【レポート・俳優養成】新国立劇場演劇研修所「演劇研修所説明会」12/06芸能花伝舎内・新国立劇場演劇研修所

 来年1月の第12期生選考試験を控え、新国立劇場演劇研修所(⇒facebookページ)で説明会が実施されました。参加対象は「選考試験の受験をお考えの方、演劇研修所にご関心のある方」だったので、私も参加させていただきました(若者の中にオバチャンがまぎれ込んだ状態…)。

 最初の30分間は事務局からの説明で、あとの1時間~1時間半は、現役の3年生である9期生(男女3人ずつ計6人)への質問タイムとなりました。研修生は素直で、率直で、よく話し、よく聞く、とても気持ちのいい方々でした。あ~幸せ♪

 ⇒第12期生の募集内容(募集要項、願書はPDFファイルでダウンロードできます)
 ⇒願書受付期間:2015年12月7日(月)~12月23日(水・祝)(郵送必着)
 ⇒受験料:8,000円(願書提出後、12/23までに振込)
 ⇒公式facebookページに参加者の感想あり(2015/12/07加筆)

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 以下、私がメモした内容です。

【事務局からの説明】

●第12期生の選考試験、奨学金などの変更点について 
・応募時に、願書・自己紹介書の他に健康診断書が必要。
・1年から2年に進級する際に選考あり。※11期生までは入所すれば3年次まで自動的に進級可能。
・募集人数は過去最多の約16人。
・奨学金月6万円(返済不要)は1、2年次支給から2、3年次支給へ。
・3年次も授業をすることになり、1、2年次(22万円+税/年)の半額(11万円+税/年)の授業料も必要。

●試験内容について
・願書には作文があります。所長も副所長も、皆が読みます(がんばって書いて下さい)。
・第1次選考:モノローグ
 第2次選考:ダイアローグ
 第3次選考:ワークショップ
・「明晰な日本語を使いこなし、柔軟で強度のある身体を備えた次世代の演劇を担う舞台俳優」の育成を行う研修所です。言葉はもちろん、体を使って色んなジャンルの芝居に応えられるようになるために、心身ともに健康であることが重要です。

●新国立劇場との連携
・新国立劇場が製作する演劇(ゲネプロ含む)を無料で観られる。空席があればオペラ、バレエ公演も観られる※外部の公演を割引価格で観られる場合もある。
・新国立劇場演劇部門が実施している「マンスリー・プロジェクト」の講座が授業になることがある。

●修了生について
・8期生までが修了し、現在、修了生は合計104人ぐらい。
・新国立劇場が製作する演劇公演に出演する者もいる。たとえば12/8から開幕する『バグダッド動物園のベンガルタイガー』には3人出演している。プロンプターとして公演に参加する者も多数。

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【9期生との質問タイム(2人1組のグループで計3組に分かれました)】

●なぜこの研修所を選んだのか
・俳優にはプロであることを示す資格があまりない。俳優を仕事にしたかったから、この研修所を受験したいと思った。
・奨学金があるから。経済的な意味が大きい。
・この研修所で教えている講師を勧められたから(「あの先生の授業を受けたらいいよ」と)。

●高校卒業後すぐの入所について(早すぎないか?)
・高校を卒業して18歳で入所した。若さは武器だと思っていたし、今も思っている。同期では自分が18歳の最年少で最年長が27歳。ほぼ10年の年齢差があるが、皆、今までの全てを捨ててゼロから、同じことをやる。
・今、自分がやりたいと思うなら、それをやることが大事。年齢は関係ない。

●研修中のアルバイトについて
・アルバイトはやってる人もやってない人もいる。朝働く人もいるし、夜働く人もいる。4つ掛け持ちして、入れる時に入るという柔軟なやり方をしてる人もいる。
・アルバイトはいい気分転換になった。演劇に没頭して悶々としていた時、アルバイトに行ったことで解決することもあった。

