KUNIO『夏の夜の夢』08/23-27あうるすぽっと

 杉原邦生さんがシェイクスピアの有名喜劇を演出されます(⇒オーディション情報)。上演時間は約2時間30分弱、休憩なし。翻訳は桑山智成さんによる新訳です。私が拝見したのは8/23のソワレで、プレビュー公演でした。

 『夏の夜の夢』はいつもどこかで上演されている気がするほど、東京では上演頻度の高い戯曲です。私は今年3月昨年10月に観てますね。日本人の演出家による上演で評判が高かったのは、私の記憶だと蜷川幸雄版、ジョン・ケアード版(←新国立劇場の情報センターで見られます)が有名ではないかと。2015年に映画で観たキャサリン・ハンター主演、ジュリー・テイモア演出版は絶品でした。

 ↓1999年のハリウッド映画もあったりしますね。

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 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
舞台はアテネ。領主シーシアスと、アマゾン族女王ヒポリタとの婚礼が近づいている。一方、貴族の娘ハーミアは、父からディミートリアスとの結婚を強要され、恋人ライサンダーと森で待ち合わせて駆け落ちをする。ハーミアに横恋慕するディミートリアスと、彼に恋するヘレナも森へ。森では、ボトムたち職人が、結婚式で披露する芝居の稽古中。妖精王オベロンと女王ティターニアも、婚礼を祝福するため、それぞれ森に来ているが、女王がお付きの少年を王に譲らず、仲たがいしている。そこでオベロンは、眠っている女王の瞼にスミレの汁を塗る。最初に目にしたものに恋する魔法の汁だ。女王が目覚めて見たのは職人ボトムだった。また、ヘレンの片思いを知ったオベロンは、ディミートリアスの目にも魔法の汁を塗るよう、妖精パックに命じる。だがパックが間違えて塗ったのは、ハーミアの恋人ライサンダー。彼が目覚めて見たのはヘレナだった。混乱するアテネの森の顛末やいかに。
 ≪ここまで≫

 ドア、冷蔵庫、ベッドなどの白い家具が並んだ抽象空間。舞台奥を横切る台の上には、チラシのビジュアルでもあるAMSNDの文字が並んでいます。文字は背の高さぐらいのインパクトのある大きさです。衣装の色も白で統一。ヒポリタの衣装は腰のあたりがふわふわしていて、キラキラのラメも入っていてドレッシー。パンツ・スタイルだけどゴージャス、フェミニン、そしてスポーティー(…ってカタカナ並んじゃったな)で素敵でした。

 出演者の中ではライサンダー役の大石将弘さんの柔軟かつ機敏な演技が、個人的には好印象でした。緻密に組み立てているから、動きの切り替えが頻繁でも早口でも、意味がちゃんと伝わってくるんですよね。長谷川博己さんを彷彿とさせました。あと、声が素直で聴き心地がいいです。
 そういえばピーター・クインス役の森田真和さんは藤原竜也さん、ヒポリタとタイテーニアを演じた高山のえみさんは鳳蘭さんのように見えることがありました。

 ただ全般的に、今、ここに居て、自然に起こってくる感情をもとにした演技をされてはいなかったので、没頭することはできなかったです。7月に英国式の演技方法が前提のワークショップを2種類、見学したばかりなので(⇒)、特に気になったのかもしれません。俳優自身が思ってもないことを言っているのが明らかだったり、抑揚をつけてスルスルと流れるようにセリフをこなしてしまうから、意味がちゃんと伝わらなかったりして、私好みではない方向性でした。

 新訳は新鮮に響くことが多く、キュっと集中できます。七五調に聞こえたりすると楽しくなりました。ただ、杉原さんのコンセプトと演出を前面に出して活かすならば、新訳を下地にした現代口語訳をもっと使ってもいいんじゃないかな~…などと、勝手なことも考えました。

 ここからネタバレします。

 黒いワンピースの若い女性(田中美希恵)が帰宅して冷蔵庫に食料を放り込み、疲れ切って上手のベッドに倒れ込むと、そこにパック(北尾亘)がやってくる…という場面から始まりました。最後の最後は彼女とパックが舞台に残ります。現代の女性が眠りの中で見た夢だった…という解釈が可能です。

 魔法にかかった恋人たちのバトルを、リングに見立てた空間(オーベロンとパックが家具の周囲を、赤と青のロープで囲んで作ります)で格闘技のように見せるのは、予想がつくアイデアではありました。でもラップバトルになるとは思わなかった(笑)。イジーアス役の小田豊さんがレフェリーの衣装で登場し、無言で恋人たちにマイクを渡すのが楽しかったです。

 職人たちの劇中劇の場面が一番、演劇的に面白かった気がします。何度もクスっと笑えました。戯曲の意図どおりとはいえ、笑えるように演出するのは容易ではないと思うんですよね。大げさな演技や音楽で敢えて煽るのも、日本の伝統芸能(歌舞伎?お能?)の動きをするのも、異化効果になります。そのような目に見えて形式的な手法でも、いや、むしろ型になっているからこそ、その場面の本質や、人物の本当の気持ちが大きなパワーになって伝わってくる。演劇ならではの醍醐味があると思いました。

“A Mid-Summer Night’s Dream”
【出演】シーシアス、オーベロン:鍛治直人[文学座] ヒポリタ、タイテーニア:高山のえみ ライサンダー:大石将弘[ままごと / ナイロン100°C] デミートリアス:大村わたる[柿喰う客 / 青年団] パック:北尾亘[Baobab] ヘレナ:田中美希恵[範宙遊泳] ハーミア:瑞生桜子 ボトム:箱田暁史[てがみ座] クウィンス(職人たちのリーダー)、妖精:森田真和 スナッグ(ライオン役)、妖精:後藤剛範 スナウト、蜘蛛の巣の妖精:海老根理[ガレキの太鼓] スターヴリング、エンドウの花の妖精:水野駿太朗 フルート、辛子の種の妖精:三永武明 イジーアス(ハーミアの父):小田豊
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:桑山智成
演出・美術:杉原邦生
振付:北尾亘
音楽:Taichi Master
舞台監督:大鹿展明
照明:魚森理恵
音響:稲住祐平
衣裳:清川敦子[atm]
演出助手:岩澤哲野、中村未希
照明操作:加藤泉
ロバの頭製作:藤谷香子(FAIFAI)
スチール写真撮影:堀川高志[KUTOWANS STUDIO]
宣伝美術:加藤賢策[LABORATORIES]、北岡誠吾[LABORATORIES]
特設サイト:間屋口克
制作:小林みほ、河野理絵
共催:あうるすぽっと[公益財団法人としま未来文化財団]
主催・企画・製作:KUNIO / KUNIO,Inc.
前売
一般:4,500円、U-24割引:3,000円、高校生以下割引:1,000円、
8/23のみプレビュー割 一般:3,000円
豊島区民割引[在住、在勤、在学]4,100円
・未就学児の入場はご遠慮いただきます。
当日券4,500円[すべて共通]
http://www.kunio.me/stage/kunio13_special/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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