【写真レポート】新国立劇場「2019/2020シーズン・ラインアップ説明会」01/17新国立劇場地下2階オーケストラリハーサル室

 新国立劇場オペラ部門、舞踊部門、演劇部門の芸術監督3名(大野和士さん、大原永子さん、小川絵梨子さん)による「2019/2020シーズン・ラインアップ説明会」が開催されました。

 オペラ部門と演劇部門は昨シーズンから新芸術監督が就任し、この3人が揃うラインアップ説明会は2度目です。舞踊部門の大原さんにとっては今回が最後のラインアップ説明会になります。

写真左から:小川絵梨子、大野和士、大原永子
写真左から:小川絵梨子、大野和士、大原永子

 東京で開催予定のオリンピック、パラリンピックの時期である2020年夏に上演される、3部門の共同企画となる“子供オペラ”には大いに期待が高まりました。

 以下に、演劇部門の情報をまとめました。一部コメントも書いています。

写真:小川絵梨子
写真:小川絵梨子

●シリーズ「ことぜん」
 “個と全体”あるいは“個と国”等をテーマにした戯曲を上演するシリーズ3作。演出はすべて若い女性演出家。五戸さん、瀬戸山さんは新国立劇場に初登場です。

・2019年10月 Vol.1『どん底』
  作:ゴーリキー 演出:五戸真理枝(https://ameblo.jp/sokotoranohana/)
  https://www.nntt.jac.go.jp/play/gonohe_marie/

 五戸さん演出『三人姉妹(https://shinobutakano.com/2018/10/14/10947/)』は2018年の私的ベストテン(https://shinobutakano.com/2018/12/31/11459/)に選ばせていただきました。

・2019年11月 Vol.2『(未定・海外戯曲)』
  演出:瀬戸山美咲
  https://www.nntt.jac.go.jp/play/setoyama_misaki/

 『ジハード(https://shinobutakano.com/2018/06/27/10007/)』をソリッドかつ熱のこもった上演にしてくださった瀬戸山さんが、新国立劇場で海外戯曲に取り組まれるのは嬉しいニュースです。

・2019年12月 Vol.3『タージ・マハルの帝国警備隊(仮題)-Guards at the Taj-』
  作:ラジヴ・ジョセフ 翻訳:小田島創志 演出:小川絵梨子
  https://www.nntt.jac.go.jp/play/ogawa_eriko/

 芸術監督の小川さんが演出される『タージ・マハル~』は、約3年前に新国立劇場で上演された『バグダッド動物園のベンガルタイガー(https://www.nntt.jac.go.jp/play/bengaltiger/)』の劇作家であるラジヴ・ジョセフさんの2015年の戯曲。翻訳は20代の小田島創志さんです。


 
●フルオーディション2

・2020年4月『反応工程』
  作:宮本研 演出:千葉哲也
  出演:天野はな 有福正志 神農直隆 河原翔太 久保田響介 清水優 神保良介 高橋ひろし 田尻咲良 内藤栄一 奈良原大泰 平尾仁 八頭司悠友 若杉宏二
  https://www.nntt.jac.go.jp/play/reactionprocess/

 2019年4月上演の『かもめ』(https://www.nntt.jac.go.jp/play/theseagull/)に続いて全出演者のオーディション(https://shinobutakano.com/2018/09/08/10630/)が行われました。演出は千葉哲也さん。
 配役発表:https://www.nntt.jac.go.jp/play/news/detail/13_014214.html
 2回でのべ4000~5000人の俳優が参加したそうです。これからもオーディションは継続してくださるとのこと。まずは『かもめ』の上演がすごく楽しみ!

写真:小川絵梨子
写真:小川絵梨子

●詳細未発表

・2020年5月

 ラインアップ説明会後に開かれた小川芸術監督をかこむ懇談会で伺ったところ、他の作品群とは違う傾向の企画だそうです。

●オリンピック、パラリンピック期間の「大人も子どもも一緒に楽しめる作品」

・2020年7月@小劇場 小山ゆうな演出作(海外戯曲)
 https://www.nntt.jac.go.jp/play/koyama_yuna/

 『チック(https://shinobutakano.com/2017/08/14/6366/)』で小田島雄志・翻訳戯曲賞、読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞された小山ゆうなさんが新国立劇場に初登場。

・2020年8月@中劇場 『(新作・タイトル未定)』
 出演:近藤良平、松たか子、首藤康之、他
 作・演出:長塚圭史 振付:近藤良平
 https://www.nntt.jac.go.jp/play/nagatsuka_keishi/

 『音のいない世界で』『かがみのかなたはたなかのなかに』に続き長塚圭史さんが作・演出される、大人も子どもも楽しめる舞台。小劇場から中劇場へとパワーアップ! 

