新国立劇場演劇研修所11期生試演会『ある階段の物語』10/28-31新国立劇場小劇場

 稽古場レポートを書かせていただいた新国立劇場演劇研修所11期生試演会『ある階段の物語』の初日を拝見しました。上演時間は約1時間30分、休憩なし。

 ストイックに徹した家族の群像劇になっていました…!スペイン演劇といえば劇作家ロルカが思い浮かび、熱い情熱や鮮やかな原色などのイメージを持っていたのですが、私の勝手な先入観だったようです。田中麻衣子さんの演出作は存在感のある創作音楽や鮮やかな配色の空間、奇想天外な物語が多い印象だったので、それも覆されたことに。いや~先入観はダメですね(笑)。


 新国立劇場演劇研修所は2018年4月入所の14期生募集に向けて、オープンスクールや説明会を開催します。ご興味のあるかたは是非。

 ・「14期生(平成30年度入所)募集」選考試験:2018年1/17-18、1/20、1/21※願書受付期間は12/05-20(郵送のみ)
 ・「演劇研修所説明会(10月&12月)」①10/29(10/27〆切)、②12/09実施(12/07〆切)(申込フォームあり) 
 ・「2017年・秋のオープンスクール(東京)」11/18-19開催※11/05〆切(郵送のみ・返信封筒同封)
 ・「演劇研修所説明会IN関西」ピッコロシアター中ホール(兵庫県)11/25実施※11/20〆切(専用フォーム又はFAX)

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
内戦前のマドリード、階段のある安アパート。
住人は金持ちのドン・マヌエルと娘のエルビラ以外は、中産階級下層に属している。
エルビラは二つ隣に住む文房具店の店員フェルナンドと結婚したいと思っているが、彼は三つ隣のカルミーナと愛し合っている。隣人の、工場で働くウルバーノもまた、カルミーナを愛している。ウルバーノは貧乏な労働者が団結し、組合に入って協力するべきだと主張し、フェルナンドは一人で戦い、自分だけで貧乏を抜け出してみせると言い返す。そして、時は流れて……。
 ≪ここまで≫

 稽古取材から三週間が経っており、当然ですが、色んな変化がありました。「全然違う人物になってる!」「あの場面はカットされたのか~」などなど。初めて通して観られたので、老いて死に至り、やがてまた生まれる命の円環も想像できました。

 クスっと笑えるところもあったのですが、個人的には笑いがもっと増えてもいいんじゃないかな~と思いました。たとえば物語が悲劇的でも、観終わった時に喜劇だったと思えるぐらいの後味が、私好みかもしれません(「これは紛れもない喜劇だ!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが)。

おなじみ、下級生のチラシアート。チラシの巨大版ですね。
おなじみ、下級生のチラシアート。チラシの巨大版ですね。

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13期生の絵画(自画像)も展示。これは面白いですね~。
13期生の絵画(自画像)も展示。これは面白いですね~。

 ここからネタバレします。

 美男のフェルナンド(バルテンシュタイン永岡玲央)はしっかり者のカルミーナ(高嶋柚衣)とめでたく結ばれたかと思いきや、金持ちのエルビラ(川澄透子)と結婚していたとわかるのが第二幕。第三幕ではフェルナンドとエルビラの息子フェルナンド(上西佑樹)が、カルミーナとウルバーノ(小比類巻諒介)の娘カルミーナ(金聖香)と恋仲に。双方の両親は非常に仲が悪く、2人の恋には大反対です。大げんかするアパートの住人たちから逃れて、若い2人が夢を語るのは、第一幕のフェルナンドとカルミーナにそっくり。2人を見守るフェルナンドとカルミーナの表情からは、明るい未来が訪れる気配は読み取れず。

 終わった途端、客席から「ペシミスティックな芝居だね」という小さな声が聴こえて、今日の感触だとそういう感想が出る気持ちもわかるなぁと思いました。照明が全体的に暗い目だったのも影響しているのではないでしょうか。俳優の顔に影が落ちて、表情が常にくっきりと見える状態ではありませんでした。そして音楽が少なかった!効果音もほんの数か所だった気がします。家族、親類、アパートの住人というとても小さなコミュニティーを、俳優たちの演技だけで立ち上げる演出意図だったのだろうと想像します。

 第二幕と第三幕の間には暗転がなく、庶民の他に武装した男たちも舞台上を歩く場面が挿入されていました。そこでスペイン内戦が起こっているんですね(パンフレットの田中さんの言葉より)。

【出演】新国立劇場演劇研修所第11期生
エルビラ:川澄透子 ドーニャ・アスシオン、カルミーナ(娘):金聖香 トリーニ:佐藤和 ロサ:篠原初実 カルミーナ(母):高嶋柚衣 パカ:田渕詩乃 ペペ、青年:生地遊人 ウルバーノ:小比類巻諒介 集金人、セニョール・ファン、マノリン:椎名一浩 フェルナンド(息子):上西佑樹 フェルナンド(父):バルテンシュタイン永岡玲央 ドン・マヌエル:紳士:山田健人 ヘネロサ:泉千恵(第6期修了)
【作】アントニオ・ブエロ・バリエッホ
【翻訳】野々山真輝帆
【演出】田中麻衣子(新国立劇場演劇研修所コーチ)
【美術】松井るみ
【照明】齋藤茂男
【音響】黒野尚
【衣裳】西原梨恵
【ヘアメイク】片山昌子
【演出助手】神野真理亜
【舞台監督】川田康二
演出部:川田崇 市川美花 ミハル 第12期生、第13期生
美術助手:平山正太郎
プロンプ:髙倉直人(10期修了生)
制作助手:高梨慶輝
技術監督:小西弘人
舞台・照明・音響操作:新国立劇場技術部 シアターコミュニケーションシステムズ・グループ フリックプロ
チラシデザイン:荒巻まりの(8期修了生)
演劇研修所長:宮田慶子
主催:文化庁、新国立劇場
制作:新国立劇場
A席3,240円 B席2,700円 学生券1,000円 Z席(当日券)1,620円
http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_010840.html

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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