●通学環境
・2時間かけて実家から通っている。
・1時間半以上かけて一人暮らしの家から通っている。
・自転車通学もいる。
・出身地:秋田、仙台、大阪、熊本など。

●選考の準備・内容・結果
・願書を一番頑張って準備した。どうやったら目立てるか。特技はオーディションの場でやれと言われるかもしれないと思い、完璧にできるように準備していった。実際、「特技にいっぱい書いてあるね。何かやってみて」と言われたので、用意していたミュージカルの曲をアカペラで歌った。
・自己ピーアールが重要。今だに、書いたことについて言われる。誰もが読んでます。

・モノローグは完璧に覚えていった。
・モノローグはちゃんと覚えていなかった。でも受かった。だからモノローグだけが重要なわけじゃない。その場でリラックスして楽しむことが重要だと思う。
・モノローグはシェイクスピア、三島由紀夫、つかこうへいなど、色々。オリジナルの人もいた。何をやってもいい。シェイクスピアは人気。ハムレット、オイディプス、ロミジュリは被る(笑)。
・モノローグには好きなものを選ぶのがいいと思う。自分は「いつかこの作品の、この役をやりたい」という目標があって、その役のセリフにした。審査員は数百人の俳優を見て疲れてるだろう。だからせめて楽しんでもらいたい。
・「これ以上できない、これが今の自分の全てだ」と言い切れるぐらい、120%の力でモノローグを作って披露する。それで落ちたら本望。後悔はない。自分がやりたい芝居を認めてくれる機関ではないのだから、相性が合わないというだけ。だったら他に行った方がいい、と思える。
・媚びないことが大事。大盤振る舞いで、自分のためにやるのがいい。研修所に入ってからもそう思う。

・ダイアローグは準備ができないし、相手があってのものだから、当日に相手とどうやれば仲良くなれるかばかり考えていた。自分だけじゃなく相手も楽しくやれるように。控室で稽古もできたし単純に楽しかった。
・ワークショップはとにかく楽しんでやった。
・一緒にワークショップをやる上で生まれることを見られている。

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●研修所のいいところ
・講師がプロ。色んな出会いがある。
・その道を本当に極めた人に指導してもらえる。「やりたい」「極めたい」と思ったら、手が差し伸べられている。やりたいと事務局に伝えたら、すぐに何かとつなげてくれると思う。
・演技だけじゃなく歌、ダンス、所作、アクションなども教えてもらえる。自分にはアクションがとても良かった。自分の仕事につなげたい。
・自分を教えてくださっている先生が、実際の舞台の現場(新国立劇場の演劇の現場)で活躍されているのを見て感動した。本物のプロに教わっていると実感した。
・自分はお芝居を学ぶために入所したが、声からのアプローチや感情からのアプローチなど、演技の色んな方法を教えてもらえた。その中から自分の好きなものを選べる。
・俳優という職業は素敵だなと思えた。俳優とは未来も過去も身体も感情も、全て使う仕事。
・今まで信じていたことや手法のクセが一度ゼロになる。また新たな自分になって試せる。その繰り返し。
・新国立劇場のオペラ、バレエの研修所との交流もある。ここでは色んなことが学べる。
・稽古場が充実していることが一番よかった。広さもあって、数も多い。自由に使える。エアコンも付いてる。

●良かった授業
・藤野節子さんのマイズナー・テクニック。演技は自分の中から作り出すものと思っていたが、リピティション・ゲームなどで、自分が相手によって動かされることに気づいた。自分から出すものには限界がある。自分の知らない自分を他人によって見つけられる。
・木村早智さんの授業。「お芝居を学ぶ」とは何なのか、どういうことなのかと問いかけられる。精神的に追い詰められて、自分のより動物的なところが出てきた。演劇の根源的なところに連れて行ってくださる。基礎や土台があるからこそ学べる。ワークをやりながら一人ひとりのクセや、(独自の)距離の取り方など、余計なものが自分からはがれていく。
・伊藤和美さんの歌唱指導の授業。「俳優は歌えなくても大丈夫」「役として歌え」と言ってくださる。まず歌詞をセリフにして言ってみて、セリフをとして成立させてから歌う。メロディーは感情のヒントになる。「役として生きて歌えること」が、自分たちの武器になるんじゃないか。
・声と言葉の授業。私の表面と内面の違いを指摘され、その通りだった。
樋田慶子先生の所作の授業。箸の持ち方から始まって、茶碗の持ち方、お茶の淹れ方、たばこの吸い方も。着付けも。
・石坪佐季子さんのアレクサンダー・テクニック。自分を高めていくことに情熱を持つことが出来た。これからも続けていきたい。
・池内美奈子さんに「自分が美しいと思うものを大切にして育て続けなさい」と言われた。