・2020年8月 オペラ、舞踊、演劇の共同企画『子供オペラ』
 台本:島田雅彦 作曲:渋谷慶一郎 指揮:大野和士 演出:小川絵梨子
 出演:大原芸術監督が選抜する新国立劇場バレエ団のバレエダンサーなど

 AIロボットと人類のお話で、大野監督の“マブダチ”である島田雅彦さんが台本を手掛けます。音楽は初音ミクのオペラが話題になった渋谷慶一郎さん。これは新しい体験が期待できそう!

写真左から:小川絵梨子、大野和士、大原永子
写真左から:小川絵梨子、大野和士、大原永子

●こつこつプロジェクト―ディベロップメント―

 昨シーズンから始まった「こつこつプロジェクト」は非公開の発表会を継続し、いずれは上演につなげる予定とのこと。2019年3/13-17に一般公開のリーディング上演(https://www.nntt.jac.go.jp/play/kotsukotsu/)があります。

・『スペインの戯曲』
 作:ヤスミナ・レザ 翻訳:穴澤万里子 演出:大澤遊
 出演:春風ひとみ 塚本幸男 斉藤直樹 宮菜穂子 中村美貴

・『リチャード三世』
 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子 演出:西悟志
 出演:岡崎さつき 川澄透子 チョウヨンホ 野口俊丞 林田航平 三原玄也
 ※出演者全員が新国立劇場演劇研修所の修了生です。

・『あーぶくたった、にいたった』
 作:別役実 演出:西沢栄治
 出演:龍昇 中原三千代 佐野陽一 浅野令子

●ロイヤルコート劇場×新国立劇場「劇作家ワークショップ」
 https://www.nntt.jac.go.jp/play/playwrights_project/

 英国・ロンドンにあるロイヤルコート劇場が世界中で行っている、若い劇作家を対象としたワークショップが日本で初めて開催されます。2019年から2020年の2年間に約1週間のワークショップを計3回行い、3回目にはリーディング上演を予定しているそうです。小川さんがロイヤルコート劇場を表敬訪問したことがきっかけで生まれた企画とのこと。

 「劇作家のための劇場」と呼ばれるロイヤルコート劇場には100年の歴史があり、「新作戯曲のナショナルシアター」として若い才能を生み出してきました。1956年にジョン・オズボーン作『怒りをこめてふり返れ(https://www.nntt.jac.go.jp/play/lookbackinanger/)』が初演された劇場ですね。

 劇団協議会のJOIN92号(http://www.gekidankyo.or.jp/book/join/80/80_092.html)に掲載された検証座談会「翻訳劇プロデュースの今」で、演劇プロデューサー(江口剛史、小嶋麻倫子、篠原江美、毛利美咲)の全員が「戯曲は海外で探す」とおっしゃっていたのを、少し残念に思っていたのです。じっくり時間をかける「劇作家ワークショップ」から、世界的ヒットが期待できる戯曲が生まれるといいなと思います。

【取材を終えて】

 小川芸術監督の2シーズン目はより若手にフォーカスしたラインアップになったようです。1作品だけ詳細未発表ですが、今のところ演出家の最年長は55歳の千葉哲也さんですね。小川さんを含むシリーズ“ことぜん”の演出家3人、「大人も子どもも一緒に楽しめる作品」の小山ゆうなさんと長塚圭史さん、そして「こつこつプロジェクト」の演出家3人も含め、全員が40代以下…若いっ!!

 小川さんは懇談会で「劇場には舞台を上演して観客がそれを観るという機能が当然あるけれど、作品をつくる場としての機能もある」と強くおっしゃっていました。「こつこつプロジェクト」と「劇作家ワークショップ」はその実践ですね。劇作だけでなく演出のこともやっていく展望があるようです。

 商業演劇でもご活躍の小川さんは「公共の強みは実験的なことができること」だとして、新国立劇場が公共としてできること、やるべきことにこだわっていらっしゃいます。創作の場の提供と若手の起用・育成も、その指針に基づいているのでしょう。フルキャスト・オーディションも然りですね。

 「個人が芸術監督になるのは、その個人が責任を取るということ」という心構えで、「今のお客様に甘えていてはいけないし、守りに入ってはいけない」、「我々はあぐらをかかないという気持ちでいる」という力強い発言もありました。「4年間の任期の間にできる限りの環境作りをして、次の世代に渡していきたい」という決意にも感動します。4年といわず、次の期も芸術監督を続けていただきたいと思いました。

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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