演劇ジャーナリストの徳永京子さんが責任者をつとめるproduce lab 89。西麻布の音楽実験室・新世界が4月1日に閉店してしまうそうで、あの空間でのproduce lab 89最後の演目となった『ラジオ危口』に行ってきました。『ラジオ○○』というのは、アーティストが基本的に1人で長時間、自分について語るというイベントです。私は初めて参加。
produce lab 89『ラジオ危口』は危口紘之さんがご自身を晒す3時間。長時間だから無駄だ、余計だと省かれがちな事柄が溢れ出て、凄く楽しかった。お薦め小説紹介の語り方が素敵。「漏祭」に爆笑し、感動。絶対見ないけど(笑)。 pic.twitter.com/pupRWyMo7U
— 高野しのぶ (@shinorev) 2016, 2月 15
『ラジオ危口』で頂戴した感電社の土木建築系総合カルチャーマガジン BLUE'S MAGAZINE」https://t.co/XKTSJ1SYiQ
危口さんの連載は面白かったし、雑誌自体がかっこいいし、内容濃い。フリーペーパーだとは! pic.twitter.com/2uflBLnTc6— 高野しのぶ (@shinorev) 2016, 2月 16
⇒CoRich舞台芸術!『ラジオ危口』
危口紘之さん(悪魔のしるし)はカリスマ性のある方だと思いました。文章も書けて、絵も上手で、肉体労働をしていて…そりゃファンになっちゃうよ~(笑)。言葉を慎重に選んで、大切に発する態度がかっこいいし(小説のあらすじ紹介で「懇ろになって逢瀬を重ねる」とか素で言うし!)、他者に対する怒り、不快感を隠さず、でも押し付けない態度が大人だと思いました。昔の本谷有希子さんみたいな“肥大化した自意識”があるタイプのアーティストなのかもしれませんが、繊細で、真面目で、勇気のある方だなぁと。“アーティスト”には“面倒な人間”が多いので、きっと危口さんも現場ではものすごく面倒なタイプなんだろうなぁ(笑)。私は消費するばかりの一観客に過ぎません。危口さんが作ったり、書いたりして、世間に向けて発したもの・ことを見せてもらうのを、これからも楽しみにしたいと思います。
以下、私がメモしたことです。正確性は保証できません。
●紹介された漫画、アニメ、ゲームなど(ごく一部)
(同世代なので、私にとってド真ん中過ぎた…笑)
ロボット:キョウダイン、ドラえもんなど沢山
おもちゃ:ガンプラ
漫画:Dr.スランプ、キン肉マン、ハイスクール奇面組、こち亀
図鑑:大図典View
アニメ:太陽の子エステバン(「ニルスの不思議な旅」より好きだった、アステカ文明などにハマった)
カードゲーム、盤ゲームなど:中学生の時に「四国志」というゲームを自作した。それがゲームを消費するのではなくゲームを作れるんだと気づいたきっかけかも。
ゲーム:ファミコン(メビウスなど)
音楽:Metalica(ジャンル:スラッシュメタル)
お笑い:ダウンタウン、「夢で逢えたら」
バンド:ローリングジェットジャガー
●紹介された著者と書籍(一部)
・ラヴクラフト「クトゥルク神話」
・大西巨人:「神聖喜劇」
危口:読者に誤解を許さない文体でセクシャルなことを書いている。
危口:大西は唯物主義者、左翼、共産主義者。いま「左翼」という言葉が(軽々しく)使われる。それは違う(本当の意味での「左翼」ではない)と思ったりする。
・中上健次「重力の都」
危口:谷崎純一郎へのリスペクトも含めた内容。中上は被差別部落出身。「被差別」というのは、自分(危口)の中に、ある。感情を伴うのではなく、道に転がる石のように、ただ、ある。
・藤枝静男「悲しいだけ」「空気頭」
※危口さんは藤枝静男さんのこと(書籍)がとてもお好きのようでした。
・石川忠司「衆生の倫理」
危口:「市民」でもなく「大衆」でもない「衆生(しゅじょう)」という言葉がいい。
●語られたこと
危口:父は僕のことをきぐち君と呼ぶんです。彼には「子供はいずれ世にお返ししないといけない存在だから」という理念があって。でもその教育は実を結ばず、今も、父子ともにべったりです(苦笑とともに)。
危口:(歌と演奏を終えて客席から拍手を受けて)拍手なんかしたらダメでしょう、常に批判精神を持っていかないと(笑)。
危口:昭和64年1月の昭和天皇崩御は、空白(空洞?)になった時間があった、という確かな体験。
危口:チェーホフも好き。ある種の理念が舞台上に擬人化されて存在することにわくわくする。例:「スケベ」「酒飲み」の擬人化など。
危口:チェルフィッチュや大好きな乞局を観てきたから、ちゃんと演劇をやってくれる人がいるのを知っていた。だから「自分は他のことをやっていい、違うことをやらなきゃ」と早い段階で思うことができた。
危口:自分がやりたい演劇は一生かけてもできない。だから違うことをやる(という意識がある)。
危口:いわきに行って、3.11のことは簡単に言葉にできないという感覚があった。東京ならできるが、いわきではできない。その体験があった。(良い悪いではなく、ただ「ある」ということ)
危口:2014年は謝罪会見のパロディーのような演目をやったけど(事実をちゃかすように)、2015年にはそれはできない(とてもじゃないが、やれる感じがしない、というニュアンス)。世相もあって、しょうもないことをやる機会が減った。だから4/5(しっこの日)に自発的に失禁するイベントを自分だけでやることにした。録画はしてますので、いずれ公開するかも。45円とかで(笑)。
危口:「演劇業界は演劇好きな人のパーセンテージが多い問題」というのがある。一緒に作品創作をしている人たちが、それぞれ皆、自分の好みを隠さない。良いも悪いもない。仕組みとしてそうなっている。(自分はそれを)いいことだと思います。
危口:そもそも「演劇のこれがやりたい」というような強い思いは(今のところは)ない。今は仕事を依頼されたり、助成金をもらったりして、演劇を作るようになったこともあり、「ある柵があって、その中でうまくやること」を、まず考える(今のところは)。
出演・構成・演出・演奏・朗読・映像オペ:危口紘之 (悪魔のしるし主宰)
責任者:徳永京子 Webデザイン:斎藤拓 企画協力:quinada 協力:悪魔のしるし
料金:2,500円(全席自由)+ドリンク代
http://producelab89.com/2016/01/859
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガ↓も発行しております♪