以前に私も登壇させていただいた、徳永京子さんの現代演劇講座に伺いました。3年目となる講座の第1回目のゲストは劇作家の長田育恵さんです。
パルテノン多摩「現代演劇講座」第一回、盛況のうちに終了しました。雪の中ご参加くださった皆さん、超ご多忙の時間を割いて貴重な話をしくださった長田育恵さん、ありがとうございました‼︎ あっという間の2時間でした。次回は来週25日14時、杉山至さんをお迎えします。ご予約まだできます!
— 徳永京子 (@k_tokunaga) January 18, 2020
「徳永京子の現代演劇講座」に長田育恵、杉山至、小泉今日子https://t.co/uTZRhEaNyI pic.twitter.com/yBVXG3C2L1
— ステージナタリー (@stage_natalie) November 25, 2019
幼い頃から「物語を作る人になる」と決心していた長田さんは、早稲田大学ミュージカル研究会を経て大学卒業後もミュージカルの仕事を続けますが、30歳を迎えるころに何もかもを最初からやり直す決心で演劇界へと転身。日本劇作家協会の戯曲セミナーで出会った井上ひさしさんを師事し、たった一人での劇団てがみ座旗揚げから商業演劇デビュー、そしてグループる・ばる『蜜柑とユウウツ~茨木のり子異聞~』で鶴屋南北戯曲賞を受賞するまでの挫折と成長について、赤裸々にお話しくださいました。小説などとは違い、俳優、スタッフら複数の人間の力によって初めて作品として立ち上がる“戯曲”という芸術について、俳優によって発せられる“セリフ”についての長田さんの気づきは金言の宝庫でした。
長田さんは今年、劇団四季の16年ぶりの新作ミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』で脚本・作詞を担当されます。90年代のミュージカル界について、またはミュージカル映画についても、創作ミュージカルの実績のある方だからこそ見える景色、見識をうかがうことができました。
2月はてがみ座『燦々―さんさん―』の再演があります。好きな作品だったので楽しみです。
難事を切り抜け、巨大なトラウマを克服してきた道程も詳しくシェアしてくださいました。山あり谷ありの20年間…順風満帆に生きている人なんて、いないんですね。
長田:歴史を題材にとるのは、お客さんと同じ地図を持って出発できるから。
長田:登場人物に本音(魂の言葉)を言わせるためには、その人物を追い込まないとだめ。感情の起伏が生まれる逆境が必要。だから登場人物に体験をさせていく。一緒に旅をしないと、自分(劇作家)にもわからない。
長田:生身の人間が乗りこなす、言いこなすものとして、せりふがある。俳優は誰かが書いた言葉しか言えない。俳優は生身で舞台に立つのだから、せりふは意味や文脈の選択だけで(書くもので)はない。せりふは俳優が使う道具であり武器。俳優に、より高性能の道具を渡すことが劇作家の役目。
本日伺います。自分とミュージカルの関わり、そこからの現代演劇への志向とてがみ座の旗揚げ、そして今ミュージカル創作に一周まわって再び関われること。そんなことを誰かにお話しする機会は多分あまりないと思うので、今日はリラックスしてパーソナルなお話しもできたらなと思っています。 https://t.co/CbromXoV4z
— 長田育恵 / Ikue Osada (@tegamiza) January 17, 2020
人間が話す言葉について、ホワイトボードに図解してくださいました。人間を中央に置き、そこから同心円状の円を複数描いていきます。人間から一番遠い円上にあるのが「二度と会わない人にかける言葉」。そこから中央に向かって「日常のあいさつ」、「いつも会う人との会話」、「親族など親しい人との対話」、「一生に一度しか言わない本音(魂の言葉)」へと続いていきます。
師事されていた井上ひさしさんのエピソードもご紹介くださいました。井上ひさしbotのツイートを挟みつつ記録しておきます。
長田:『太鼓たたいて笛ふいて』で井上さんが使った方法は「(全世界への愛を込めて)おかえりなさい」というせりふ。日常の挨拶を、魂の本音にした。
わたしは芙美子は体力の限界を超えた量を書くことで緩慢な自殺を試みていたと見ている。どうしてもそうとしか思えないのだ。
— 井上ひさしbot (@inouehisashi) December 28, 2019
井上さんに習い、戯曲執筆の際は必ずフィールドワークをするそうです。
長田:自分で足を運び、そこで感じたことは自分だけのものだから、自信を持って書ける。
長田:この世で(既に)活字になっているものは創作しなくてもいい。私だけが見つけたことを書く。
