小劇場演劇ファンの人が「F/T14で体験した公演がとても良かった」とおっしゃっていたので予約しました。観客は自分たった1人。私の体験時間は約40分間弱。
⇒F/T14「アジアシリーズ vol.1 韓国特集 多元(ダウォン)芸術『From the Sea』」
⇒CoRich舞台芸術!『客』
東京のど真ん中の古い館で体験型演劇に行く。どうにも稚拙。辛かった…。SPACで体験したスペインの「よく生きる/死ぬためのちょっとしたレッスン」(https://t.co/r9TzP0AgH4)がいかに優れていたかを確かめる。私みたいな偏屈はやっぱり体験型は止しておいた方がいい。
— 高野しのぶ (@shinorev) 2016, 1月 30
≪作品紹介≫ 公式サイトより
浮かび上がる人影。
新宿の喧騒から遠く置き去りにされた邸宅で
あなたの無意識が、密やかに絡みとられる。
森の中をさまよっているうちに突然出くわす。 ぽつんとした、一軒の家。
数多くの童話において、長く苦難に満ちた旅は一軒の家で停止する。
家は、旅の叙事に「帰結」の可能性を与える。「経路」にメタファーされる激情の人生は「地点」の磁力に席巻される。
「私」の最も奥深く、内面の深淵部分に、家一軒が存在する。
ガストン・バシュラールは言った。
家はただの住居ではない。家は精神の起源であり、原型である。
「思考」は家の構造に似ている。いや、家のように「構築」されるのだ。
「私」の思想。「私」の存在。
しかし、多くの童話における長旅の苦難は、家に入ることでより一層深まる。
ホラー映画の恐ろしい恐怖のほとんどが、家で起こることも偶然ではない。
家は安らぎの場への回帰だけを意味するのではないのだろう。
安心と不穏は同じ事を指すのだろうか。
家は、ドッペルゲンガー
≪ここまで≫
今回の舞台となるのは、新宿某所にひっそりと佇むお屋敷。観客1人ずつ、屋敷内を歩き回り、そこに潜む過去と現在に向き合いながら、あなたは「客」という異なる自分自身に出会うことでしょう。このまたとない機会をどうぞお見逃しなく!https://t.co/AmpS2Q1Sfi
— 「客」 (@seo_kyaku) 2015, 12月 15
ここからネタバレします。セリフは不正確です。
集合場所および会場は四谷三丁目駅から徒歩8分のところにあるLa Keyaki(ラ・ケヤキ)。門の右側にあるドアに貼ってある「ベルを鳴らさずお入りください」という注意書きにしたがって、ドアを開けて庭に入り、たった一人で洋館を眺めていた数分間が、この作品の最も美しく、面白い瞬間でした。
何か起こるのだろうと待っていたのだけど、待ち合わせ時刻1分前になっても誰も来ないから、「もしかして、洋館に入れってこと…?」と思って、おそるおそる建物へと歩み寄り、玄関のドアをノックしたものの反応なし。仕方がないので静かにドアを開けてみたら、「ここでお待ちください」的な張り紙とイスが2脚。…この時点でもう作品に期待することは止めました…。門の右側のドアに「中に入って、玄関のドアを開けてください」と書いてくれていれば良かったのに。観客の行動の可能性を数え切れていないです。繊細さに欠けるというか配慮が足りないというか…。会場にたどり着くまでの観客の戸惑いも含めて作品だというのなら、私の好みではないというだけですが。
そういえば集合場所の連絡もアバウトでしたね…。「会場へのご案内地図」というメールにLa Keyaki公式サイトの地図画像が貼り付けてあり、名称も住所も書かれていませんでした。つまり集合場所が明記されていないんです。先に観に行った人たちが会場の写真をfacebookに投稿していたので、なんとか会場の予想は付けられました。
私が女性だからなのか、館内を案内する人は女性でした。最初の部屋でヘッドフォンから聞こえてきた声の演技が下手でがっかり。案内人がその声の主だとわかった時には更にがっかり…。体験型演劇で演技が拙い人を俳優として使うのは止してもらいたいです。その俳優も、非常に難易度の高い演技をさせられるわけですから、気の毒です。※クレジットによると俳優は複数人いるようなので、誰に当たるかは運かもしれません。
録音した声や音をスピーカーを通して観客(=体験者)に聴かせることについて。録音ですし、スピーカーから出ている音でしかないのです。生きている人間の声でも、そこで初めて生まれた音(たとえばミュージシャンの生演奏)でもない。その違いをちゃんと(体験者視点で)わかっていないのでは。
「子供の頃の私(=観客)と出会う」というコンセプトなのでしょうが、「子供の目は鋭いよ」「子供の声はあなたには聞こえていない(だから今、聞こえるようにしてあげますよ)」などなど…体験型演劇では非常によくあることなんですが、説教はやめて欲しい…。
あとは、これもまた好みの問題ですが、屋内の匂いが気になりました。玄関も汚いし。ロスコ(フォグマシン)の煙が充満したベッドルームとか…嫌だった…。
出演:藤倉めぐみ、遠山尚江、尾坂月乃 Cast:Megumi FUJIKURA, Hisae TOYAMA, Tsukino OSAKA
作、演出:ソ・ヒョンソク 舞台監督:上田晃之 Stage Manager:Akiyuki UEDA プロデューサー、翻訳:韓成南 Producer, Translation:Sung Nam HAN
1500円
http://i-a-f-t.net/program/seo_new_play/
http://kyaku.peatix.com/
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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