久しぶりのKAAT中スタジオで、白井晃さんが上演台本・演出を手掛けるサルトル作『出口なし』を拝見。ダンサーの首藤康之さんと中村恩恵さん、俳優の秋山菜津子さんによる新創作ということで期待して伺ったところ、期待以上でした♪ ハラハラどきどきして、きゅーっと緊張して、ぐぐーっと考えられた、約1時間25分でした。
女性3人で観たのですが、ラストシーンの解釈が三人三様で、また面白かったです。こういう観劇体験ができる土曜日の午後って麗しいわ～。横浜は風が強くて寒かったのですが、おしゃれなカフェも中華街での夕食も満喫して、幸せな休日になりました。ありがとうございました！！
ゴシック風の退廃的な装飾が施された廃墟のような部屋で、3人の男女がエロティックかつ暴力的に取っ組み合います。体も言葉も視線も動きも、計算された緻密さがあって、目が離せません。『出口なし』は昨年観たばかりですが、ダンスと会話、独白などで構成されており、全く違う印象の作品でしたね。わかりやすかった…というか、具体的な想像がしやすくて、ドキドキしながらみっちり考えられて、私なりの結論も持つことが出来ました。欲を言えば、笑える場面も欲しかったかったかもしれません。3人の人間のとても愚かしい争いなので。
力強さ、武骨さ、乱暴さなど、男性らしさが強調された首藤康之さんのダンスと、中村恩恵さんのバレエらしいエレガントな振付が対照的で、エロティックでした。秋山菜津子さんはいつもながら美しいしかっこいいし、なんであんなに動けるの！？ ドスを効かせた声と勝気で堂々とした存在感でもって、芝居をぐんぐん引っ張ってくださいました。
首藤康之×中村恩恵×秋山菜津子出演の『出口なし』が開幕 演劇と舞踊の境界を越える舞台写真が到着 #出口なし #首藤康之 #中村恩恵 #秋山菜津子 https://t.co/NDaurifdGy pic.twitter.com/m7NzaxxgfN
— SPICE[舞台情報メディア]／e＋ (@spice_stage) 2019年1月25日
白井晃演出「出口なし」開幕、言葉と身体が切り口のスリリングな会話劇https://t.co/urDedQwd7z pic.twitter.com/zztQjqZmnN
— ステージナタリー (@stage_natalie) 2019年1月26日
ここからネタバレします。
3人の死者たちは案内人（白井晃）に導かれて、ある部屋に閉じ込められます。蛇口はあっても水は出ないし、壁には鏡が貼ってあったらしき枠の跡があるだけです。枠の中に映像が映されて、鏡のように見えるのが美しかったです。
鏡の代わりになるのは自分を見る他者です。彼らは他者の眼球を覗き込むことで、そこに映る自分の顔を見ることができます。それ以外に自己を認識する方法がないため、「人間は他者なしでは生きられない」ということになります。
男性ガルサン（首藤康之）、レズビアンの女性イネス（秋山菜津子）、年配の男性と結婚した若い女性エステル（中村恩恵）の全員が他者に依存しています。エステルは男性に性的に必要とされていないと耐えられない（男なら誰でもいい）。ガルサンは誰かに自分のことを認めてもらいたくて仕方がない（承認欲求が強い）。イネスは好きな女性を自分の思う通りにしないと気が済まない（その女性が自分の目で他人を見るようにさせたい）。類型的というか、「人間あるある」だな～と共感できました。
現世の人々に忘却され、もうこの部屋に居るしかない（出られもしない）とわかった3人は、それぞれに必要とする他者（エステル⇒ガルサン、ガルサン⇒イネス、イネス⇒エステル）を思い通りにするために懇願したり、争ったりしますが、残念ながら彼らの望みは全く叶えられません。
他者なしでは生きていけないのに、その他者は決して自分の思い通りにはならない。だから「他者は地獄」なんでしょうね。ピストルで撃たれても（自分で自分を撃っても）死ぬことができず、閉じ込められた部屋で、願いは決して叶わないまま…。まさに「出口なし」だなぁと思えました。
3人はそれぞれの椅子に座って、同じ動きをしながら、最終的に孤独になっていくようでした。何もかも明け透けに話して、素っ裸になった彼らは、とうとう自分で自分を見つめることができるようになり、自立したのだろう（成仏したのだろう）と解釈しました。
出演：首藤康之、中村恩恵、秋山菜津子 白井晃
原作：ジャン＝ポール・サルトル
上演台本・演出：白井晃
美術：杉山至 照明：大石真一郎 音響：徳久礼子
衣裳：前田文子 ヘアメイク：小林雄美
舞台監督：大垣敏朗 演出助手：西祐子
技術監督：堀内真人 プロダクションマネージャー：山本園子
企画制作：KAAT神奈川芸術劇場/株式会社サヤテイ
主催：KAAT神奈川芸術劇場
著作権代理：（株）フランス著作権事務所
【発売日】2018/10/07
（全席指定・税込）
一般 6,000円
U24チケット 3,000円（24歳以下）
高校生以下割引 1,000円（高校生以下）
シルバー割引 5,500円（満65歳以上）
＊シルバー割引、U24、高校生以下割引は10/7よりチケットかながわの電話・窓口で承ります。（前売りのみ・枚数限定）
＊車イスでご来場の方は、事前にチケットかながわにお問合せください。
＊未就学児童の入場はご遠慮ください。
＊営利目的の転売禁止。
http://www.kaat.jp/d/huisclos2019
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