劇団 短距離男道ミサイル『母さん、たぶん俺ら、人間失格だわ~キャンピングカーで巡る真冬の東北二十都市挨拶周りツアーいいか、お前ら事故るなよ、ぜったい事故るなよ!!編~』03/01-05 Studio+1(宮城)

 劇団 短距離男道ミサイルは2011年に旗揚げした宮城県、仙台の劇団です。劇団員12名の年齢は20~30代という比較的若い集団なんですね。上演時間は前説や後説などを含め、約1時間20分強。

 「CoRich舞台芸術まつり!2017春」の審査員として拝見しました(⇒102本中の10本に選出 ⇒応募内容)。※レビューはCoRich舞台芸術!に書きます。下記にも転載しました。 

≪作品紹介≫ 公式サイトより
2016年夏、「R.U.R」で卸町の倉庫に壮大なる世界観を立ち上げ600人を動員、にわかに注目を集める劇団短距離男道ミサイル。余韻が残る中、五周年の次なる企てはキャンピングカーで冬の東北を共同生活をしながら巡回する、東北六県一五+α都市弾丸ツアー。太宰治の遺書ともいえる「人間失格」を骨子に据えて語られる、劇団員の自伝的演劇。短距離男道ミサイル原点回帰の構成演劇。

≪あらすじ≫ CoRich舞台芸術!より
人間、失格。
演劇はするが、就職はしない、結婚もしない、しても家族を幸せにできるはずもない、アーティスト(自称)として、ただただ暗澹たる日々を自暴自棄に生きているだけなのか。
いや、違う。芸術にはその人生を賭すだけの価値がある。
≪ここまで≫

 太宰治作「人間失格」のあらすじに則り、出演者(加藤隆 小濱昭博 本田椋)の私生活と、ダメ人間エピソードを絡めて展開していく、メタ構造の喜劇でした。観客参加型の仕掛けも誠実で好感の持てるもので、演劇作品としても面白く拝見しました。「元気な男子が所かまわず脱ぐのであろう」と予想して伺いましたが、それほど露出が激しくなくてホっとしました(笑)。プロジェクターの文字および映像、照明、選曲も効果的で、俳優が半裸で暴れる中(笑)、高度なテクニックで劇世界へと誘い込んでくれました。

 作品をより楽しむためのノートとして「人間失格」のあらすじ(はしがき、第一の手記、第二の手記、第三の手記、あとがき)が配布物にまとめられています。原作をご存じない方は、それを読んでからの方がわかりやすいです。私は大昔に読んでほとんど忘れていたので、助かりました。
 喉をつぶさず、怪我をせず、風邪を引かず、そして「事故らず」、東北二十都市ツアーを完遂していただきたいです!
 ※レビューを書いたのは3月でした。ツアーは終了しています。レビュー公開が遅くなり申し訳ございません。

 東北大学物理学部で宇宙について研究していたという、劇団代表でもある俳優の本田椋さんと、演出の澤野正樹さんは、同大学の演劇部時代からのご縁とのこと。

 ここからネタバレします。

 開演前に、本田さんが携帯電話云々の前説を物まねで披露してくれました。「フレディ・マーキュリー、菅野美穂、藤原竜也の三択」の中から観客が「藤原竜也」を選び、テレビや映画で有名なのであろう、藤原竜也さんらしいセリフを交えながらの熱演です。もう、これだけで仙台に来てよかったと思いました。

 東京で20~30代ぐらいに若い俳優に会うと、「特にあなた(他者)と交流したいわけではありません(あなたが望むなら拒否はしませんけどね)」という態度を、臆面もなく表明されることが多いのです。「だったらなぜ俳優という職業を選んだのだろう…」と疑問に思うことがしばしばあるので、開演前からホッとするとともに、嬉しく、頼もしく思いました。

 体を張ったギャグが多かったですね。なぜか乳首を洗濯バサミで挟む!(笑) 洗濯バサミを紐でつないで、3人で上半身裸のみつどもえ状態になったり!もう…バカバカバカ!(褒め言葉です・笑) アントニム(対義語)・ゲーム、シノニム(同義語)・ゲームも可笑しかったです。「切手のないおくりもの」の歌詞を太宰風に変えていくのも面白かったですね。タイトルが「希望のない日陰者」になっちゃったり(笑)。

 葉蔵(加藤)とツネ子(小濱)が心中に至るエピソードが文楽風になってたのも良かった~。本田さんは手作り(?)三線を演奏しながら太夫のように謡っていました。葉蔵とツネ子の道行はしっとりとした情感が伝わりました。文楽人形を脱いで、全員が葉蔵に変身する時は、使っていた人形や道具を舞台中央に集め、その上にこたつを被せて隠したのが秀逸でした。

 出演者3人の実のお母様が息子に向けて話された言葉の録音が流れました。「結婚して子供をつくって育てて欲しい、でも収入が安定していないから結婚できない、親として心配」という赤裸々なもので、しかも3人の幼い頃からのスナップ写真を映像で見せていくので、余計に生々しいです。本田さんのお母様からはお言葉を頂けなかったそうで、本田さんご自身の声のアナウンスが流れました(笑)。

 小濱さんは「ネットゲームに耽ったり浮気したりしたために恋人にフラれた」という自虐的なエピソードを、淡々と話すのがお上手でした。複数役の演じ分けもくっきりしていて、説得力もあって良かったです。

劇団 短距離男道ミサイル20発目 ≪東北20都市ツアー≫
出演:加藤隆 小濱昭博 本田椋
原作:太宰治「人間失格」
脚本・演出:澤野正樹 チラシデザイン:三澤一弥
音響:本儀拓(キーウィ サウンドワークス)
照明:松崎太郎(アトリエ ミセイ)
映像:神崎祐輝(劇団 短距離男道ミサイル技術部)
小道具協力:高橋舞(趣味屋こめたろう.)
衣裳:富永美夏
音楽:伊藤誠人(いとまとあやこ/palitextdestroy)
キャンピングカーレンタル:ミッション・レンタルギア
フライヤーデザイン:三澤一弥(劇団 短距離男道ミサイル)
イラスト:あらすけ
主催:劇団 短距離男道ミサイル 助成:公益財団法人仙台市市民文化事業団 制作:boxes.Inc
一般発売:2017年1月1日(日) 00:00
一般 2,500円
U25 2,000円
高校生以下 500円
※U25(25歳以下)、高校生以下は当日受付にて年齢確認・枚数限定。
※『時は金なり』割り
各公演、開場から10分以内に来場されたお客さまの中から抽選で1名様に、豪華プレゼント贈呈!
http://srmissile.xyz/
http://srmissile.wixsite.com/missile

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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