横山拓也さんが作・演出されるiaku（イアク）の新作です。上演時間は約1時間40分。こまばアゴラ劇場で私が普段はあまりお見掛けしないような演劇関係者に多数遭遇しました。話題の公演なんですね。横山さんが注目の演劇人でいらっしゃることの証左だとも思います。
≪あらすじ≫ ネタバレあり。
舞台は大阪。母は早くに離婚して女手一つで娘を育ててきた。縫製の技術があり、会社でも頼りにされている。大阪の芸術大学に受かった18歳の娘は小説家を目指している。幼少期から同じアパート（マンション？）に住む幼馴染の男子も同じ大学で、彼は役者志望だ。彼は娘の初恋の人で、思春期に心の傷を刻んだ加害者でもあった。
≪ここまで≫
音響はほぼ使わない、抽象舞台で繰り広げられる現代口語の会話劇でした。舞台は大阪で、登場人物は5人。関西弁が飛び交います。
私は40代で、20代の娘がいます。偶然ですが、このお芝居のメインとなる二人の女性と被る世代かもしれません。また私は大阪生まれの大阪育ちです。そのせいもあってか「関西ならでは」と思わせる親子間のボケ・ツッコミや、母娘の関係性に、疑問を感じながらの観劇となりました。
娘役を演じた辻凪子さんの終盤の演技に引き込まれました。特に幼馴染の男子との、秘密を持ったままのまどろっこしい会話は、謎をはらみつつ、切なくて痛々しくて、美しいと思いました。
作・演出の横山さんの作品は、企画集団マッチポイント『ヒトハミナ、ヒトナミノ』（2019年4月）、劇団俳優座『首のないカマキリ』（2018年5月）、iaku『iaku演劇作品集「粛々と運針」』（2018年5月）、iaku『エダニク』（2016年）、iaku『walk in closet』（2015年）、売込隊ビーム『よせばいいのに』（2006年）を拝見しています（私個人の過去ログより）。横山作品を全て観ているわけではありません。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
母役の枝元萌さんが食事の話をするだけで、客席に笑いが起こりました。単に（客席）運が悪かっただけでしょうが、その時点でげんなりしてしまいました。
登場人物が従順に、作家の思い通りに動いており、一人の人間の妄想の範疇に収まってしまっているようにも見えました。私が最初につまずいてしまったせいもあると思います。
母と娘の共通の知人である、母の同僚の30代独身女性が、自分のおっぱいが小さいことを卑下しつつネタにするセリフがありました。こういうことを会話劇にして観客に披露することは、典型的な偏見をさらに広めることになります。外見に対する偏見を減らす努力を、作劇の時点でしてもらいたい…。男女間の性愛において、女性のおっぱいの大きさなんて気にしない男性は存在します。同様に、自分のおっぱいの大きさなんて全く気にしない女性もいます。
上司が「あなたと二人きりでいても、浮いた噂は立たないから安心」といった失礼極まりない発言をすることで、彼と母との恋は始まることもなく終わるのですが、物語にそういう流れを作ること自体に落胆しました。
「太ったおばちゃん」や「ペチャパイを引け目に感じている女の子」をまるでお約束のようにネタにするお芝居は無理。
— 高野しのぶ（しのぶの演劇レビュー） (@shinorev) September 20, 2019
iaku『あつい胸さわぎ』作劇上ももちろんだが、今日は真ん中に座っていたおっさん２人がずっとガハハと豪快に笑っていて、嫌な予感はしたのだが、あの台詞が出た瞬間も思いきり大笑いしていた。純粋に台詞だけでも血が凍る思いなのに、それを豪快に笑える人がいることに、暗澹たる気持ちになった。
— ぼのぼの (@masato009) September 20, 2019
≪東京都、大阪府≫
【出演】
娘：辻凪子
母：枝元萌(ハイリンド)
娘の幼馴染：田中亨(劇団Patch)
母の同僚：橋爪未萠里(劇団赤鬼)
千葉からやってきたばかりの母の上司：瓜生和成(小松台東)
脚本・演出：横山拓也
舞台美術：柴田隆弘
舞台監督：青野守浩
照明：葛西健一
音響：星野大輔(サウンドウィーズ)
演出助手：朝倉エリ
ドラマトゥルク：上田一軒
文芸協力：カトリヒデトシ
宣伝美術：下元浩人(EIGHTY ONE)
チラシヘアメイク：田沢麻利子
映像収録：堀川高志(kutowans studio)
宣伝：吉田プロモーション
制作協力：徳永のぞみ、高村楓
制作：笠原希(ライトアイ)
提携：（有）アゴラ企画・こまばアゴラ劇場（東京公演）
主催：一般社団法人iaku
助成：芸術文化振興基金助成事業、公益財団法人アサヒグループ文化財団、大阪府芸術文化振興事業
【発売日】2019/07/07
一般前売 3,300円
一般予約 3,500円
一般当日 3,800円
U-25(前売・当日共) 2,000円
高校生以下(前売・当日共) 500円
※前売は、事前入金となります。指定の口座にお振込みください。(予約時の返信メールにて連絡)
振込手数料はお客様のご負担となります。
※U-２５は25歳以下の方が対象です。
※U-25,高校生以下の方は年齢が確認できるものを受付にてご提示ください。
※高校生以下は数に限りがあります。
※未就学児入場不可
ハンディキャップのあるお客様にも観劇をお楽しみいただけるよう上演台本の貸し出し(公演1週間前～)や、目の不自由な方には演出家による開場前の舞台美術のご案内などを実施いたします。また、車いすでご来場の方は事前にご相談ください。
お問合せ：info.iaku@gmail.com
(介助者は1名様まで無料でご入場いただけます）
http://www.iaku.jp/
https://stage.corich.jp/stage/98979
※クレジットはわかる範囲で載せています（順不同）。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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