ナショナル・シアター・ライヴ2018「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」05/25-31 TOHOシネマズ日本橋

 欠かさず見るようにしているナショナル・シアター・ライヴ。「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」は1966年初演、トム・ストッパードさんの出世作です。パンフレット(800円)には、翻訳の松岡和子さんによる『ハムレット』と今作の時間進行を併記した対照表あり。

 生と死、現実と虚構(演技)、舞台と観客の関係など、とても多くのことを考えられました。もちろん爆笑しながら! 今回の上映にはインタビューやバックステージ映像などはありませんでした。上映時間は未確認ですが、パンフレットには165分(休憩20分含む)とあります。

≪作品紹介≫ 公式サイトより
シェイクスピアの悲劇『ハムレット』に端役として登場する二人組、ローゼンクランツとギルデンスターンを主人公にしたスピンオフ作品。1966年に初演された巨匠トム・ストッパードの出世作を、日本でも数々の舞台を手掛けるデヴィッド・ルヴォーの演出で贈る。ローゼンクランツ役を「ハリー・ポッター」シリーズのダニエル・ラドクリフが演じているのにも注目だ。
≪ここまで≫

 『ハムレット』で主人公の学友であるにもかかわらず、「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」という一言で死んだことにされる可哀想な2人組のお話です。

 ひたすら手持無沙汰に何かを待ち続けるローゼンクランツ(ダニエル・ラドクリフ)とギルデンスターン(ジョシュア・マグワイア)は、ベケット作『ゴドーを待ちながら』がもとになっているのは有名ですよね。

 演出は日本でもご活躍のデヴィッド・ルヴォーさん。幕の使い方が良かったな~。楽隊(旅芸人の一座)も素敵。
 小川絵梨子さん翻訳・演出、菅田将暉さん&生田斗真さん主演版を2017年10月末に観たばかりだったので、内容はまあまあ覚えていました。でも全然違う味わいでした。

 ここからネタバレします。

 彼らは今なぜ自分たちがここにいるのか、そもそもここはどこなのかも、わかっていません。通りがかった旅芸人の一座が上演する芝居を観ながら、いや、参加しながら、自分たちの境遇、状況を知っていきます。題名にあるとおり彼らは死ぬんですが、それはいずれ死ぬとわかっている人間そのものです。また、観ている芝居に入り込んでも、客席からは動けない私たち観客のことでもあるんですよね。

 2人は権力者の言うがままに従い、虫けらのように殺されてしまいます。2人っきりでいる時、ロズとギルは全く別の人間で、それぞれに個性のある魅力的な人物たちです。でもハムレットやクローディアス王などからは、ロズとギルという名前を間違えられ続けます。誰も2人のことを人間として見ていないんですね。だから(ハムレットは)手紙一枚で殺すこともできる。今の為政者から見た私と、彼らは同じだと感じます。

 ナショナル・シアター・ライヴは母と見ることにしてまして、母もたいそう面白がってくれました。人間は大切なことを知らないまま、ごまかしたまま生きていくこともできるけれど、辛くても知った方がいいよねと話しながら帰りました。

■関連ツイート

原題:Rosencrantz & Guildenstern Are Dead / 尺:2時間45分(休憩20分含む)
上演劇場:オールド・ヴィック劇場
【出演】
ローゼンクランツ:ダニエル・ラドクリフ、
ギルデンスターン:ジョシュア・マグワイア
座長:デヴィッド・ヘイグ
劇団員:ルイーザ・ビーデル、ジョージー・ダン、エヴリン・オイドクン、アレックス・ソウヤー、ティム・ヴァン・アイケン
劇団員アルフレッド:マシュー・ダーカン
ハムレット:ルーク・マリンズ
オフィーリア:ヘレナ・ウィルソン
廷臣:エミリオ・ミゲル・アキノ
ホレイショー/兵士:セオ・オグンディプエ
クローディアス:ウィル・ジョンソン
ガートルード:マリアン・オールダム
ポローニアス:ウィリアム・チャップ
作:トム・ストッパード
演出:デヴィッド・ルヴォー
装置デザイン:アンナ・フレイシュル
照明デザイン:ハワード・ハリソン
衣装デザイン:アンナ・フレイシェル & ローレン・エルシュタイン
作曲・コリン・バッカリッジ
キャスティング:ジェシカ・ロナネ CDG
ムーヴメント:リジー・ジー
イリュージョン:ポール・キーヴ
装置デザイン補:ローレン・エルシュタイン
一般3000円 学生2500円
https://www.ntlive.jp/rosencrantz
http://ntlive.nationaltheatre.org.uk/productions/ntlout21-rosencrantz-guildenstern-are-dead

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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