2005年に英国で設立されたシアターカンパニー“1927(ナインティーン・トゥエンティーセブン)”の2010年初演作が、日本初上演。親子で楽しめる「TACT FESTIVAL 2019」の演目で、未就学児は入場不可の内容です。上演時間は約1時間10分。
≪作品紹介・あらすじ≫ https://www.tactfes2019.com/kemonoyo
ようこそ マジカル・アニメーション・シアターへ
アニメーション×映像×ライブ・パフォーマンスを融合させた
UK発のコワかわパフォーマンスがやってきた!
これは古びた安アパートが建ち並ぶ街の一角にあるバイユー・マンションの物語である。
アグネス・イーブスと娘はある夜更けにバイユー・マンションにたどりついた。
カーテンはひらひらと揺れ、隣の誰かは、じっとこちらを見つめている。
そして狼がいつもドアの前にいる。
はたしてこれは、幸せのサインなのか?
それとも、更なる恐怖の始まりにすぎないのか?
≪ここまで≫
想像していたよりずっとブラックな内容で驚きました。挑発的な作品ですね。小学校高学年でも少し難しいかもしれないなと思いました。ただ、現実を突きつける作品に出会うことは、年齢にかかわらず大事なことだとも思います。
今日も劇場へ? 森岡実穂・劇場通いの記録: 1927 『獣よ、子供よ、街に出よ!』 @東京芸術劇場プレイハウス(2019年5月4日) https://t.co/eVlqZn8MDs
— Miho Morioka 森岡実穂 (@MoriokaM) 2019年5月5日
ここからネタバレします。
中央にほぼ正方形のパネル、少し間隔をあけて(間隔は黒いパネルか黒幕)、上下に同じ高さの縦に細長いパネルが設置され、その3枚に映像が写されます(→公式サイトの映像)。各パネルに1つずつ開いた小さい四角い穴から、人が顔を出します。パネルの前を歩いたりも。すべて映像と音楽と合った動きになっています。上手のパネルの裏にいる人はピアノ演奏も担当。
私にとっては、俳優よりも映像メインの作品だという印象ですね。絵に合わせて人間が動いているのは、少々退屈でもありました。
カーテンコールに出てきた出演者が3人だけだったことにも驚きました。演じ分けがくっきりしてたんですよね~。
以下は詳しい目のあらすじと感想です。セリフは正確ではありません。
都心のすぐそばにある貧民街のバイユー・マンションに、娘と引っ越してきた女性アグネスは、豊かな教育を施せば荒み切った子供たちを変えられると信じていた。バイユー・マンションの管理人の男性は、次の給料日が来たら、片道切符でこのマンションから出て行こうと決心していた。
子供ギャング集団のゼルダ軍団が跋扈しはじめ、街は混乱と恐怖でいっぱいだ。市長は貧民街の子供を全員誘拐し、薬入りのグミを食べさせるよう指示を出す。アイスクリームを売る黒い車で連れ去られた子供たちは、グミを食べて意欲を減退させられる。
アグネスは消えた娘を探して欲しいと声を上げるが、誰も助けてくれない。それどころか「誰かを訴えればいい、手数料を支払え」と言う弁護士が出てくる始末。弁護士費用のために内臓(肝臓?)を売るはめになるアグネスの様子も表現される(アグネスの腹部から血が噴き出す映像)。
助けを呼ぶアグネスの娘の声を耳にした管理人は、有り金をはたいて電車に乗り、黒い車を追う。アジトを守る“ベビーシッターの影”たちと戦って娘を助け出した管理人は、“現実的な展開(結末?)”または“理想的な展開”のどちらかの道を選ぶことに。迷う管理人に対して、観客が片方に拍手をする。“理想的な展開”に多くの拍手があったが、管理人は“現実的な展開”を選ぶ。※私は“現実的な展開”に拍手をしていました。
アグネスと娘は、翌日にはバイユー・マンションを出て行った。管理人に「教育で子供たちを変えられると思っていたけど、私一人では難しかった」と言い残して。
市長たちは新聞で勝利宣言。死んだ魚のような目をしてゾンビのようになってしまった子供たちの親も、「悪ガキが静かになってよかった」と他人事。アナウンスで「街が静かなのは1、2年だけで、不満が再燃するのは間違いない」と予言して終幕。
最後に「私たちが“1927”です」という自己紹介と出演者紹介あり。全てが終わったところで警察が取り締まる映像が再び流れ、出演者たちは退場した(この後に一般的なカーテンコールあり)。
“1927”もまた取り締まり対象になるのだと示唆するエンディングだった。『獣よ、子供よ、街に出よ!』という日本語の題名は、「恐れず、縮こまらず、声を上げよう、街に出よう」と私たちを鼓舞するもので、個人的にとても好感を持った。
※ゼルダ軍団の蛮行の根拠が「自分たちがもらえていない砂糖ひと粒を取り戻すため」といった、ささやかなものだったのが胸に刺さりますね。「メアリー・ポピンズ」の“Spoon Full of sugar”が流れていたような。
東京芸術劇場TACT FESTIVAL 2019
“The Animals and Children Took To The Streets”
出演:ジュヌビエーブ・ダン、ロウィーナ・レノン、フェリシティ・スパークス、管理人の声:ジェームズ・アディ
脚本・演出:スザンヌ・アンドレード
アニメーション、映像、美術:ポール・バリット
衣装:サラ・ムンロ&エズミ・アップルトン
プロダクション・マネージャー:アンドレ・ベラスケス
プロデューサー:ジョー・クロウリー
プロダクション・マネージャー(日本側):關秀哉秀哉
舞台監督:山貫理恵(ニケステージワークス)
字幕翻訳:佐月麻里
広報:ディップス・プラネット
主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団) 東京都 アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団) 豊島区
【発売日】2019/03/03
全席指定・税込
大人 3,500円
U18(高校生以下)1,000円
英語上演・日本語字幕付
※未就学児はご入場いただけません。
http://www.19-27.co.uk/the-animals-and-children
http://www.geigeki.jp/performance/theater209/t209-1/
https://www.tactfes2019.com/kemonoyo
https://stage.corich.jp/stage/98811
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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