谷賢一さんがカナダ戯曲の上演台本と演出を手掛けます。リー・マクドゥーガル作『High Life(ハイライフ)』は翻訳の吉原豊司さんの第9回湯浅芳子賞受賞作なんですね。私は流山児★事務所での上演を2003年に拝見したことがあります。
チラシのビジュアルとぴったりの内容だったように思います。映像の清水貴栄さんがチラシのデザイもされてるんですね。上演時間は約1時間45分だったかと。もともとの戯曲より短くなっているようです。
彩流社
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≪あらすじ・概要≫ 公式サイトより
ー抜け出したいのさ、此処から。ー
四人の男たちの奔放な生き様を簡明直截に描き出し、
溢れる退廃と暴力の匂いで圧倒しながら、人間の本質の一面を浮かび上がらせるドラマ。
過激かつ反社会的な四人― ディック、ビリー、バグ、そしてドニー。
彼らが会すると、いつでも違法薬物と犯罪の臭気が立ち上る。
生活も人生も行き詰まって根無し草のような彼らは、ある計略を強行して大金を得ようと手を組む。
それぞれがそれぞれの思惑を胸に、仲間内で繰り広げる懐柔・牽制・挑発・脅迫…。
社会と常識から完全に逸脱した過激なジャンキーの生き様をフリークショウのように見せながら、
絆や敬意、対立や憎しみを描いて、人間の、生の本質の一面を浮かび上がらせるドラマ。
止められない、でも、脱け出したい。渇き飢えた本能は、四人を何処へと奔らせるのか?
ブルータルでオーセンティックな悲喜劇。
芝居、そして音楽と映像の融合によってもたらされるかつてない不協和音は、
かつてない演劇のカタチをもたらす。いや、其れはもはや演劇と呼ぶべきものなのか?
演劇へのかつてない挑戦=『High Life』を刮目せよ!
≪ここまで≫
薬物で刹那的な快楽に耽るダメ男たち。トリップする様子が俳優の演技と舞台奥の大きなスクリーンの映像、大音量の音楽(Open Reel Ensembleによる生演奏)で表現されます。
初日に拝見し、終演後に翻訳者の吉原豊司さんとお話をする機会に恵まれました。作者のリー・マクドゥーガルさんは現役の俳優で、今もブロードウェーの舞台に出演されているそうです。
「High Life」谷賢一×古河耕史×ROLLY鼎談 / 吉田悠(Open Reel Ensemble)|闘う演出家・谷賢一と4人の俳優が体現する、人間の不毛さと“悪の喜び” [Power Push公開中] https://t.co/Wzur2vDTdN pic.twitter.com/vB6cJxsLRh
— ステージナタリー (@stage_natalie) 2018年4月12日
「芸術・文化がきちんと言葉と表現力を持っていて、それを咀嚼する力を観客が持っている、ということが、日本という国がこの先まともな国に立ち戻っていくためには重要なことだと思うんです。」
— 地平線 〈野坂弘の演劇ユニット〉 (@ChiheisenTaro) 2018年4月8日
ここからネタバレします。
映像が全面に映されるスクリーンは床から天井までの高さで、下手手前から上手奥に向かって斜めにそびえています。映像と演技が混ざり合う演出になることは、ネット上の記事で読んで知っていました。役人物と一緒に私もラリってしまいたかったので(笑)、スクリーンだけではなく、人物にもべったりと映像が被ってもよかったんじゃないかなと思いました。
トリップしている最中は、1人ひとりがバラバラの動きをしていました。それぞれに別の夢を見てるから別々の演技をするのが自然かもしれません。でも同じ振付のダンスをするなどして、動きをシンクロさせる演出も観たい気がしました。皆でトリップしている多幸感とグルーヴ感を俳優の身体で可視化させるような。
がらくたのような古びた家具類が積みあがる中から、ソファや便器、自転車などをかき集めて、4人のジャンキー(覚醒剤の中毒者)が乗る自動車(盗難車)を作ります。見立てが面白いです。
4人は銀行のATMから不正に金を引き出す計画を実行しますが、想定外の事態となり犯罪は未遂に終わります。車内でビリーがバグをひどく煽ったため、頭に血が上ったバグはビリーを銃殺。体調不良で失禁した上に気を失っていたドニーの手に拳銃を持たせ、バグとディックは逃走します。
警察に捕まったドニーは殺人の罪を被り収監されました。獄中で病気を治してもらい、衣食住にも事欠かないため、ドニーはできるだけ長く刑務所にいたいと願っているとのこと。一般人なら不幸なはずですが、彼にとっては牢屋が幸せなんですね。
ディックは「ビリーはもしかすると、死にたかった(バグに殺されたかった)のかもしれない」と言います。なるほど…! どん底まで堕ちて浮上できる気がしないから、死ぬために故意にバグにケンカを売り続けていたんですね。となると、本懐を遂げたビリーもまた、幸せなのかもしれません。
以前と変わらない自堕落な生活に戻ったバグとディックの方が、不幸だとも受け取れますよね。とはいえ彼らもまた新しい金策を考えたようで、懲りないんですが(笑)。なかなか皮肉でパンチの効いた結末だと思います。
SMA_STAGE 第1弾公演
【出演】ディック(計画を立てる・リーダー):古河耕史、ビリー(イケメンだが崖っぷち):細田善彦、バグ(出所したばかり):伊藤祐輝、ドニー(腎臓が1つしかない):ROLLY
作:リー・マクドゥーガル 翻訳:吉原豊司 演出・上演台本:谷賢一
音楽:吉田悠(Open Reel Ensemble)、吉田匡(Open Reel Ensemble)、山口元輝(Molt Beats)
映像:清水貴栄(DRAWING AND MANUAL) 美術:松岡泉 照明:松本大介 音響:原田耕児 舞台監督:山下翼 宣伝美術:清水貴栄 飯野圭子 宣伝写真;磯部昭子 宣伝ヘアメイク:扇本尚幸 飯塚明寿美 共催:あうるすぽっと 主催・製作:株式会社ソニー・ミュージックアーティスツ
(全席指定・税込)前売:6,800円 当日:7,500円 豊島区民割引:6,500円(在住・在勤/要証明書提示)
※豊島区民割引は、としまチケットセンターで前売のみ取扱。
※10歳未満の児童はご入場いただけません
2/17(土)10:00~販売開始
http://sma-stage.com/highlife/
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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