東京芸術劇場『お気に召すまま』07/30-08/18東京芸術劇場プレイハウス

 シェイクスピアの喜劇を熊林弘高さんが演出されます。上演時間は約2時間40分、途中休憩20分を含む。

 セリフをとことん下ネタに落とし込む翻訳、演技で、遊びたっぷりの上演でした。通路だけでなく客席内も使いまくり!劇場ならではの体験ができました。

≪あらすじ≫ https://www.asyoulikeit.jp/story ネタバレしています。
青年オーランドー(坂口健太郎)は、ロザリンド(満島ひかり)と恋に落ちるが、公爵に目をつけられ、実の兄オリヴァー(満島真之介)に命を狙われて森に逃げる。同じくロザリンドも、おじである公爵に追放されることに。
オーランドーを追って、従妹で公爵の娘シーリア(中嶋朋子)と、召使のタッチストーン(温水洋一)を伴い森に向かう。女道中では危険だからと、ロザリンドは男装して”ギャニミード”と名乗る。

森で暮らすオーランドーはロザリンドのことばかり想っている。
そこに”ギャニミード”が登場し、その恋の悩み相談に乗る。ついには「自分をロザリンドだと思って口説いてごらん」と言い、オーランドーは、彼がロザリンドと知らずに思いのたけを告白。二人の恋愛ごっこは次第にエスカレートして……。

一方、オーランドーを追って森に入ってきたオリヴァーは、シーリアと出会ってたちまち恋に落ちる。二人は結婚することに……結婚式の日、そろそろ恋のゲームも潮時と名乗りでたロザリンドをオーランドーは強く抱きしめる。
召使や羊飼いらの恋のさや当てが展開した森で、4組のカップルの結婚式が盛大に執り行われる。
≪ここまで≫

 人気スターたちが積極的に関わり、触り合って、明るく元気に組んず解れつ(笑)、卑猥なことをライブでやってのけるのは、お芝居ならではのお楽しみで、大サービスの見世物と言えると思います。特に出演者が皆、リラックスしていて楽しそうなのがいいですね。遠慮なく交流しているので安心できます。

 私は苦手ですが、下ネタ満載の奔放さは、今の時代に歓迎されることかもしれません。性別に縛られないことも。

 Yuqiさん(UQiYO)の生演奏と歌がよかったです。

 ここからネタバレします。

 たっぷりの赤いカーテンが揺らめく額縁の奥に、さらにまた、小さなサイズの赤いカーテン付きの額縁があります。今ここの現実とお芝居の嘘が重なる空間でした。
 天井から服が山ほど落ちてきて場面転換するのは、変装による変容、人間の多様性、曖昧さをあらわしているのかしら。

 シェイクスピアならではの長いセリフで魅了する場面を、原作通りに成立させる方向性はあまり見えなかったですね。舞台上と、客席および客席通路とで、同時に、異なる場面の演技を続けることもありました。多重多層のカオス状態を届ける意図だったのかなと想像します。

 女性のロザリンドが男装して男性に化け、身分を偽って森の住民となるお話ですので、性差や身分の溶解、混在がメインテーマなのでしょうね。男女だけでなく男同士、女同士の性愛もたっぷり描かれました。もう呆れるほど(笑)。
 複数役演じる俳優の変貌ぶりも見どころでした。温水さん演じる道化の結婚相手を小林勝也さんが演じていました。小林さんの赤いハイヒールは大変そう。

 ギャグは多いですが、私が笑えたのは一度だけかな…。小林勝也さんが最初の登場時に通路でぼそぼそと「(オーランドーは)成績が…(悪かったからね)」とつぶやくのが聴こえた時です。
 大声でまくし立てるように長いセリフをしゃべり続ける時に、明晰な発語、発声ができていない人がいて、何を言ってるのかわからないことが多かったのはストレスでした。道化の長ゼリフを早口で流してしまうのも残念。

 時代背景をやや反映した、奇抜な衣装が面白かったです。色合いも楽しい。満島ひかりさんがホットパンツを履いて、白い男性物のシャツを羽織り、生足全体が見えるスタイルで走り回っていました。男性は上半身の露出が頻繁。鍛えられた胸筋がズラリ(笑)。あの、茶色のボディースーツは鹿なのかな…。そうなると人間と動物も混ざります。

 鹿をしとめた村人たちが歌う場面は、あったか、なかったかがよく分からず…。透ける赤い幕の奥でおどろおどろしく表現したあの場面かしら…。全くの見当はずれかもしれません。私は下ネタに疲れてしまって、終演までは集中力が持続しませんでしたね…。

 ラスト近くで満島ひかりさんが坂口さんの鼻を指でつついてしまったらしく、坂口さんが「痛!」と叫び、満島さんが気遣って「後で冷やしてね」と言葉をかけていました。おそらくハプニングだと思います。舞台で演じている最中に、これだけ素直な反応を見せられるなんて。稽古場の空気がそのまま舞台にのっているのではないでしょうか。

 4組の結婚式の大団円の後は、他の人とキスしたり抱き合ったりのカオスへ。観客に話しかけるロザリンド(満島ひかり)のセリフは、ライブ感があって信じられました。

≪東京都、愛知県、新潟県、兵庫県、熊本県、福岡県≫
【出演】
ロザリンド:満島ひかり
オーランド:坂口健太郎
オリバー:満島真之介
タッチストーン:温水洋一
シルビウスほか:萩原利久
ウィリアムほか:碓井将大
チャールズ・アミアンズ:テイ龍進
歌い手:Yuqi(UQiYO)
フィービー:広岡由里子
ルヴォー・コリン、ハイメン:久保酎吉
フレデリック公爵・旧公爵:山路和弘
アダム・オードリー:小林勝也
ジェイクス:中村蒼
シーリア:中嶋朋子
脚本:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:早船歌江子
演出:熊林弘高 
ドラマターグ:田丸一宏
美術:松岡泉 照明:笠松俊幸 音響:長野朋美 
衣装・宣伝ビジュアル:伊藤佐智子 ヘアメイク・宣伝ヘアメイク:鎌田直樹 
舞台監督:澁谷壽久
宣伝美術:浜辺明弘・松崎貴史 宣伝撮影:山﨑泰治 宣伝コーディネイト:奈良間里加子
プロデューサー:内藤美奈子 制作デスク:黒田忍 制作助手:小田切寛 広報:前田圭蔵 久保風竹 安田裕美 小西萌子 票券:中里史絵 主催・企画制作:東京芸術劇場
【発売日】2019/05/25 全席指定・税込
S席 8,500円 A席 7,000円* 65歳以上(S席) 7,500円 25歳以下(A席) 4,500円* 高校生以下 1,000円
*A席は客席の都合上、一部シーンが見えにくい可能性がございます。
※未就学児はご入場いただけません。
※65歳以上、25歳以下、高校生以下チケットは、劇場ボックスオフィスのみ取扱い。(枚数限定・要証明書)
※障害をお持ちの方は、割引料金でご観劇いただけます。詳細は劇場ボックスオフィス、または劇場HP(鑑賞のサポート)にてご確認ください。
※公演情報等には変更が生じる場合がございますので、あらかじめご了承ください。
※未就学児はご入場いただけません。
https://www.asyoulikeit.jp/
https://stage.corich.jp/stage/100234

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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