俳優指導者で演出家でもあるボビー中西さんがプロデュース・演出される公演の初日に伺いました。上演時間は約1時間25分弱。⇒オーディション情報
『男が死ぬ日』は2001年に米国で世界初演されたテネシー・ウィリアムズの戯曲で、冒頭に「三島由紀夫に捧げる」とあるそうです。広田敦郎さんが翻訳された書籍↓が発売されています。
而立書房 (2019-07-10)
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※レビューは2019/09/23に公開しました。
≪作品紹介≫ https://stage.corich.jp/stage/99659
テネシー・ウィリアムズと三島由紀夫の友情から生まれたこの作品
戯曲が生まれて60年!ついに日本初演!
三島由紀夫に捧ぐ
長きにわたる友情と多大な称賛を込めてー
三島由紀夫三島由紀夫との出会いから生まれた日米の演劇要素を混交させた怪作!
≪ここまで≫
主な登場人物は「男」、「女」、「東洋人」。「男」のモデルは画家のポロックなんですね。映画↓を見たので想像しやすかったです。
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演出のボビー中西さんは2001年の初演に「東洋人」役で出演されています。テネシーウィリアムズの戯曲の指定に従った演出だったようです。戯曲未読なので詳しくはわかりませんが、米国人観客に向けた上演を想定した戯曲なのであれば、現代日本で日本語上演する際には、それなりの工夫が必要だったんじゃないのかな…と思いました。
🎊初日開幕㊗️
昨日、無事に幕が上がりました!
ご好評のお声が多く、嬉しい限りです。
ご来場くださった方々、誠にありがとうございました🙏✨本日2日目、まだ少しお席がございます。
迷われている方、是非ご来場くださいませ💨あっという間の1時間半、怪作です!
劇場でお待ちしております🙇🏻♀️ pic.twitter.com/ncPiuNAKjn— 西洋能『男が死ぬ日』 (@day_man_dies) September 6, 2019
テネシー・ウィリアムズの西洋能『男が死ぬ日』が上演中です。画家ジャクソン・ポロックの死をきっかけに、テネシーが親友三島由紀夫の近代能に刺激されて書いた劇です。日米を代表するクィア作家が出会い、こんな奇抜なお芝居が生まれたことを多くの方に知っていただきたく思います。#男が死ぬ日
— Atsuro Hirota (@atsurohirota) September 6, 2019
昨日すみだパークスタジオ倉にて、衣装を担当します『男が死ぬ日』が開幕しました!
めちゃめちゃ大変だった。。テネシーさん、これ怪作でっせ。僕はほぼ毎日劇場に居ますので「すみません、アレってどういう意味ですか?」とか疑問があったらドシドシ聞いて下さいね^^https://t.co/DJUBaCfa5S
— 岩男 海史 (@iwao_kaishi) September 6, 2019
ここからネタバレします。
舞台はホテルの一室。下手側に橋掛かりと思われる廊下があり、舞台奥の壁に松らしき絵が描かれています。能舞台を模しているのは明らかだけれど、バラバラでとっ散らかっている印象を受けました。「後見」役の女性が小道具をうやうやしく舞台まで運んでくるのですが、どうにも場違いで滑稽でした。黒衣を思わせる黒い衣裳も安っぽいです。
いつの時代のどこの話なのか、今、目の前にいる俳優はどの国の人で、何語を話しているのか、セリフでは具体的に示していたのかもしれませんが、容姿や動き、演技全般と一致しないので、理解ができない…。「東洋人」役はセリフによると自称日本人なのだけれど、私が観た回の出演者は英語が堪能な西洋人らしき男性だったため、彼が「誰」なのかが最後までわからなかったです(戯曲の指定らしい)。「男」と「女」の会話のすぐ後に、「東洋人」がその内容を具体的に解説するのに驚きました。会話を聞いていればわかることを、繰り返し言われても…さすがは“怪作”…?
上手の部屋は「男」がいるカラフルでカオテイックな空間で、絵のキャンバスが雑然と並んでいます。下手の部屋にはソファー・セットとベッドがあり、「女」が陣取っています。下手の家具はどちらも茶色の木製ですが、ソファー・セットはクラシカルなデザインで、ベッドは安っぽいカントリー調…。黒くて丸い一人掛けのソファ2脚もミスマッチで、ホテルの一室にはとうてい見えなかったです。
衣装は皆が幾度か着替えてくれるものの、予算が少なかったのかしら…と邪推せざるを得ない質感でした。「男」が着ている肌色の透け感のある全身タイツは、赤や紫、ピンクの波柄(?)で、股間には緑の(いちぢくの?)葉。画家である「男」は最初からその格好で…私は目のやり場に困り続け、終盤以外のほぼ全編、見ていられませんでした。後で「女」もその衣装になります。「東洋人」役の分厚い羽織や、「後見」役が「男」に着せる黒い着物(女物っぽい柄行き)も、一体何だったんだろう…。
音響、選曲もすごく苦手でしたね。典型的な和のイメージの琴の音や、ムードジャス、フリージャズなど、流れ始める度に耳を疑うほどのステレオタイプ感でした。戯曲の指定なのかもしれません。
舞台奥の松の絵が描かれたパネルは、真ん中で両側に開く大きな引き戸になっており、手動っぽく開くと(俳優が手を使って開く動作をするが、実際は他の力で引っ張られている)スクリーンになり、画像、映像が映写されます。写実的な西洋静物画、子供のお絵かきのようなイラスト、「銀座」の文字が揺れる動画など、これまた目を疑うものの連続…。世界観も舞台空間も含め統一感がなく、意図されたカオスというより、緻密さに欠けるゆえに曖昧で穴だらけという印象でした。乱暴ですがひとことで言えば「木を見て森を見ず」でしょうか。
俳優の演技については、「伸び伸びと、等身大の自分をさらし、その場で生きること」を最優先したからなのか、「劇中の設定において、演じる役人物が、誰に対して、なぜ、それを言う/するのか」が突き詰められていないように見えました。特に「東洋人」役は、明晰に発語してはいるものの、何のために、誰に、何を伝えようとしているのかが見えて来なかったです。他の俳優については、語尾の癖が気になりました。次のセリフのために、前のセリフをきちんと言い終わらずに息を吸うのも、観ていてつらかったです。
出演:遠藤祐美(女性)、本多章一(男性)、ハリー杉山(東洋人:Wキャスト)、呉山賢治(東洋人:Wキャスト)、浜中くるみ(後見:Wキャスト)、原愛絵(後見:Wキャスト)
脚本:テネシー・ウィリアムズ
翻訳:広田敦郎
演出:ボビー中西
美術:松野潤
照明:五十嵐正夫
音響:岡村崇梓
舞台監督:大山慎一
衣装:岩男海史
映像プロデュース:西山裕之
映像デザイン:小島元気
宣伝美術:宮崎絵理子
演出助手:田丸一宏
プロデューサー補:福本朱哩
制作:奥田英子
企画・製作:Hell’s Kitchen 46
スペシャルサンクス:林祐介 アクターズ・ヴィジョン 松枝佳紀 縄田かのん 森慶子 小川公代 日比野啓 三島由紀夫研究会 日本英米文学会 関幸治
【発売日】2019/06/15
前売:一般 5000円 / ペア:9000円
当日:一般 5500円
(全席指定・税込)
*未就学児のご入場はご遠慮ください。
*車椅子でご来場のお客様は、事前にお問い合わせください。
*開演時間を過ぎてからのご来場はご指定のお席にご案内できない場合がございます。予めご了承ください。
http://www.otoko-ga.com
https://stage.corich.jp/stage/99659
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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