悪い芝居『罠々』04/18-23東京芸術劇場シアターウエスト

 山崎彬さんが作、演出、出演される劇団「悪い芝居」の新作を拝見しました。上演時間は約1時間55分。

 「CoRich舞台芸術まつり!2017春」の審査員として拝見しました(⇒102本中の10本に選出 ⇒応募内容)。※レビューはCoRich舞台芸術!に書きます。下記にも転載しました。 

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
芝居を観よう。芝居を観よう。どうせ観るなら『悪い芝居』を観よう。

幸も不幸も苦も楽も、誰かが仕掛けた罠だと思うと、
雲吹き飛んで快晴になりました。
でも、人生はドッキリだってことを知らずに、
完全に騙されてる方がマシだったかもしれないです。
閉じ込められてた部屋から逃げ出して見た朝焼けはとても眩しすぎて、自由がちょっと不安になりました。
さて、これからどうしようか。
被害妄想はファンタジーなんだ。

悪い芝居2017年最新作は、罠にハメられたと思い込む人間たちによる、愛しい復讐劇。
 ≪ここまで≫

 悪い芝居は『キャッチャーインザ闇』でCoRich舞台芸術まつり!2013春・最終選考作品に選ばれ、今回が二度目の最終選考進出になります。再挑戦に感謝します。

 同劇団の公演は『駄々の塊です』(2011年)、『キャッチャーインザ闇』(2013年)、『スーパーふぃクション』(2014年)、『春よ行くな、』(2016年)を拝見していまして、今回が私にとって5作目です。個人的なことなのですが、『スーパーふぃクション』と『春よ行くな、』と同様、音響と音楽が苦手で序盤から集中できず、終盤には耳を塞ぐほどになってしまいました。胸にズンズンと響く重低音や、驚いて飛び上がるほどの突然の大音量、全体的に音楽が鳴り止む時間が少ないことなどが、私にはどうしても合わないようです。申し訳ないです。

 終演後のトークで明かされたのですが、NMB48の石塚朱莉さんは19歳、The Stone Ageの緒方晋さんは45歳とのこと。作・演出の山崎彬さんはたぶん34歳ですので、年齢幅の広い座組みだったんですね。トークでは緒方さんに大いに笑わせてもらいました。ネタをきっちり披露して常に観客を楽しませようとする、サービス精神とプロ意識に感心しました。劇中の演技についても緒方さんに惹きつけられました。
 ※過去の出演作はiaku『walk in closet』(2015年)、同『エダニク』(2016年)、庭劇団ペニノ『ダークマスター』(2017年)を拝見。ご本人のツイッターによると東京に拠点を移されたんですね。

 客席数300席弱とはいえ東京芸術劇場シアターウエストは規模が大きいです。受付やロビーの制作者の人数が多い目で、物販が充実していました。また、指定席にホっとしました。

 ここからネタバレします。

 俳優は白、黄色などの同系色でまとめた裾の長い抽象的な衣装をまとい、さまざまな人物を演じていました。東京から故郷に帰った主人公の羽尾(渡邊りょう)が高校時代の同級生の壺見(山崎彬)に偶然再会し、壺見が関西弁を話すので、舞台は関西地方です。

 開演前からビデオ中継を多用していました。ロビーから楽屋を通って舞台に登場する俳優を追ったり、舞台上でお互いを撮影し合ったりして、オンタイムの映像が舞台奥の壁に大きく映し出されます。自らを録画して全世界に公開するユーチューバー(狐子:石塚朱莉)の生活や、街中にカメラが設置された監視社会を劇場内でリアルに体験できる仕掛けで、見られることが前提の振る舞い、つまり人間の二面性や嘘を強く意識させてくれました。

