
女優の那須佐代子さんが支配人をつとめるシアター風姿花伝の、2作目のプロデュース公演です。昨年の『ボビー・フィッシャーはパサデナに住んでいる』(⇒稽古場レポート)は読売演劇大賞の最優秀演出家賞、優秀作品賞、優秀女優賞を受賞。演出は前回に続き上村聡史さんです。初日の上演時間はカーテンコール込みで約1時間半弱。
激戦地を舞台に、意識のない夫の介護をするイスラム教徒の女性(那須佐代子)の語りで進行しますが、一人芝居だという印象はありませんでした(実際のところ、三人芝居です)。美術、音響、照明が高品質で、小空間で濃密なストレート・プレイを味わうことが出来ました。
12/18(金)14時の回の終演後には、シアター風姿花伝のレジデントアーティストである小川絵梨子さんを迎えたトークがあります。思えば小川さんが同劇場で『帰郷 The homecoming』を演出されたのが2013年でしたね(⇒2013年の記者発表)。「シアター風姿花伝プロデュースなら上質のストレート・プレイを観られる」というブランドの確立に、また一歩近づいたのではないかと思いました。
海外作品で問う現代ニッポン 女性抑圧、ネグレクトがテーマ:朝日新聞デジタル https://t.co/7LPy6qnWZ9
— sugiura taisuke (@mukaibaba) 2015, 12月 10
【悲しみを聴く石】
本日12(土)14:00の回は、当日券ございますので、ご来場お待ちしております。
ご観覧迷れている方は、公演の紹介記事・ご感想をまとめましたので、ご参考になさってください。
[togetter:ご感想まとめ] https://t.co/rgeUj74hEb
— シアター風姿花伝 (@fuusikaden) 2015, 12月 12
⇒Yoz Art Space「『悲しみを聴く石』 ──「今」に放たれた魂の叫び」(2015/12/13加筆)
⇒CoRich舞台芸術!『悲しみを聴く石』←こりっちでカンタン予約!
≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
現代、紛争の激しい地域。
コーランの祈りを唱え続ける女。
女の傍らには、負傷し、もはや意識をなくし横たわってる夫。
回復の兆しが見られない夫に向かって女は語り始める。
男の前では決して語られなかった積年の思いを。
激しさを増していく戦況、追い込まれていく、極限状態の中で、女が辿り着く結末は・・・
第22回読売演劇大賞優秀作品賞を授賞したシアター風姿花伝が立ち上げる、戦争と女の物語。
≪ここまで≫
男女の関係については、いちいちもっともだと頷いて、共感して観ることになりました。どうやら男性にはかなり手厳しいもののようですが、あれが女性の本音だと思っていただいていいのでは…。
【風姿花伝プロデュース公演】
本日11/25(水)読売新聞夕刊に、12/11から上演いたします『悲しみを聴く石』について、演出の上村聡史、出演の那須佐代子のインタビュー記事が掲載されております。 pic.twitter.com/jDu7dp8G3W
— シアター風姿花伝 (@fuusikaden) 2015, 11月 25
ここからネタバレします。
男女のセックスについての話でもあるので、俳優の体を見て味わう演劇になったことで、生々しく、切実に訴えかけられた気がします。夫(中田顕史郎)と若い兵士(清水優)の対比は映画「そこのみにて光輝く」と重なり、女(那須佐代子)が若い兵士(清水優)に手ほどきをする関係から、ペドロ・アルモドヴァル監督の映画「ライブ・フレッシュ」を思い出しました。私は両方ともいい映画だと思っています。
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妻は最初、動かない夫のせいで自分が逃げられないこと等を恨んでいましたが、彼に対して直接恨みつらみをぶちまけていくことで、抑圧されきた人生で初めて、自分の心が健やかになったことに気づきます。やがて妻は夫こそが「悲しみを聴く石」であると思い至り、T字型の舞台を取り囲んでいた白い紗幕が取り払われ、舞台の全てが観客に見えるようになります。
※「悲しみを聴く石」:人々が辛いこと、悲しいことを黒い石に向かって語り続ける。やがて石が砕けた時、人々は苦しみから解き放たれる。
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
登壇:上村聡史(演出)、岩切正一郎(翻訳)、那須佐代子、清水優、中田顕史郎
※ワインやお茶などの飲み物が観客にも振る舞われました。登壇者もワイン片手に。
説明(上村&岩切):2008年にフランス最高峰の文学賞ゴンクール賞(日本の芥川賞にあたるかも)を受賞したアティク・ラヒミの小説が原作で、日本では白水社から出版されています。ラヒミはアフガニスタン人でフランスに亡命。この小説はフランス語で書かれています。
「サンゲ・サブール」という題名で映画化もされており(日本未公開)、ジャン=ルネ・ルモワーヌによる戯曲もあります。今回の日本語台本は戯曲を基に、小説からも引用して新しく作り直したと言っていいものです。
那須:小説も戯曲も男性が書いている。でも主人公は女性。あのような激しい戦火で、ほぼ植物状態にある夫を見捨てず、妻がたった1人で介護しつづけるというのは、ある意味ロマンティックな(男性ならではの)設定では。彼女が夫をすぐに見捨てて家を去り、娘たちを守るという選択肢もあったはず。
那須:(小説も映画もある作品を舞台化にするにあたり)その場に居て(観客が)体を感じることも大切だと思う
上村:アルトーの「体に始まり、体に終わる」という言葉もある。
上村:「神」という人間の創造物との距離感を考察したいと思った。
平成27年度 第35回 日本照明家協会賞
シアター風姿花伝プロデュース
「悲しみを聴く石」奨励賞 受賞致しました。
ありがとうございました。
日本照明家協会 HPhttps://t.co/NAk1RnQg6K pic.twitter.com/5JQ5EkeCyC
— 松本大介 (@matsu_d_room) 2016年5月13日
※原題「SYNGUÉ SABOUR(サンゲ・サブール)」はペルシア語で「忍耐の石」。
シアター風姿花伝・風姿花伝プロデュースvol.2
出演:那須佐代子、清水優、中田顕史郎
原作:アティク・ラヒミ、脚色:ジャン=ルネ・ルモワーヌ、翻訳:岩切正一郎 演出:上村聡史 美術:乘峯雅寛 照明:松本大介 音響:田中亮大 演出助手:稲葉賀恵 舞台監督:矢島健絵画:佐和子 フライヤーデザイン:チャーハン・ラモーン Web:小林タクシー(ZOKKY) 台本協力:関口涼子(「悲しみを聴く石」白水社) 票券:会沢ナオト 制作:斎藤努 中山大豪 プロデューサー:シアター風姿花伝 協力:鈍牛倶楽部 株式会社COME TRUE 白水社 著作権代理:(株)フランス著作権事務所 企画・製作:シアター風姿花伝
【発売日】2015/10/04
前売:4500円
当日:4900円
平日夜割引:4000円
<シアター風姿花伝のみで取り扱い、枚数制限>
シニア(65歳以上):4000円
学生:2000円
高校生以下:1000円
トークゲスト:
12/11(金) : 上村聡史(演出)岩切正一郎(翻訳)那須佐代子、清水優、中田顕史郎(キャスト)
12/18(金) : 上村聡史、小川絵梨子(レジデントアーティスト) 那須佐代子
12/19(土)19時半の回 : 上村聡史、長田育恵(てがみ座/2015年度プロミシングカンパニー)那須佐代子
http://www.fuusikaden.com/kanashimi/index.html
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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