【稽古場レポート】新国立劇場演劇研修所『朗読劇「ひめゆり」』07/29新国立劇場地下・合唱リハーサル室

 新国立劇場演劇研修所のオリジナル作品『朗読劇「ひめゆり」』が3度目の上演を迎えます(感想など:2016年2017年2017年の稽古場レポート)。2017年に続き、稽古場に伺いました。

 同作は「ひめゆり学徒隊」の3冊の手記を舞台化した、1945年の沖縄戦ドキュメンタリー・ドラマです。今年は初めての沖縄公演が実現します。
 ※沖縄公演:8月21日(水)19時~ 会場:国立劇場おきなわ

写真左から:ユーリック永扇、大久保眞希、松内慶乃
写真左から:ユーリック永扇、大久保眞希、松内慶乃

●新国立劇場演劇研修所『朗読劇「ひめゆり」』
 08/09-12新国立劇場小劇場 THE PIT
 ≪東京都、沖縄県≫
 出演:新国立劇場演劇研修所第13期生&修了生
 脚本:瀬戸口郁
 『私のひめゆり戦記』(宮良ルリ著) 
 『ひめゆりの塔 学徒隊長の手記』(西平英夫著) 
 『ひめゆりの塔をめぐる人々の手記』(仲宗根政善著)より
 構成:道場禎一 
 構成・演出:西川信廣(新国立劇場演劇研修所副所長)
 A席2,160円 B席1,620円 学生は半額。Z席(通常の当日券)の販売はなし。
 ※9日、10日は前売り完売で、当日券を若干枚数販売。
 ※予定上演時間:約1時間50分

≪作品紹介≫ 公式サイトより 
2017年に入所の第13期生が舞台実習としていよいよ小劇場に登場いたします。演劇研修所では、研修生が過去の歴史に向き合う機会として、毎年夏に広島あるいは沖縄をテーマにした朗読劇を上演してきました。朗読劇「ひめゆり」は、2016年、演劇研修所で新制作した作品で、太平洋戦争末期の沖縄戦における「ひめゆり学徒隊」がテーマの沖縄戦ドキュメンタリー・ドラマです。本年は、新国立劇場に加えて物語の舞台である沖縄での公演も行います。ANAからの支援により国内研修も実施し、心新たに語り継ぐべき記憶と、あの時代への思いを紡いでいきます。
≪ここまで≫ 

 午前中から始まる通し稽古を拝見しました。全体像については2017年の稽古場レポートでどうぞ!

 物語の中心となるのは、沖縄本島から約440km離れた石垣島出身の少女たち。無邪気な幼少時代と、名門師範学校である「ひめゆり学園(通称)」での規律正しい寮生活を、くっきりと対比させていきます。

写真前列左から:ユーリック永扇、松内慶乃、大久保眞希 後列左から:島田恵莉、今井仁美、聖香(11期修了)
写真前列左から:ユーリック永扇、松内慶乃、大久保眞希 後列左から:島田恵莉、今井仁美、聖香(11期修了)

 むごたらしい戦場を再現する際、演劇という虚構(フィクション)はとても有効です。今作は特に“朗読”という制限があるため、激しい感情表現も受け止めやすくなっていると思います。

写真左から:河波哲平、宮崎隼人
写真左から:河波哲平、宮崎隼人

 出演者は複数人を演じます。優しい少尉役だった俳優が厳しい軍医役になって登場すると、人間は豹変するものだと思い知らされます。

写真手前:小比類巻諒介(11期修了)
写真手前:小比類巻諒介(11期修了)
写真手前左から:今井仁美、髙倉直人(10期修了) 
写真手前左から:今井仁美、髙倉直人(10期修了) 

 横暴で無慈悲な軍人と、もがき苦しむ負傷兵を同じ俳優が演じることもあります。立場の逆転もまた人の世の常ですね。

写真左から:島田恵莉、永田涼(10期修了)
写真左から:島田恵莉、永田涼(10期修了)

 この作品では当時の歌がいくつも紹介されます。美しい歌声に癒されますが、その歌の意味を考えると恐ろしくなります。祈るように合唱する軍歌「海ゆかば」には、今回も胸がかきむしられる心地がしました。

