東京芸術劇場による人材育成を目的とした3週間に及ぶワークショップのショーケース(発表)を拝見しました(⇒告知エントリー)。講師は俳優、演出家のリロ・バウアーさん。
昨年は計5日間ずつ、2チームに分かれての開催でした。前回に続いて今回も参加している方もいらっしゃいました。他のワークショップで見かけた俳優さんも多く、ワークショップを積極的に利用する俳優さんが増えている気がします。嬉しいです。
ブラックユーモアにあふれるロシアの小説を、いくつかのシーンにして披露してくださいました。モスクワで暮らす人々の窮状を描く短編(「家賃が高いためお風呂を借りて生活する家族」「腸チフスで病院に行くが診療してもらえず死体扱いされ、他の病気をもらって病院から出て行く患者」)などを、数バージョン拝見し、大いに笑わせていただきました。
コントや説明的なものではなく、人間同士や物体、動物との関係性を演劇的に立ち上げていました。たとえば「動物園に爆弾が落ち、猿が生き延びる」というエピソードだと、動物園を表現する時にいろんな動物を演じてみるグループもあれば、客席側を檻に見立てて、動物園に来た客たちを演じるグループもありました。爆弾の表現が多彩でしたね~。爆弾発射場面を作ったり、無言でストップモーションをしたり、爆風に吹っ飛ばされて死体になる演技をしたり。椅子やランプ、バスタブといった物体を身体で表す工夫も面白かったです。
参加者一人ひとりがとても創造的でした。俳優って本当に、同時にいくつものことをこなす(マルチタスクな)職業ですよね。こういう訓練と創作と交流の場が設けられることは、参加者の方々にメリットがあるだけでなく、私たち観客も“豊かな演劇体験”という贈り物をいただけます。心から感謝したいと思います。
誰かが主役だとか、特定のグループがメインだとか、そういった印象は全くありませんでした。全員が全員に、そして観客と空間全体に、静かに気を配りながら存在していました。すごく風通しが良いんですよね。このワークショップ全体が、非常に民主的なプロセスだったのだろうと思いました。演劇の稽古場の、ある理想形なのかもしれません。
東京芸術劇場 教育普及・人材育成プロジェクト「リロ・バウアーによる俳優・ダンサーのためのワークショップ」全行程終了。最終日の今日は、芸術監督の野田秀樹氏も見学に!参加者の皆さん、リロさん、ありがとうございました!写真:東京芸術劇場 pic.twitter.com/fnQbBr6kz7
— 東京芸術劇場 (@geigeki_info) 2017年12月22日
東京芸術劇場・芸術監督の野田秀樹さんもご覧になり、感想を述べられました。ショーケース終了後、観客は解散しましたが、参加者とリロさん、野田さんをまじえた意見交換会が開かれたようです。
野田さんは「今の東京に生きる人は本当の貧困や飢餓などを知らないけれど、(モスクワの生活を描く短編からは)匂いが感じ取れた」といった評価をされていました。
参加者のご感想は「3週間という長期間が良かった」「期間中、何度も感銘を受けた」「学んだことを他の俳優と共有して早速使っている」など。
運営の方にうかがったところ、リロさんは参加者一人ひとりに気を配り、良いところを発見して評価していかれたそうです。遅れ気味になった人がいたら支えて、決して仲間外れを作らず、全員で挑戦を続ける環境なのでしょうね。誰のことも絶対に置いてきぼりにしない、見捨てないというやり方は、私自身の日常にも生かしたいと感じます。
■参加者のツイート
今年最後のパフォーマンスへ。台本も、衣装も、照明も、装置もなし。お金も取らないから、特に意気込みも無し。クリスマス会の催し物だと思って、この3週間を共にした人たちと、彩香と、大石さんと、初めて演劇を始めた時のように好きに演ります。大好きな先輩、リロに感謝して。行ってきます!
— 野口卓磨 (@takuma__noguchi) 2017年12月22日
■観客のツイート
芸劇でやっていたリロバウワーのワークショップのショーケースを見せてもらった。20数人で三週間やったということで、かなり出来上がったフィジカルな構成の場面がいくつか。面白く見させてもらった。何かの上演につながっていくといいと思う。素材はロシアの作家ゾーシチェンコのテキストとのこと。
— BP(しばらくハンドルネームで) (@blankimai) 2017年12月22日
リロ・バウアーのWSショーケースを見てきました。知っているひとも、知らないひとも、とても魅力的に表現していた。参加できなかったことがそれはもう悔しくて、もっともっとがんばろうと思いました。信じてがんばる。
— 松田文香 (@fumika_matsuda) 2017年12月22日
■1998年のリロさん
【くじらに関する、これまでの燐光群・坂手洋二の作品】Epitaph for the Whales『くじらの墓標』串田和美演出 1998年3/2〜21@ゲートシアター ロンドン リロ・バウア Lilo Baur/ジュリアン・ルイス Julian Louis 写真: PAU ROS pic.twitter.com/ATtGePXrz4
— 燐光群/(有)グッドフェローズ (@rinkogun) 2017年10月25日
講師:リロ・バウアー Lilo Baur
通訳:山田カイル
料金:40,000円
参加者:25名
日時:2017年12月22日(金)
受付:14:50
ショーケース:15時開始予定
意見交換会:16時頃から1時間程度
会場:東京芸術劇場 B2F リハーサルルームL
http://www.geigeki.jp/performance/event179/
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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