【非公式レポート】本屋B&B「谷賢一×徳永京子×田中大介「シモキタでフクシマと演劇を思う夜」」11/27本屋B&B

 谷賢一さんによる戯曲『福島三部作』(而立書房)刊行記念のトークイベントに伺いました。登壇者は谷さんと徳永京子さんと田中大介さん。20時から計2時間で最後に質疑応答あり(休憩10分を含む)。

 下北沢の本屋B&Bに初めて伺ったんですが、とてもホっとする空間でした。今度は飲める時に行ってビールをいただきたいなー(B&BはBook and Beerの意味とのこと)。

 11/10の「『従軍中のウィトゲンシュタイン』語りえぬことを語る夜」に続き、谷さんにサイン↓していただきました。

戯曲 福島三部作
戯曲 福島三部作
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谷 賢一
而立書房 (2019-11-10)
売り上げランキング: 5,924

 
 徳永さんのトークイベント↓は明日12/28(木)19時半~です。


 谷さんは12/1にも登壇↓されます。

 谷さんの劇団の新作公演↓は12/12開幕。

 以下、私はメモした内容です。正確性は保証できません。

 田中:自作者と評論家の距離について
 谷:(昔は批判に苦しんだが今は)どんな声でも話題にしてくれるだけでありがたい。ものごとの見方を多様化してくれる。

 谷:舞台の上演時間は100~120分ぐらいが(自分が観る時に)心地いい。それを目指すようにしている。戯曲だと35000~40000字弱ぐらいという目分量がつくようになった。

 徳永:『福島三部作』で取材をされたが、戯曲にするにあたりカットする量が多かったのは?
 谷:一番カットしたのは第三部。取材したものを全て上演するなら三倍以上の上演時間になると思う。舞台が現代だったことも理由のひとつ。

 谷:2016年から福島取材をした。自転車で旅をした。先入観が最もよくない。先入観こそ復興の一番の邪魔。曇りなき眼(まなこ)で見られるように(計画は立てなかった)。話しかけると100人中100人が、自分から地震や原発の話をしてくれる。無作為抽出ができた。

 谷:父は“風”の専門家で、たとえば原発の換気用の機械にかかわっていた。日本中の原発を回っていて、出張費が高いらしく地方に行く時は楽しそうだった。お土産もたくさん買ってきてくれた。

 谷:『福島三部作』は1万人を超える動員になった。チケット代が1枚4000円なので、ざっと計算すると4000万円規模の事業。劇団にとってものすごく大変。たやすく再演はできない。

 徳永:第一部から第三部で時代、メディアの変化、舞台表現の変遷を描いていたのでは。
  ※徳永さんのツイッターでの貴重な指摘に谷さんは大喜び。それが今回のトークにつながった。
  ⇒「徳永京子さんの福島三部作へのご指摘について

 谷:freeMLがなくなることが発表された。ツイッターだってなくなるかも。10~20年で大量のログが消える可能性。書籍になることの大切さ。
 徳永:岡田利規さんが「本になればどこかには残る可能性がある」と。
 谷:同感。日本には国会図書館という素晴らしい施設がある。2冊の本が出て親がとても喜んでいます。

 
 徳永:劇団員を増やすことについて。
 谷:今は55人態勢。1000人にしたい。200人になるとブレイクスルーがあるのでは。人間が付き合えるのは150人ぐらいらしいので。
 田中:阿佐ヶ谷スパイダースもそうだけど、あくまでも特殊な例ですよね。
 徳永・谷:(同意)

 谷:演劇人はオファーがないと仕事ができない。自由が脅かされている。自分たちで公演を打てる体制を盤石にしたい。世の中には演劇をしたい人が、想像しているよりも多い。巻き込みたい。
 徳永:やる人=観る人になるとマッチポンプでは。
 谷:平田オリザさんが言うには、ピアノの先生みたいな人が増えればいいと。自分で演奏(演技、劇作、演出)しなくても、教えることができる人になる。
 徳永:ままごとの柴幸男さんも各地には演劇をしたい人がとても多く、そこに可能性があるとおっしゃっていた。
 谷:何かしら演劇に触れられる時間を増やしたい。演劇はスペシャル。表現の手法のひとつとして演劇があることを伝えたい。そうでないと演劇の未来は危ない。今は表現欲求をくみ取ってくれるメディアは多い(YouTubeなど)。演劇に青春を費やす人は減る。教育に組み込まれてほしい。

 田中:オーディションへの応募者が多いそうですね。
 谷:2~3日で200~300人集まるのでそこで締め切る。1か月もあれば自分の劇団でも1000人は来ると思う。俳優同士でユニットを組んで公演を打てばいいのに。

 徳永:オーデイションには集まるけど劇団員募集だと来ない。
 谷:そのとおり。
 徳永:今の若者の間では一人ユニットが増えている。公演ごとにスタッフ、キャストを集めている。
 谷:問題だと思う。双方にメリットない。若い人たちに多いが、一回ずつ違う劇団に出演しても得られる知識は知れてる。せめて3~5回は同じ演出家と仕事すればいいのだが。一回で盗めることはない。スタンプラリーみたいに色んな劇団に出ても成長しない。作り手の立場からしても、1回では俳優の魅力を引き出せない。パブリックイメージや見た目の特徴を使うぐらいしかかできない。今の若い人は群れたがらない。一人でいたがる。それは生産的でない。

