドレープがきれいで、すその揺れ方がいいですね。どんな材質なのかしら。

(写真左から)首藤康之、長塚圭史、松たか子、近藤良平 撮影:宮川舞子
(写真左から)首藤康之、長塚圭史、松たか子、近藤良平 撮影:宮川舞子

 男性2人はけいこと相談し、邪魔者のこいけを舞台奥の海に突き落としてしまいます。けいこは男性2人にアプローチされてご満悦。やがて「決闘して生き残った方とお付き合いします」などと、2人の対立を煽るようなことも言い出します。武器を持ってきて2人に手渡したりも。

 男性2人は臆病なせいか、片方を殺してしまうまでは戦えず、けいこにどちらかを選んでもらいます。けいこは最初にたなかを選びますが、たなかは寂しそうなかなたを見て、けいこを彼に譲ります。けいこが手に入って喜ぶかなたですが、彼も落ち込むたなかを見て、けいこを再びたなかに返します。男性2人に好かれて浮かれていたけいこですが、2人ともに差し戻されて微妙な心持ち。

 男性2人は相談して、けいこを“半分こ”にしようと決めました。上手袖からのこぎりを持ち出し、下手袖でけいこをバッサリ。真っ二つになったけいこはフラフラと下手から舞台へと登場。けいこの顔面と腹部には、彼女を左右に分断する線が真っ直ぐに引かれています。

 電話のベルが鳴っています。どうやら出立の日が来たようです。男性2人は旅の準備をするために下手に去りました。
 なんと、海に沈んだはずのこいけが再登場!ゲホゲホ言いながら、舞台に這い上がってきました。こいけは真っ二つにされたけいこを発見し、彼女を優しく抱いて、女性2人で下手奥に消えました。

 舞台に出てきたのはたなか一人だけ(と私は記憶しています)。彼は上手のドアから出征していきました。終幕。

(手前右から)首藤康之、松たか子 (奥右から)長塚圭史、近藤良平 撮影:宮川舞子
(手前右から)首藤康之、松たか子 (奥右から)長塚圭史、近藤良平 撮影:宮川舞子

・感想

 開演前のロビーに軍服姿の4人の俳優が登場! 私、すごくラッキーでした~♪ 首藤さんが優雅にイスに腰掛ける瞬間を目撃!長塚さんとは至近距離でしばらくご一緒!松さんとお子様(観客)の無言の語らいにも遭遇!

 初演に続き再演にも出てきてくれたピッツァの配達人(長塚圭史)が好き~。最初の訪問で「チェーっす」しか言わないのがイイ!首藤さんが上手の玄関から彼を家の中に引っ張り込むと、鏡の向こうでも同様に、近藤さんに引っ張られてピッツァの配達人(松たか子)が出てきます。長塚さんと松さんの動きがシンクロしていて、帽子と服を一気に脱がせたらワンピース姿に変身♪

 兵士は人殺しが仕事ですから、邪魔者は消せるし、欲しいものを手に入れるためには手段を選ばないんですよね。武器を使うのも当然です。内気だったけいこが徐々に付け上がって、兵士2人に人殺しを進めるのもショッキングです。彼女が真っ二つにされるのは自業自得とも言えますが、死を覚悟した人間(=兵士)の恐ろしさが際立つエンディングだとも思います。

 つぶさに、くっきりと変化していく松さんの演技が素晴らしいと思いました。長塚さんのコメディエンヌ振りは初演同様、とても楽しませていただきました。

※舞台写真は主催者よりご提供いただきました。
≪東京、新潟、兵庫、富山、大分、福岡2か所、広島≫
出演:近藤良平、首藤康之、長塚圭史、松たか子
作・演出:長塚圭史
振付・音楽:近藤良平
美術:乘峯雅寛
照明:笠原俊幸
音響:加藤温
衣装:伊藤佐智子
ヘアメイク:板垣亮弐
演出助手:渡邊千穂
舞台監督:大垣敏朗 髙橋大輔
演出部:鈴木サオリ 田辺雪枝 藤原秀明
稽古場代役:坂川慶成
うた:世田谷ジュニア合唱団
協力(前説):髙橋美帆 田村彩絵
制作助手:重田知子
制作:田中晶子
プロデューサー:茂木令子
芸術監督:宮田慶子
主催:新国立劇場
【発売日】2017/10/21
A席:おとな6,480円 こども(小・中学生)3,240円
B席:おとな3,240円 こども(小・中学生)1,620円
Z席(当日券):1,620円
http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_009659.html 
http://stage.corich.jp/stage/87350

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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