演劇系大学共同制作『カノン』09/11-15東京芸術劇場シアターイースト

カノン
カノン

 桜美林、玉川、多摩美、桐朋学園、日大という東京演劇大学連盟5大学(演大連)による企画の第3弾です。快快の野上絹代さんが野田秀樹さんの2000年初演戯曲『カノン』を演出されます。メルマガでもご紹介していました。⇒オーディション告知

 やはり学生なので演技は拙いですが、大道具、小道具を含む美術や衣裳が凝っており、野上さんの演出が面白かったです。戯曲に込められた意図を初めて理解できたような気もします。上演時間は約2時間弱、カーテンコールが3回。野上さんにはまたストレート・プレイを演出してもらいたいです!

 明日9/14はシンポジウム「カモン」が開催されます。詳細は公式サイトでどうぞ。

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 ある大きな絵画をめぐるお話で、美術のモチーフは絵画や額縁になっています。

 ここからネタバレします。

 ≪あらすじ≫ ネタバレしています。
 判官家の見張り番の太郎は盗賊団の美人リーダー沙金に魅了され、スパイとして盗賊団に潜入する。やがて盗みを犯し、人を殺した太郎の心のタガははずれ、犯罪はエスカレート。太郎の弟の次郎も一味に加わり、自由奔放な沙金との命がけの三角関係も生じて、集団は瓦解していく。彼らを見守る一匹のメス猫が語り部となり物語は進む。
 ≪ここまで≫ 

 芥川龍之介作『偸盗(ちゅうとう)』を基にした戯曲で、テーマはあさま山荘事件。2000年に観た時は全然わかってなかったですね、私…(汗)。でも今回は野田さん特有のダジャレなどの言葉遊びや、時間や距離を広げていくセリフに頭をきゅるきゅるさせながら、楽しむことが出来ました。NODA・MAP版よりセリフをゆっくり話してくれているおかげもあると思いますが、初演からもう15年なので、私が年を取って少しは理解力が増したのかも?…いえ、きっと野上さんの演出のおかげもあると思います。

 司法を牛耳っている判官が大切に所持していたのは、ドラクロワの絵画「民衆を導く自由の女神」。中央に描かれた女性の右手には自由の象徴としての三色旗がありますが、左手には銃を持っている。太郎たちが盗もうとしていた「自由」とは、絵画の裏に隠されていた「銃」だったとわかります。自分の自由のために敵を殺すことを正当化する、戦争の歪んだ姿ですよね。判官の後ろ盾が軍事力だったこともわかります。

 窃盗団が籠城した判官家に巨大な鉄球がぶち込まれ、紙吹雪が舞い散るクライマックスのカオスは、あさま山荘事件の最後を連想させます。窃盗団のメンバーらは次々と着物風の衣装を脱いで、Tシャツと長ズボンというイマドキの若者の服装へと変わりました。そして脱いだ衣裳を床に捨てて、舞台から降りて客席通路を歩いて去っていくのです。徒党を組んで熱狂し、同類の印として似た服に身を包んでいた若者たちが、夢から覚め、服を脱ぎ捨ててちりぢりに別れていく。歴史もののファンタジーから現代劇へと見事につながりました。

 スタッフワークが凝っていて、見どころが多かったです。額縁を使った場面転換や、背丈30cmぐらいの人形を使った人形劇、コミカルな影絵もありました。布の使い方も良かったですね。たとえば最初に判官家になる場面では、帯のような長い布を2枚、コロコロと床を転がして広げて、2本の線で空間を作っていました。その布は後で、判官の愛人(?)たちをとらえる綱として使われます。あと、絵画からちゃんと血が流れた時は、えらそうな言い方ですみませんが、学生なのにすごいなと思いました。演劇ならではの工夫と地道な手作業が作品を躍動的かつ立体的にしたように思います。

 ★記録集が作成され、私のレビューも掲載されました。ありがとうございました!(2016/03/27加筆)

演劇系大学共同制作vol.3 クレジットは公式サイトより転載。
【キャスト】
太郎       :今川諒祐
沙金       :秋草瑠衣子
天麩羅判官    :小島彰浩
次郎       :大橋悠太
猫        :小林風花
刀野平六     :瘧師光一郎
猪熊の爺     :大石貴也(新進演劇人)
猪熊の婆     :青木笑夏
海老の助     :八木光太郎(新進演劇人)
十郎坊主     :小池琢也
鳥賊蔵      :須藤瑞己
蛸吉       :鈴木佑一郎
穴子郎      :久保賢大
八海山      :後関貴大
お通し      :奥萌
保険のおばさん1 :牧野萌
保険のおばさん2 :熱田貴子
保険のおばさん3 :吉田恵 
侍        :吉次匠生
女1       :牧野萌
女2       :三浦こなつ
女3       :河合祥子
女4       :小黒沙耶
女5       :長原茉穂
女        :渡邉紀穂
赤髭       :南煕貴
屋敷の男     :山本祐路 吉次匠生
【スタッフ】
脚本:野田秀樹
演出:野上絹代
美術プランナー:山﨑美恵
美術     :鬼木美佳 小山七海 齊藤夏紀 山本菜央
衣裳プランナー:土田寛也
衣裳     :杉本麗奈
照明     :阿部百衣子 大久保知美 大下ゆい 大出美香 後藤麻衣
        藤田千賀子 松田桂一 
音楽     :渡辺大輝
音響プランナー:稲葉美穂 
音響     :中村暁華音 若林なつみ
テクニカルマネージャー:井関周平 加藤由奈
舞台監督   :青木来美
舞台監督助手 :飯田瑞紀 小田梓紗 小出実樹 小林遥奈 杉山果穂
演出助手   :林慧仙 渡部寛隆
制作     :亀海さやか 越渡眞子 小島侑香里 関口彩香 久湊藍 平野葉子
宣伝美術   :中村暁華音
【アドヴァイザー】
美術:鈴木健介
衣裳:石橋 舞
照明:金英秀 高橋英哉
音響:鈴木はじめ
ムーブメント:木佐貫邦子
舞台監督:白神久吉
制作:穂坂知恵子 
宣伝美術:則武弥
【発売日】2015/07/01
日時指定 全席自由 前売り・当日同一料金
一般2,500円 大学生1,500円 高校生500円
http://endairen.net/canon/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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