 徳永:集団創作は嫌な面も見せ合わないと。
 田中:演劇はまさに継続性で語られるべき。稽古と本番があるし。一回きりでさようならでは進歩がない。
 谷:次回の『マクベス』は6人の出演者のうち半数が10年以上一緒にやってる俳優。酸いも甘いもかみわける。10年は長すぎとしても、3回一緒に仕事すると関係は変わってくる。複数回かかわって、俳優の深みを出したい。

 谷:『マクベス』は18シーンのうち17シーンのミザンスがついたところ。6人で全シーンができることは確認できた。自分は『マクベス』をやるのは4回目。大学では全編上演(ヘカテの場面のみカット)、次は2人マクベス(⇒稽古場、ゲネプロ写真(2012年)懐かしい…)、その次は佐々木蔵之介さんと1人マクベス。マクベスをカットさせたら日本一だと思う(笑)。

 徳永:マクベスは魔女に預言されたのだから、何もしなくても王になれるはず。そこがいつも疑問。
 谷:今回の僕の解釈だと、彼はただ待っているだけでいることに、耐えきれなくなって手を下してしまう。

 谷:脚色はしているが、すべて『マクベス』のセリフを使う。シェイクスピアが書いていないセリフは使っていない。最後に、原作にはないセリフを加えた。ある有名人の言葉を一行足した。意外なオチになっています。シェイクスピアは400年やられているので、原作からの逸脱も許される。懐が深い。『マクベス』はある独裁者の話。現代社会では、独裁者が巧妙なやり方で、あちこちの社会で幅を利かせている。今作も権力と独裁者の話になる。よくご存じの方にも楽しんでいただけると思う。

 谷:作劇をオチ(お尻、結末)から考えるようになった。『福島三部作』もそう。昔は最初を大事にしていたが。3~4年前にディヴィッド・ルヴォーと仕事をした。第一稿を全て書き直せと言われて、彼の家に行き、劇作講座を受けた。主人公がどう旅して、生まれ変わるのか。この人物はこの物語で何を手に入れるのか、どう変わったのか。プロットを立てる作業を教えてもらった。ハリウッドの脚本術を勉強したこともある。三部構成で最終的にどう変わるのか(を骨子にする)。
 徳永:それで執筆は早くなりましたか?
 谷:はい。昔は最初から書き始めて迷っていたが、プロットが立つと早い。

 徳永:最初から書き始めて、迷って、苦しんで…というタイプの人も多い。
 谷:僕のセンスと才能では世の中とは戦えない。マスと戦っている人がどうしているのかを盗んできた。武器を借りてきた。5年ほど前に物語の普遍法則があるのではないかと思った。大多数の人に伝わるお話の仕方、一般的な方法があるんじゃないかと。プロットの立て方が変わった。
 谷:1~2万人に向けたお芝居を、作家の満足だけで書いていいわけがない。大勢の人を納得させないと。あちこちで学んで習得していった。

 谷:10年前から考えていた。アートとしての価値があれば助成金がもらえて、動員1000人規模の公演でも収支はOK。そういう人にはなりたくないと。やはり木戸銭をもらって生きているので。自分は1万人、いや10万人に観てもらいたい。演劇はヤバイ(ぐらい面白い、凄い、スペシャル)と伝える一助になりたい。自分なりのやり方を見つけて、多くのお客さんと戦えないとと思い、苦しみながら、自分のリビドーとマスの欲求との一致点を探して見つけてきた。

 田中:谷さんにはいろんな先生、先輩がいる。
 谷:自分は天才型の作家ではない。高校に入って演劇に出会い、自分の仕事にしたいと思った。向いていないのに。だから大量の本を読んで、人の技術をパクった。昔からビートルズが好き。彼らは同世代の遺産をロックに注ぎ込んで昇華している。4人が他の音楽を吸収しながら自分たちのオリジナルを作ってきた。人の遺産を吸収する方が自分のオリジナルを作りやすいのでは。先行の演劇の遺産をどううまく使うか。観客の心にクリーンヒットする60~70年代の演劇手法も残っている。アップデートして演劇の魅力を紹介したい。

 質問:『福島三部作』を1年間に3回に分けて再演しては?
 谷:再演よりも、2020年の話として第四部がある気がしている。2020年に常磐線が全線復旧する。双葉町と大熊町に一般人が入れるようになる。大きなブレイクスルーがある。

 徳永:常磐線に乗って芝居が観たい。
 谷:平田オリザさんと柳美里さんが「浜通り演劇祭」をやる。僕も関わる予定。

 谷:柳美里さんのエッセイでシェイクスピアを知り、高3から大学1年の時に読んだ。大学1年の時に人生で初めて~(書けない)~をして、地獄の経験だった。(それまではどんな悪さをしても自分が正しいと思っていたけれど)自分で自分が悪いとわかっていることをやってしまった。常にひやひやして、心の平穏を乱された。
 徳永:「眠りが死んだ」?(笑)
 谷:はい、眠りは死にました(笑)。人間は闇の方向に引き込まれていく。嘘は雪だるま式に増えていく。心が汚染されていく。嘘が嘘を、暴力が暴力を呼ぶ(まさに『マクベス』そのもの)。

下北沢B&Bインストアイベント 谷賢一×徳永京子×田中大介「シモキタでフクシマと演劇を思う夜」
戯曲『福島三部作』(而立書房)刊行記念
前売1500円+ドリンク500円(共に税別)→2200円
当日2000円+ドリンク500円(共に税別)→2750円
https://twitter.com/book_and_beer/status/1190145384930131969
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/012m9e10ksv13.html

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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