いちばん大事なことは、自分にしか書けないことを、だれにでもわかる文章で書くということ。
— 井上ひさしbot (@inouehisashi) January 11, 2020
長田:(能舞台のような装置の作品で)ある演出家に「見せたいのは関係性の変化だけ」と言われた。登場人物の変化だけを書けばいい。
長田:(舞台に)人間が来て、消える。そこに“物語”はない。“物語”なんて存在しない。
井上ひさし編『話しことば大百科』(ベネッセ)を本棚から取り出す。E・M・フォスターを引用。〈「王が死んだ。それから王妃も死んだ」、これは物語である。「王が死んだ。悲しみのあまり王妃も死んだ」、これが構成である〉。井上ひさしさんの方法は「因果の法則」(論理の必然)を駆使していた。
— 有田芳生 (@aritayoshifu) April 11, 2010
長田:井上さんに「今日一日を自分の心でよいものにしなさい」と言われた。今思うと、一生作家でいるための秘訣だと思う。いかに自分のものを健やかに維持するか。いい作品を生み出すために。
あらためて井上ひさしbotを読み直すと、学び直せていいですね。たとえば物語について。
おもしろい物語には二つの特徴がある。まず情報が精選されている。次にその情報がよく整理され、効果的に配列されている。
— 井上ひさしbot (@inouehisashi) January 11, 2020
物語の基本的要素は「謎」である。逆に言うなら、謎の提起とその解明、これこそが物語の正体なのだ。
— 井上ひさしbot (@inouehisashi) December 14, 2019
こちら↓は私が心がけていることです。
「誠実さ」「明晰さ」「わかりやすさ」―これが文章では大事なことです。
— 井上ひさしbot (@inouehisashi) December 30, 2019
■感想など
【徳永京子の現代演劇講座】パルテノン多摩で開催!2020年1月18日(土)ゲスト・長田育恵(てがみ座主宰/劇作家)、1月25日(土)ゲスト・杉山 至(舞台美術家)、2月1日(土)ゲスト・小泉今日子(プロデューサー/俳優/歌手)。申込受付中。詳細はHPをご覧くださいhttps://t.co/MumdFY680J
— パルテノン多摩 (@par_tama) December 8, 2019
舞台制作PLUS+|制作ニュース|
ゲストに小泉今日子ら、パル多摩「徳永京子の現代演劇講座」開催https://t.co/8SbPMS7x0i— ネビュラエクストラサポート(Next) (@next_nevula) December 16, 2019
①徳永京子の現代演劇講座【第1回】ゲストは長田育恵さん(てがみ座主宰/劇作家)「劇団四季に新作ミュージカルを託されて」徳永さんが選んだ演劇の実作者の方1名・媒体や批評・プロデューサーなど外部から演劇に関わる方1名、照明、美術、振付などクリエイションに関わる方1名ずつを招き話を聴く。
— Yukiko.W (@kywatana) January 18, 2020
②多忙なスケジュールの中、四季のオーディション会場を抜け出して多摩センターまで来て下さった長田育恵さん(終わったらまた戻ると)。てがみ座の印象が強くて長田さんが劇団四季の16年ぶりの新作ミュージカルの台本・作詞を手掛けると知った時は少しびっくりしたので今日お話を伺えて嬉しかった!
— Yukiko.W (@kywatana) January 18, 2020
③長田さんの話を聴きたかった理由の一つとして上げていたのが、徳永さんは個人的に「女性劇作家は二つのタイプに分かれると思っていて、一つは恋愛や家庭、母親との関係などを自分のトラウマ的な体験を扱うタイプ。もう一つは史実を元に創るタイプ。長田さんは後者。」なぜ史実という足かせを課すのか
— Yukiko.W (@kywatana) January 18, 2020
④とオファーのメールで聞いた時に、長田さんから頂いた返信が「史実はお客さんと同じ地図を持って出発できることが面白さだ」という回答だったそう。今回は長田さんの筆を走らせる前半生の生い立ちから、大学~卒業後に手掛けていたミュージカルの闇、商業演劇のトラウマなどほぼオフレコな話題噴出。
— Yukiko.W (@kywatana) January 18, 2020
⑤長田育恵さんは声のトーンも穏やかで、ほわっとした雰囲気の可愛い女性だと思っていたけど、笑顔の下に幾多の修羅場をくぐっては立ち直ってきた経験を知り、まずます応援したくなりました。次は「旗揚げ公演の美術を長田さんから直談判されて引き受けた」という逸話つきの舞台美術家、杉山 至さん!