●マイズナー・テクニックについて
・どうやったら舞台上で今、一緒に居る相手と、本当の、100%の交流ができるか。自ずと感情が湧いてきて、自然に存在できるのか。舞台で起こる感情に素直に行動を起こせるか。その技術を教えてくれるのがマイズナー・テクニック。そういう芝居がしたいし、観たい。
・自分には(表現することが)得意な感情があって、その回路はよくつながっている。マイズナー・テクニックでは自分の新しい回路を発見できた。それをつながりやすく、より濃くしていくことができる。
・ワーク中に、人のことを殴ったり、キスしたくなって実際にしたりもした。そんな自分がショックだし、まったく行ったことのない方向に行くのは怖くもある。でも、自分の知らない自分を発見できる。俳優は色んな感情を使うのだから、感情の数は多い方がいいし、そういう自分のコントロールができるようにしたい。
・あらぬ方向に飛んでいっても講師がちゃんと見守って、誘導してくれるので大丈夫。宗教的なことではないのでご安心を。

●つらかったこと
・演劇以前のことですが、一人暮らしを始めたことがつらかったです。(東京の)食べ物が美味しくないとか、地元の言葉を話せないとか。
・1年次はとにかく詰め込まれる。つらかった。
・「今までの人生で培ってきた社会的な笑顔や態度を取っ払ってしゃべってみよう」という授業がある。1年次は役者のベースを作る、人間の根本を見つめる技術を得るカリキュラム。自分のクセを取る期間。心を自由に使えるように、バリアを取って行く。実際、誰かに本当に嫌なことを言っていいし、言われる。怒らせるし、泣かせるし。心をえぐられる。
・集団創作は得意だが、集団行動は苦手。なのに3年間もこんなにも同期と一緒にいることになるとは…。

●12期生からの変更点について
・1年次と2年次の間に選考があるのはいいことだと思う。慣れが一番怖いから。
・3年次にも授業があるのはとても良い。
・3年次に奨学金があるのもすごく助かると思う。今考えると1年次の方が余裕があった。
・3年次に奨学金があるのはいいが、1年次は本を買うことも多いから、厳しいかもしれない。

●9期生は12人だったが3人が退所した
・1年次の夏休みまでに2人やめて、冬休みに1人やめた。理由は「演劇以外の道に進む」「やりたいことと合わない」など。経済的な理由でやめた1人は、11期生として再入所した。

●俳優志望者に研修所への入所を勧めますか?
・勧めます。
・3年間続けないのなら、体力がもったいないから、他のことをした方がいいと思う。自分は演技を学びたいと思って研修所に入ったが、人間性についても学んだ。自分の思考とは全く違う方向を知ったりして、物事をさまざまな側面から見ることができるようになった。3年目はその集大成。

●修了後の進路の決まり方
・3年次の試演会、修了公演を俳優のマネジメント事務所の方々に観に来ていただく。オファーは事務局が受ける。研修所内で面接を受けたりする。
※研修中は外部活動はできません。夏休み等にワークショップを受講することは可能。3年次はオーディションを受けることが可能。ただし事務局に相談すること。

●その他
・講師陣と格闘するつもりで臨まないと学べない。受けるだけだと生み出せない。今は『嚙みついた娘』の稽古中で研修所所長の栗山民也さんの演出を受けているが、受け身になるのではなく「自分がこうしたい」と思うことをやっていかなければと思う。

9期生:岡崎さつき、竹内香織、八幡みゆき、草彅智文、清水優譲、村岡哲至
http://www.nntt.jac.go.jp/play/training/news/detail/151117_007810.html

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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