20190721_himeyuri120190721_himeyuri6s

20190721_himeyuri120190721_himeyuri7s

 演出は初演、再演に続いて同研修所副所長の西川信廣さん。演出助手は中西良介さん(10期修了)です。

写真左から:中西良介(10期修了)、西川信廣
写真左から:中西良介(10期修了)、西川信廣

20190721_himeyuri120190721_himeyuri18s

 通し稽古の後に西川さんのダメ出しがありました。「発散せず慎重に」「自分を責める気持ちを強くして」などと、セリフと演技について細かく指摘をしていきます。

写真左手前から右回りに:大久保眞希、河野賢治、永田涼(10期修了)、小比類巻諒介(11期修了)
写真左手前から右回りに:大久保眞希、河野賢治、永田涼(10期修了)、小比類巻諒介(11期修了)

 西川さんは声を荒げたり叱責したりすることが全くなく、軽い冗談を交えて空気を和ませていらっしゃいました。ほどよい緊張感のあるリラックスした雰囲気です。

写真左手前:大久保眞希、島田恵莉
写真左手前:大久保眞希、島田恵莉

 ひめゆり学園は当時のエリート校で、学内では通常、標準語が採用されていたそうです。今回は沖縄公演があるので、標準語と沖縄本島の方言に加え、石垣島の八重山方言も使われることになり、特別に、伊良皆髙吉さんが八重山方言協力として参加されています。

写真左から:松内慶乃、ユーリック永扇
写真左から:松内慶乃、ユーリック永扇

 方言指導は初演から引き続き長本批呂士さん(3期修了)、下庫理ゆきさんです。長本さんは標準語と方言が混ざったセリフのバランスを慎重に考えて、発音の指導をされていました。

写真左端:長本批呂士(3期修了)
写真左端:長本批呂士(3期修了)

 今回は過去に『朗読劇「ひめゆり」』に出演した修了生(10、11期修了生)が4人出演しています。演出助手の中西さんも含め、経験者である先輩の影響は大きいようで、自発的、主体的に稽古に臨むチームとしての一体感が見て取れました。

20190721_himeyuri120190721_himeyuri8s

 写真でおわかりいただけると思いますが、台本を読む“朗読劇”とはいえ、動きがとても多いです。中西さん曰く、「座組全員で、最初からすべて作り直した」とのこと。

写真後方右端:河野賢治
写真後方右端:河野賢治
写真左前:松村こりさ
写真左手前:松村こりさ

 そういえば約1時間50分という長さを感じなかったのは、テンポよく見せ場が続いたからかもしれません。3演目を迎え、“娯楽作”としての充実がとても喜ばしいです。修了生と研修生が協働する場は、同研修所が十数年かけて育んできたものだと思います。

壁に貼られた沖縄の新聞など
壁に貼られた沖縄の新聞など

【チケット予約はこちら】

『朗読劇「ひめゆり」』:公式サイト

電話予約:新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999
Web予約:Webボックスオフィス
 ※9日、10日は前売り完売で、当日券を若干枚数販売。

沖縄公演:8月21日(水)19時~ 会場:国立劇場おきなわ

【出演】
新国立劇場演劇研修所 第13期生
今井仁美 大久保眞希 島田恵莉 松内慶乃 松村こりさ ユーリック永扇
河波哲平 河野賢治 宮崎隼人
髙倉直人(10期修了) 永田涼(10期修了) 聖香(11期修了) 小比類巻諒介(11期修了)
【脚本】瀬戸口郁
 『私のひめゆり戦記』(宮良ルリ著) 
 『ひめゆりの塔 学徒隊長の手記』(西平英夫著) 
 『ひめゆりの塔をめぐる人々の手記』(仲宗根政善著) より
【構成】道場禎一
【構成・演出】西川信廣(新国立劇場演劇研修所副所長)
【美術】小池れい
【照明】塚本悟
【音楽】上田亨
【音響】黒野尚
【衣裳】中村洋一
【ヘアメイク】前田節子
【歌唱指導】伊藤和美
【八重山方言協力】伊良皆髙吉
【方言指導】長本批呂士(3期修了) 下庫理ゆき
【演出助手】中西良介(10期修了)
【舞台監督】米倉幸雄
【チラシデザイン】荒巻まりの(8期修了)
【演劇研修所長】宮田慶子
【主催】新国立劇場
【制作】新国立劇場
一般発売日:2019年6月25日(火)10:00~
A席2,160円 B席1,620円 学生券:各チケット料金の半額
https://www.nntt.jac.go.jp/play/himeyuri/
沖縄公演:
https://www.nt-okinawa.or.jp/performance-info/detail?performance_id=2014
【主催】新国立劇場 国立劇場おきなわ

~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガ↓も発行しております♪

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台

   

バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