森新太郎さんがノーベル文学賞受賞者である英国劇作家ピンターの男性3人芝居を演出されます。ピンター戯曲といえば私はNTLive「誰もいない国 No Man’s Land」を見たばかり。難解だ、不条理劇だと言わることが多く、『管理人』もその1つかもしれません。でも象徴するものをはっきりと示す森さんの演出のおかげで、ストンと腑に落ちる感覚が得られました。上演時間は約2時間10分。
【『管理人』公演情報】公演HPにて舞台写真を公開しました。ぜひご覧ください。(計13点)本日11/27(月)は19:00開演。当日券は17:00まで劇場チケットセンター(03-5432-1515)にて電話予約受付、18:00よりシアタートラムロビーにて販売いたします。ご来場をお待ちしております。https://t.co/H9GpJv6Hmo … pic.twitter.com/GM4vVmJCAk
— 世田谷パブリックシアター (@SetagayaTheatre) 2017年11月27日
言葉すらもガラクタなのか――人間の滑稽さが心で燻る『管理人』初日観劇レポート #管理人 #溝端淳平 #忍成修吾 #温水
洋一 https://t.co/wBlfK9hZOX pic.twitter.com/ewAjBPM99M— SPICE[舞台情報メディア]/e+ (@spice_stage) 2017年11月28日
≪あらすじ≫ 公式サイトより
舞台はロンドン西部にある家の一室。
住み込みで働いていたレストランを首になったデーヴィス(温水洋一)は、偶然知り合ったアストン(忍成修吾)に自分の家に来ないかと誘われ、これ幸いとついていく。だが翌朝、いきなり現れたアストンの弟ミック(溝端淳平)に不審者扱いされ激しく責め立てられる。デーヴィスの前に交互に現れる、切れ者のミックと無口で謎めいたアストン。彼らはそれぞれ、この家の「管理人」にならないかとデーヴィスに提案してくるのだが――。
≪ここまで≫
舞台美術(香坂奈奈)はガラクタだらけの古びた部屋で、中央奥に向かって細く、狭くなる遠近法になっています。
若い兄弟と年老いたホームレスという3人の男性が、くっきり、鮮やかに対比されます。人物造形が面白く、分かりやすいです。最後の最後に「ああ、そういうことか!(勘違いかもだけど)」と気づきがあるのは、2014年の『幽霊』(演出:森新太郎)と似ているように思いました。
演じるのはすごく大変そうです。行動と感情が常に一致するわけではなく、役人物に独特の癖や特徴が与えられていて、動きも細かく決まっているように見えます。
勝手な妄想だと思いますが、私は教訓めいたものを沢山受け取りました。じっくり考える帰り道が楽しかったです。
『管理人』メディア情報
本日11月30日(木)毎日新聞 夕刊の劇評は、Webでもお読みいただけます。ちなみに次の公演は、明日12月1日14時。森新太郎さん+出演者3名のポストトークあり!演劇:「管理人」 リアルな息づかい=評・濱田元子 – 毎日新聞 https://t.co/qRaObkcNh7
— 世田谷パブリックシアター (@SetagayaTheatre) 2017年11月30日
『管理人』メディア情報
本日12/2(土) 産経新聞に、劇評が掲載されました。以下URLでも全文お読みいただけます。
【鑑賞眼】世田谷パブリックシアター「管理人」 寄る辺ない現代映す不条理劇 – 産経ニュース https://t.co/ce1vMMfoFB @Sankei_newsさんから— 世田谷パブリックシアター (@SetagayaTheatre) 2017年12月2日
本日の朝日新聞の夕刊に、先日観た舞台についての文章を書いています。
(評・舞台)世田谷パブリックシアター「管理人」 国問わず通じる「弱い者叩き」:朝日新聞デジタル https://t.co/7cM08MtTzF— 谷岡健彦 (@take_hotspur) 2017年12月11日
ここからネタバレします。
デーヴィスは“ならず者の浮浪者”らしい仕草がリアル。兄アストンはとぼとぼとした歩き方が独特で、弟ミックは大きく体を動かし、格好をつけたポーズをいくつも繰り出します。個性がはっきりした男性3人の役割というか、彼らが象徴するものが、じわじわとわかるようになっている演出だと思いました。
終盤になって舞台奥の小さな窓に向かって立ち、シルエットになる兄アストンは“神(=世界の管理人、番人)”に見えたんです。青白い照明が当たり、神々しさを感じました。アストンは街からガラクタ(=デーヴィスもそのひとつ)を拾ってきて、家の中に保管します。それは既に見捨てられたものたちを助ける行為ですよね。
“神(精神病院で脳を傷つけられたアストン=障碍者)”に助けてもらったのに、デーヴィスはミックにおだてられてすっかりつけ上がり、アストン(=神)を蹴落とそうとします。彼は愚かな“人間”というわけです。聖書に出てくるバベルの塔や、芥川龍之介作「蜘蛛の糸」を連想しました。『管理人』の原題は”The Caretaker”です。アストンこそが”The Caretaker”であり、“人間(=デーヴィス)”がその立場を乗っ取ることはできないんですね。
そうなると、冒頭に真っ暗闇の中で上手のベッドに座っていた弟ミックは“悪魔”だったんだな~と思います。屁理屈をこねて、他者(デーヴィス)に大声で罵声を浴びせて、無理やり言うことを聞かせるミックは、橋下徹氏みたい。権利、仕事、経済効率などを最重視し、“兄を管理する”といった考えも資本主義的で、つまり“悪魔的”だとも思いました。そういえばミックは、アストンが拾って来てオーブンの上に置いてあった仏像を、床に投げつけて割ってましたね。
俳優がピタリと静止する時間が意図的に設けられているようで、感情も動かさず、ただ静止しているよう見える時はほんの少々退屈しました。私の勘違いかもしれませんが、予定されている動き(=振付)どおりにこなしているように見えることがありました。膨大なセリフ量で、同時にいくつものことをこなさないといけないから、演じるのはとても大変だろうと思います。
※舞台写真は主催者よりご提供いただきました。
≪東京、兵庫≫
“The Caretaker” by Harold Pinter
出演:溝端淳平、忍成修吾、温水洋一
脚本:ハロルド・ピンター
翻訳:徐賀世子
演出:森新太郎
【美術】 香坂奈奈 【照明】 大迫浩二 【音響】 高橋巖
【衣裳】 西原梨恵 【ヘアメイク】 柴崎尚子
【演出助手】 五戸真理枝 【舞台監督】 瀬﨑将孝
宣伝美術:小松清一 宣伝写真:細野晋司
【発売日】2017/09/17
一般:6,500円
高校生以下:3,250円
U24※2 3,250円
友の会会員割引:6,000円
せたがやアーツカード会員割引:6,300円
※未就学のお子様はご入場いただけません
https://setagaya-pt.jp/performances/201711kanrinin.html
http://stage.corich.jp/stage/86735
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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