市原佐都子さんが作・演出されるQ(キュー)の新作二人芝居を拝見。上演時間は約1時間25分。
男女の醜悪な共依存の関係を、徹底的にシニカルに暴いていきます。人間を突き放すような視線は暴力的なほど。それでいて生き物の体温や湿り気もじっとりと感じ取れます。市原さんらしくて痛快でした。際どい性描写があるので、これからご覧になる方はそのおつもりでどうぞ。
【追加公演決定】
好評につき、急きょですが『毛美子不毛話』の追加公演を行います。
追加公演日程:12/19(月)14:00
ご予約はこちらから https://t.co/WIo749NcgD
公演間近の決定で恐縮ですが、ぜひたくさんの方に観ていただきたいです。— Q(キュー) (@QQQ_9) 2016年12月17日
【毛美子不毛話】
感想を更新しました。「女型の奇行種」「人形劇みたい」「笑った」「夢に出そう」「理解に苦しむ」「ゴジラ 対 モスラ」など。みなさま、ご来場誠にありがとうございました。https://t.co/KVeP0ifSqC— Q(キュー) (@QQQ_9) 2016年12月29日
⇒CoRich舞台芸術!『毛美子不毛話』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
振り返ると、毛美子は口に靴下を咥えその他様々な衣類をでたらめに身に纏い 捨てきれないゴミカスを身体中に付け全くさっぱりしない姿で清々しい顔して 声高らかに叫んでいた。頭の中であの洗脳歌「路地裏のチャイニーズ」が流れている。 毛美子は出会った頃と相変わらずあの歌のように安いヒールのパンプスで靴擦れし 踵から血を流すことを繰り返している。怒りや性欲はすぐ燃え上がってはすぐ冷めて、 遠くのロハスはソーラーで常にじんわり温まっているというのにと、 きっとどこかの出会ったこともない人たちのことが思われてくるのだった…
≪ここまで≫
白い壁に囲まれた、何もない空間。出ハケは下手奥の1か所のみです。
普通のOL毛美子(永山由里恵)は本革のパンプスを求めて路地裏をさまよい、色んな人々と遭遇します。可愛らしい女性がいかにも会社の事務員らしい制服姿で、合皮の黒いパンプスを履き、変顔で七転八倒する姿は痛々しいほど滑稽です。相手役の武谷公雄さんの七変化っぷりも見どころ(笑)。よくもあそこまでヤる!と感嘆せざるを得ません。
下品過ぎるだじゃれが面白いです。女性の作・演出家だから、ここまで振り切れられるのかもしれないと思いました。
ちゃんと演技をして撮影した映像の、チープな味わいが効果的でした。
演技方法については、観客に話しかけているような体勢ではあるものの、心は開いていないので、無数の段取りを必死でこなす器用さを観察するにとどまりました。たまたま私が観た回がそういう固い状態だったのかもしれません。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
Q( @QQQ_9 )「毛美子不毛話」
舞台写真 pic.twitter.com/1JKGbaMpDf— さとう みずき (@mimimi310ki) 2016年12月23日
毛深い毛美子は母親に頼んで(お金を出してもらって)腋毛を永久脱毛しました。その時に脱毛をしない選択をした別人格(武谷公雄)が生まれ、路地裏で出会います。お互いを「わたし」と呼び合う2人は対照的で、女性の隷属の象徴ともいえるパンプスを欲する毛美子とは違い、もう一方の「わたし」は素足です。
毛美子は酔った勢いで寝てしまった、年上の同僚(武谷公雄)と付き合うことになりますが、彼は巨根が自分の自信の根拠だと抜かす、女性蔑視がはなはだしいクソヤローです。「巨乳をひけらかす女のように、巨根を見せびらかしたい、ペニスが胸にあったらいいのに」と言い出す始末。
胸から飛び出したペニスを、首から上だけの女性のマネキンの口に入れた状態で歩く、変態おじさん(武谷公雄)が登場。「これで自尊心を100%復活させられる」と堂々と言い放ち、失笑を誘います。男性の帰巣本能的な甘えん坊体質や独占欲、支配欲が満たされる状態ですよね。この場面の武谷さんの演技には、鬼気迫るものがありました(笑)。いや~ひどい。ひどすぎる(褒め言葉です)。
毛美子はとうとう本革のパンプスを販売しているエセ中国人(武谷公雄)を見つけます。100万円という高額を吹っ掛けられますが、購入。とうとう本物を手に入れ、世に求められる理想的な働く女性像に近づけたことを喜びます。すると毛美子と似た制服姿の「わたし」(武谷公雄)が再来。豊満な胸からペニスが突き出ており、変態おじさんと合体したような人物(?)でした。そういえばマネキンもおかっぱ頭だったんです。
「わたし」はナンパされて肉体関係を持った男性(=変態おじさん)のペニスをかみちぎって、食べた、すると胸からペニスが生えてきたと言います。自由で自立した女性だったはずですが、制服を着てパンプスを履き、何も考えずコピーを取ってお茶を淹れる日常に耽溺していました。毛美子は彼女を絞め殺します。
毛美子以外の人物は武谷公雄さんが演じており、どうやら誰もが毛美子の想像上の人物で、もしかしたら全員が彼女自身だったのかもしれません。「わたし」がポケットに入れていたバター入りのコッペパンをほうばり、ガツガツかじって飲み込む毛美子。コッペパンは変態おじさんのペニスと重なります。毛美子は「自分の体を食べた」という発言もしますので(後から否定するけれど)、心身も、吐しゃ物や排泄物も、空間と一緒に丸ごと、1人の女性と合体したような感覚がありました。
「合皮のパンプスしか売ってない」という設定に深く頷きました。安い偽物ばかりで本物が手に入らないんですよね。質が悪くても安いものを求めるから、高くて良いものが市場からなくなっても仕方ないです。やっと本物を手に入れたと思っても、審美眼が育っていないから偽物をつかまされてしまうという結果にも首肯。
両方のひざこぞうが赤くなっていた永山由里恵さん。どうぞ怪我に気を付けて、体を大事にしてください!
出演:武谷公雄 永山由里恵
作・演出:市原佐都子 舞台美術:中村友美 舞台監督:井草佑一 照明:高橋文章 宣伝美術:平松るい 作曲:額田大志 映像制作:森すみれ 舞台写真:佐藤瑞季 記録映像:深田隆之 企画制作:Q 制作:大吉紗中里 制作協力:杉浦一基
予約2500円 当日3000円
http://qqq-qqq-qqq.com/?page_id=7
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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