— Yukiko.W (@kywatana) January 18, 2020
徳永京子さんの現代演劇講座に参加しました。ゲストは、てがみ座主宰・劇作家の長田育恵さん。
長田さんの作品は、百鬼オペラ『羅生門』とNHKドラマ『マンゴーの樹の下で』を拝見したことがあります。
井上ひさしさんに師事したことやターニングポイントについてのお話が特に興味深かったです。→— 磯野洋子 (@yoppy045) January 18, 2020
→ ある作品のセリフに関するエピソードも印象に残りました。わたしは脚本修業中なので、改めてセリフは難しいなぁと…(他にも難しいことたくさんあるけど!)
てがみ座さんの公演を観たいです。劇団四季『ロボット・イン・ザ・ガーデン』も!— 磯野洋子 (@yoppy045) January 18, 2020
今日は徳永京子さんの「現代演劇講座」@パルテノン多摩へ。ゲスト講師はてがみ座主宰・劇作家の長田育恵さん。ここでしか聞けない濃密なお話が盛り沢山でした…!
クリエイター側の視点で、この十数年の日本のミュージカル界の変容を語っていただけたのもありがたく、とても勉強になりました。— kaho.f (@kahonfuu) January 18, 2020
長田さんの、言葉や物語に対する深く真摯な眼差しに感銘を受けたと同時に、俳優にとっての「台詞」とはどういうものなのか、ということもすごく考えさせられました。
てがみ座の公演、そして劇団四季の新作オリジナルミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』共に、すっごく楽しみになりました!— kaho.f (@kahonfuu) January 18, 2020
あー、よかった。「徳永京子の現代演劇講座」、杉山至さんの回も小泉今日子さんの回も行ける! 最初来たメールには杉山さんの方しか書いてなかったから落選したかと思っただよ。
— 法水 (@norimizu) December 26, 2019
■登壇者のお二人より。ありがとうございました!!
なんてありがたい…。高野しのぶさんがパルテノン多摩「徳永京子の現代演劇講座」長田育恵さんゲスト回のレポートを執筆、編集してくださいました。ご来場いただけなかった方にも届けー! 高野さん、ツイート掲載にご協力くださった皆さん、ありがとうございます‼︎ https://t.co/8khQnqMLUV
— 徳永京子 (@k_tokunaga) January 25, 2020
高野さーーーん、感謝感謝ですー!
— 徳永京子 (@k_tokunaga) January 25, 2020
高野さん、ありがとうございます!シェアさせていただきます。徳永さんの絶妙な質問で、私も自分の中にあったものをはじめて言葉にして取り出すことができました。これまでを振り返り、新しく踏み出していくための時間に。お呼びくださいましたパル多摩の皆さま、貴重な機会をありがとうございました!
— 長田育恵 / Ikue Osada (@tegamiza) January 25, 2020
公益財団法人多摩市文化振興財団「徳永京子の現代演劇講座」パルテノン多摩4階学習室
【第1回】1月18日(土) ゲスト:長田育恵(てがみ座主宰/劇作家)
【第2回】1月25日(土) ゲスト:杉山 至(セノグラファー(舞台美術家))
【第3回】2月1日(土) ゲスト:小泉今日子(プロデューサー/俳優/歌手)
「劇団四季に新作ミュージカルを託されて」
講師:徳永京子(演劇ジャーナリスト)
定員:各30名(応募人数が定員を超えた場合は抽選)
※申込状況により会場、定員を変更する可能性があります。
参加費用:各1,200円(当日精算) ※3回通し料金はございません。
http://parthenon.or.jp/act/3696.html
https://twitter.com/par_tama/status/1198799658304208897
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