藤田貴大さんがシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を演出。出演はマームとジプシーの常連メンバーとオーディション合格者(女性のみ)、そして演奏の山本達久さんです。上演時間は約1時間40分。
『ロミオとジュリエット』には先月からご縁があり、今月は3本目!登場人物の名前を聞けばパっとわかる状態で拝見できました。これからご覧になる方は、あらすじを知っておいた方がいいかと思います。何も知らずに浴びるように体験するのも、悪くないかもしれません。
私にとっては音楽のアルバムを聴いているようで、そのミュージック・ビデオを見ているようで…お芝居なのだけれど、音楽作品、映像作品のように鑑賞しました。
[インタビュー]現代演劇を更新する天才・藤田貴大、次の一手は名作の逆再生 / 山本達久、石橋英子、須藤俊明、音楽家三人と藤田貴大が挑むシェイクスピア https://t.co/IXZ3pHvGqv pic.twitter.com/s0lRnPAgAq
— CINRA.NET (@CINRANET) 2016年11月29日
来年7月のワークショップ公演『ハロースクール、バイバイ』(⇒2010年のレビュー)のオーディション情報が、折り込みチラシに入っています。対象は埼玉県内在住・在学の中学生以上20歳以下の男女。気になった若い方はチェックしてください。
藤田貴大が、10周年ツアーと20歳以下のキャストによるWS公演を実施 https://t.co/S5QUukTHvy pic.twitter.com/jDbHnfRYus
— ステージナタリー (@stage_natalie) 2016年12月10日
⇒CoRich舞台芸術!『ロミオとジュリエット』
『ロミオとジュリエット』を“逆再生”する、つまりロミオとジュリエットが死んだ場面から始まるという前情報でした。たしかにそうではあったのですが、鍵になる言葉が繰り返されるので、“逆”に進んでいる感触はあまりなく、お芝居が始まった時から終わる時まで、こつこつと積み上がっていく感覚の方が強かったです。
ロミオ、パリスなどの男性の主要人物を女優が演じます。そうではない場合もあって(男性であるティボルト、キャピュレットを演じるのは男優)、その塩梅の意図はよくわかりませんでしたが、比較的早い段階で性別は重要ではないのだと思いました。目の前に子供たちが居る、それだけでいいのだなと。
女性の衣装は中世っぽい、ふっくら膨らんだロングスカート。配色は黒、白、灰色のモノトーン系で、ところどころ金色、銀色が入っているのがかっこいいです。巨大なコサージュを肩や頭に付けたり、布を挟んだ状態の刺繍枠がスカートにくっついていたり。全体的にガーリーですが、シャープな線で引き締められていて、物語の背景(14世紀のヴェローナ)のヒントもあり、衣装そのものだけで眼福でした。俳優を“お人形さん”のように見せる意図もあったのではないかと思います。
大注目の中開幕した『ロミオとジュリエット』。劇中では大森伃佑子 が衣裳のベースとして選んだ「 ワルツトゥドレス 」を16人の乙女たちが纏っています。ドレスの詳細はこちらご確認いただけます! https://t.co/oucLnFYwD7 pic.twitter.com/h4L0MT8Ef9
— DOUBLE MAISON (@DOUBLEMAISON) 2016年12月12日
重たそうな巨大な横長の板を移動させて場面転換します。板が中央で90度に折れて部屋の壁になったり、ぐるぐる回転したり。見ている方は楽しいですが、動かす男優さんは大変そう…(野村萬斎主演『ハムレット』を何度も思い出しました)。板に映写される抽象的な映像に、役の心情が表現されることもありました。
終盤にダイナミックな変化があり、心を前のめりにして、見入りました。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
プロローグ、エピソード1~10、エピローグと映像で示され、明確に場面は分かれていました。『書を捨てよ町へ出よう』のようなファッション・ショーはなかったです。個人的に宣伝は苦手なのでホっとしました。
最初の約1時間強は今までに観た『ロミオとジュリエット』と比較しながら、構成の工夫を楽しんで、集中して観られました。でも“召使たちの場面”と言っていいのか、若い女の子たちの現代口語の会話が繰り返されるところで、急に舞台からこちらに何かが届かなくなり、意識が遠のいてしまいました。そこから15分ぐらい眠ってしまったかも…。私が演技に異様にうるさい観客だからなんですよね…。
マームとジプシーではお馴染みの、女優さんの「泣いている風な声」は、実際に泣いていたとしても、やはり私は苦手です…。声のバリエーションが少ないのも気になります。団体の個性というか、特長、カラーと言っていいものだと思いますので、単に好みの問題です。
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終盤で乳母が「11年前の地震」と言い出して、すぐに東日本大震災が思い浮かびました。ロミオとジュリエットは3~5歳の頃に震災に遭った子供たち…という設定なのかしら。すると舞台の時代は2022年ということに。そういえば原作でもロミオは故郷から追放され、二度と家に帰れない若者です。
※原作には乳母の「今から11年前、地震があった日に、ジュリエットが乳離れをした」という意味のセリフがありました。教えてくださった方、ありがとうございました!(2016/12/18加筆)
エピローグ「two of us」(だったかな)の場面が素晴らしかったです。ロミオとジュリエットが中央で舞い、少女たちが踊りながら2人の周囲を時計回りに回ります。舞台奥に現れた、山のように積み上げられた古道具たち(木製の椅子、机など)は、津波によるガレキに見えました。子供たちの命の輝きの輪舞と受け取りました。
「ロミジュリ」開幕、演出の藤田貴大&ロミオ役青柳いづみがコメント https://t.co/KCwr3SMuK3 pic.twitter.com/UefL6xbpyz
— ステージナタリー (@stage_natalie) 2016年12月11日
【出演】ロミオ:青柳いづみ、ジュリエット:豊田エリー、パリス、序詞役:川崎ゆり子、マキューシオ:菊池明明、ベンヴォーリオ:小泉まき、ティボルト:尾野島慎太朗、モンタギュー:花衣、エイブラハム:石川路子、バルサザー:吉田聡子、キャピュレット:中島広隆、乳母:中村夏子、ピーター:船津健太、サムソン、グレゴリー、キャピュレット家の召使い:あゆ子、中神円、丹羽咲絵、石井亮介、波佐谷聡、僧ロレンス:内堀律子、僧ジョン:後藤愛佳、寺田みなみ、薬屋:中村未来、ひよ:西原ひよ、演奏:山本達久 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子 上演台本・演出:藤田貴大 衣裳:大森伃佑子 音楽:石橋英子 須藤俊明 山本達久 ヘアメイク:池田慎二 照明:富山貴之 音響:田鹿充 映像:召田実子 演出助手:吉中詩織 舞台監督:森山香緒梨 宣伝美術:名久井直子 宣伝イラスト:ヒグチユウコ 衣裳装飾:YUKI FUJISAWA 衣裳協力:DOUBLE MAISON/きものやまと
プロデューサー:内藤美奈子 制作:吉田直美 林香菜(マームとジプシー) 制作助手:黒田忍 古閑詩織 制作補助:佐々木千尋(アーツアカデミー研修生) 広報:前田圭蔵 久保風竹 菅原渚 票券:佐島めぐみ 企画制作:東京芸術劇場 企画協力:マームとジプシー 主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団) 東京都/アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
【休演日】12/12(月)、12/19(月)【発売日】2016/10/15
<全席指定>
S席:5,500円
A席:4,500円
65歳以上(S席):5,000円
25歳以下(A席):3,500円
高校生割引:1,000円
http://www.geigeki.jp/performance/theater134/
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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