 “神様”っぽい人物(釈迦男:植田順平)が舞台中央にいすわり続けることで、お芝居を俯瞰する視点が確保されます。ただ、その人物の正体も変化するため、世界を見守る、または監視する大いなる存在も信用ならないものになります。作り物、まがい物ばかりが陳列され、嘘に支配される現代社会を映しているように感じました。主人公を罠にハメた「光のない黒い玉のような目をしたヤツ」がカメラのレンズであるならば、レンズを向けたのが“神様”なのか、または自分自身なのかという問いにもなります。ダジャレと謎かけでリズムをつけて、人間の心の闇を旅していくブラック・ファンタジーと受け取りました。
 
 観客に向かって積極的に思いをぶつけていく姿勢には好感が持てるのですが、個人的に「伝える」より「伝わる」ことを目指す表現が好きなので、もう少し観客とともに呼吸をするというか、音にはならない観客の声に耳を澄ますような時間があって欲しかったです。ギャグが多かったのですが私はあまり笑えなかったですね。緒方さんの「あーまーたーマーガリーンぬーりぬーりでぇす!」には笑いました!

 舞台正面奥にそびえる壁の右上に開いた窓は、目にも月にも見えました。終演後のトークで緒方さんが「天井から吊り下がる電球は精子で、壁の中央にある出入口は子宮(命の出口)のようだ」とおっしゃっていて、共感しました。

 以下は印象に残ったセリフ(戯曲集より)。

 釈迦男:人生はドッキリや!
 甘玉:世の中嘘ばっかしやろ。せやったら基本騙されてる思て生きた方が楽や。騙された人生の中で、いかにスタジオでモニタリングしとる神さんを笑かすか考えた方が楽しいやろ。
 真昼&羽尾:「アイワナダイ」「死にたい」「アイワナリブ」「生きたい」「アイワナダイブ」「始発列車に飛び込んで」「死にたい」
 相方:ミノ味のガムや。

 ※CoRich舞台芸術!のクチコミ評よりも長文です。

≪大阪、東京≫
出演:渡邊りょう、山崎彬、野村麻衣、植田順平、中西柚貴、北岸淳生、畑中華香、長南洸生、東直輝、川人早貴、松尾佑一郎、石塚朱莉(NMB48)、緒方晋(The Stone Age)
[配役表]
羽尾朝彦(ハネオ・アサヒコ)… 渡邊りょう
壺見求一郎(ツボミ・キュウイチロウ)… 山崎彬
道草蕾(ミチクサ・ツボミ)… 野村麻衣
鉈出孤子(ナタデ・ココ)… 石塚朱莉
裏山真昼(ウラヤマ・マヒル)… 中西柚貴
天田甘玉(アマタ・アマタマ)… 緒方晋
阿鼻叫太(アビ・キョウタ)… 東直輝
二本松遊麗(ニホンマツ・ユウレイ)… 川人早貴
銀子釜美(ギンコ・ガマミ)… 畑中華香
近藤夢(コンドウ・ユメ)… 北岸淳生
泥谷豪六(ドロヤ・ゴウロク)… 松尾佑一郎
道草朔平(ミチクサ・ノリヘイ)… 長南洸生
松本釈迦男(マツモト・シャカオ)… 植田順平
【脚本・演出】山崎彬
【音楽】岡田太郎
【舞台監督】大鹿展明
【美術】竹内良亮
【照明】加藤直子
【音響】児島塁
【衣裳】植田昇明
【映像】松澤延拓
【舞台監督助手】進野大輔、佐藤かりん
【宣伝美術】植田順平、野村麻衣
【写真(メインビジュアル・メンバー)】bozzo
【演出助手】藤嶋恵、大益賢佑
【メンバー】大川原瑞穂、米田優
【制作】加藤恵梨花、阿部りん、畑中華香
【主催】悪い芝居
京都芸術センター制作支援事業
【発売日】2017/02/15
前売:一般 3900円 U25 3000円 高校生以下 2000円
悪友割:一般 3500円 U25 2500円 高校生以下 1000円
※U25(25歳以下)
※高校生以下は、要証明。
※当日券は前売料金+500円
※悪友割…3人以上1組で割引。事前予約のみ。枚数限定
http://waruishibai.jp/wannawana

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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