20歳の国『青春超特急』04/19-29サンモールスタジオ

 竜史(りゅうし)さんが作・演出・出演・プロデュースする劇団「20歳の国(はたちのくに)」の新作です。上演時間は約2時間。⇒オーディション情報

 「CoRich舞台芸術まつり!2018春」の審査員として拝見しました(⇒99本中の10本に選出 ⇒応募内容)。※レビューはCoRich舞台芸術!にも書きます。

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≪あらすじなど≫ CoRich舞台芸術!より
片道乗車の時間の中では、昨日の夢はもう見れない。

-青春特急出発逆行-。

さよならだけでは終われないから、いざ追憶の旅に出よう。
仰げば尊い三年間、酸いも甘いも心に刻め。
愚直なまでに青春劇を作り続けてきた青春軍団20歳の国が建国からの集大成を謳う、終わりなき青春群像劇。

いざさらば青春!

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思えば何かを卒業したくて、ずっと走り続けてきた気がします。
解散はしません。改名もしません。でも、卒業します。
どんな青春を過ごした人々も、いつかは必ず卒業式を迎えるように。
青春を過ごした老若男女全人類に、そっとこの作品を贈ります。
桜舞い散った季節。少し遅めの卒業式で逢いましょう。
ご来国、心よりお待ちしています。

20歳の国・国王 竜史
≪ここまで≫ 

ロビーの展示
ロビーの展示

 高校3年の卒業式当日から始まり、過去3年間の高校生活を振り返る群像劇でした。大道具は学校によくある机と椅子のみで、それらを移動させたり組み立てたりして場面転換します。俳優が高校生らしい服装をしていることもあり、説明がなくても最初から高校生活を覗き見する気分になれました。物の助けがなくても物語が立ち上がる、シンプルな演劇の魅力があります。

 『青春超特急』という題名ほど猛スピードな印象はなく、ちょくちょく停車する準急ぐらいの感触でしょうか。会話の間(ま)を長く取りすぎだと感じることが多かったです。個人的には過ぎ去る日々への感傷よりも、前のめりの疾走を観たかったかもしれません。

 音楽に疎い私も耳にしたことがある日本の歌謡曲が流れ、歌われました。歌そのものに聞きごたえがある上に、歌詞や音調がエピソードに合っていて、高揚感がありました。ミラーボールもいいですね。照明、音響、群舞による晴れやかで躍動感のある場面を作るのがお上手だと思います。

 ここからネタバレします。

 入学、部活、恋、文化祭、受験、卒業、そしてそれぞれの進路。思春期の青春ど真ん中のエピソードがランダムに演じられます。20代以上の大人の俳優が制服姿で高校生を演じること自体に無理があるので、出演者全員が激しいダンスを披露することで、虚構の世界へと誘い込んでくれるのがありがたかったです。

 個人的に、現役高校生が高校生役を演じる高校演劇をよく拝見してきたので、大人だからこそできる高校生の群像劇を観たかった気もしました。たとえば“ヤングアダルト青春劇”と銘打たれた2016年の『保健体育B』は、濃厚なキスを含むラブシーンが山盛りで、20歳の国だからこそできる作品だと思えました。今作は登場人物全員が高校生です。有無を言わせない“高校生らしさ”を見せつけるのが難しければ、どこかに“高校生の世界”を俯瞰する視点を置いても良かったのではないでしょうか。

 セリフで発せられる名前が誰のことなのかすぐにわからず、何年生の時のエピソードなのかの予想もつきづらくて、なかなか物語の深部に入っていけませんでした。12人の高校生全員がはっきりとした個性を持つ魅力的な人物だったので、十分に味わえなかったのが残念です。

 バスケ部のイケメン越川(亀山浩史)と彼に告白したチハル(篠原彩)のキス・シーンがありました。越川は、自分のかっこ悪いところがバレて見捨てられるのが怖くて、チハルに「俺、そこそこかっこいいから(遠くから)見ててよ(だからもう別れよう)!」と言い放ちます(※セリフは正確ではありません)。初めてお互いに付き合っていることを確認して、キスもしたばかりなのに!(笑) とても可笑しくて可愛らしい場面でした。

【出演】
石井(バスケ部キャプテン・怪我で大会に出られず):萩原達郎(犬と串)
風間(高校中退・カラオケ屋で働く):斉藤マッチュ(20歳の国)
越川(バスケ部をやめる・チハルにキス・「俺そこそこかっこいいから(遠くから)見ててよ」):亀山浩史(うさぎストライプ)
センリ(西村の恋人・引っ越ししてしまう):山脇唯
鉄男(鉄道オタク):岡野康弘(Mrs.fictions)
ユウカ(センリの友達・石井に告白):湯口光穂(20歳の国)
土肥(演劇同好会の会長):傳田うに
西村(センリが転校して落胆し不登校):竜史(20歳の国)
ゲンタ(野球部に入るが引退後は演劇同好会へ):高橋義和(FUKAIPRODUCE羽衣)
アキ(走る女):鈴政美穂
丸山(野球部・試合に勝ったことがない):古木将也(20歳の国)
チハル(越川に告白・キスするが振られる):篠原彩
脚本・演出:竜史
舞台監督:本郷剛史 
舞台美術:坂本遼 
音響:池田野歩  
照明:山内祐太 
スチール:金子愛帆 
歌唱指導:伊藤靖浩
演出助手:高須賀あき乃・梅原香
制作:中宮智彩(江古田のガールズ) 
宣伝美術:津和野諒(アガリスクエンターテイメント)
プロデューサー:竜史 
企画・製作:20歳の国
【発売日】2018/02/03
【一般】前売3500円/当日3800円
【高校生以下】500円(前売・当日共通)※要学生証提示。※各回10枚限定。
【スタートダッシュ割引】前売3000円/当日3300円 ※19日-21日の3ステージのみ。
http://www.20no-kuni.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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