山田百次さんが作・演出・出演し、河村竜也さんが出演・プロデュースする青年団リンク ホエイの新作は、『珈琲法要』『麦とクシャミ』に続く北海道三部作の第三部。約1時間40分。
戦後から現在の夕張を庶民の視点で綴ります。いずれ近いうちに私に訪れるであろう未来が描かれていました。
日本の炭鉱を描いたお芝居といえば、九州を舞台にした鄭義信さん作・演出の『パーマ屋スミレ』があります。今作で夕張の炭鉱のことも知れて、疑似体験できて、良かったです。山田さんの前説でも勧められますが、開演前にパンフレットを見ておくといいと思います。
『珈琲法要』は1/27(土) ~2/1(木)に札幌公演↓あり。
≪あらすじ≫ 公式サイトより。
ホエイ、北海道三部作、第三部。
北海道空知地方、夕張。
1980年代初頭。かつて良質な製鉄用コークスを産出し、高度経済成長を支えたこの地方の鉱山も、エネルギー政策の転換や、安い海外炭の普及により閉山に追いやられていた。
「石炭から石油へ」「炭鉱から観光へ」
国策で推し進められてきたはずの産業は、急激な転換を迫られ、混迷し、国からも企業からも見放され衰退していく。
それから約20年後、2000年代、財政破綻後の夕張。
再建の道は絶望的とされ、この町から出ていく者はあとを絶たない。
2014年、かつて2万人近くが暮らした町たちが、ついにダムの底に沈んだ。
いま、町を弔う。
≪ここまで≫
炭鉱の映画は下記などを拝見しました。
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日本でもロングラン上演された『BILLY ELLIOT リトル・ダンサー』も炭鉱町のお話です。
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「みなさん、さようなら」↓は団地の変遷を描いた刺激的な映画です。
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●森岡実穂さんの感想ツイート
ホエイ『郷愁の丘ロマントピア』@こまばアゴラ①:夕張の炭鉱夫だった92歳のアニキと80代の弟分たち。炭鉱が栄えていた頃の青年時代、大きな事故と閉山がたたみかけられる壮年時代と行き来しながら、限界集落となった現在の夕張を照射する。そして結構リアルにブラックな「~を待ちながら」話。
— Miho Morioka 森岡実穂 (@MoriokaM) 2018年1月13日
『ロマントピア』②戦争に送られ、土地を失って北海道の炭鉱に赴き、危険を潜り抜け働いてもエネルギー政策転換で失職、人口減少で終の棲家は消滅寸前。北の老人たちの個人史に圧縮された日本現代史。85年は私が大学に入った年。日航機墜落事故のあった年。そんな風に自分史とも重ねてしまう現代史。
— Miho Morioka 森岡実穂 (@MoriokaM) 2018年1月13日
『ロマントピア』③日本の『ビリー・エリオット』父親世代のその後、とも言えるかな。繊細な人間ドラマ、昔なじみの四人ですらそれぞれに見えている風景は微妙に違う。ツカミとしての老人たちの笑える情景が、過去を見るたび陰影を増していく。でも笑いが多いのは救い。まだ前半はチケットあるのでは?
— Miho Morioka 森岡実穂 (@MoriokaM) 2018年1月13日
ここからネタバレします。
アニキ(山田百次)は中国に出兵し、5年経って帰国したら家も土地もなくなっており、炭鉱に就職した。彼は事故が起きた炭鉱内で3人の後輩の命を救った。妻が病気になった後輩に、120万円を貸したりも。
やがてダム建設で故郷が水に沈むことになり、補助金をもらって強制退去。家は取り壊された。妻も子供も失い90代になったアニキは、上着のポケットに妻の遺灰を入れていた。彼が一円パチンコ「必殺仕事人V」に入り浸っていたのは、妻に、彼女が好きだった藤田まことの姿を見せるためだった。
最初の場面のアニキは鼻持ちならない老人なのですが(笑)、彼の半生を知ると言動にも納得できます。戦争の生き証人であり、経済政策にひどく翻弄された一庶民であり、命がけで友を、友人関係を守ってきた尊敬に値する人物なんですよね。
「山田百次が演じるのは○○です」と舞台上で役人物と俳優紹介をします。回想シーンでは帽子や眼鏡を取るだけで、老人から若者へと舞台上で変身。舞台美術の移動はせず、衣装と小道具、照明の変化で瞬時に場面転換するのがスマートでした。
炭鉱の事故で左腕を失くし、写真屋になった人(河村竜也)もいました。危険な仕事に行く夫を止められず、ただ待つしかない妻たちも描かれました。
事故が起こった後、救出するために坑内に入っていく場面では、完全暗転して劇場全体を坑内にしてくれたので、暗闇の恐怖をほんの少しばかり疑似体験できました。
舞台中央に鎮座する石碑は、炭鉱事故で亡くなった方々の名前を記した墓碑でもあります。石碑を、死亡した炭鉱夫の名前が流れるテレビに見立てるのが良かったです。石碑は町そのものの墓でもあるんでしょうね。
青年団やその関連団体の公演では、俳優が細かい演じ分けや微妙なセリフのやりとりに尽力し、誠実に作品世界を立ち上げてくださっていると思うことが多いです。同時に、俳優があえて感情を動かさないようにしてるように感じることもよくあります。この作品もそうでした。感情に溺れたり、ひたすら熱く発散したりする状態を、理性で避けているのかもしれません。
私個人としましては、舞台で起こることに身を任せ、小刻みに変化する感情もさらして、役人物であると同時に俳優本人でもある状態で、互いに影響しあう、スリリングなお芝居が観たいと思っています。その意味ですと、アニキから120万円をもらった時の後輩(武谷公雄)の演技に、真実味を感じました。
ホエイ『郷愁の丘ロマントピア』ご来場いただいた皆様ありがとうございました。
毎ステージ、作家 山田百次の人間への、俳優への、優しさを噛み締めながら舞台に立てました。
またこの爺たちとどこかでお会いしましょう!! pic.twitter.com/WX5eHTqtyL— 武谷公雄 (@taketani_kimio) 2018年1月22日
出演:河村竜也(ホエイ|青年団)、長野海(青年団)、石川彰子(青年団)、斉藤祐一(文学座)、武谷公雄、松本亮、山田百次(ホエイ|劇団野の上)
脚本・演出:山田百次(ホエイ|劇団野の上)
照明:黒太剛亮(黒猿) 衣裳:正金彩 演出助手:楠本楓心 制作:赤刎千久子
プロデュース・宣伝美術:河村竜也
芸術総監督:平田オリザ 技術協力:鈴木健介(アゴラ企画) 制作協力:木元太郎(アゴラ企画)
企画制作:ホエイ/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
助成:平成29年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業
【発売日】2017/12/03
《早割》
一般 2,800円
特設割引 1,800円
高校生以下 500円
一般 3,200円
特設割引 2,200円
高校生以下 500円
【特設割引対象】
学生(専門学校・演劇研修所在籍者を含む)
ユース(26歳以下)、シニア(65歳以上)
障害者、失業保険受給者およびそれに準ずる方
ご観劇当日、受付にて証明書をご提示ください。
学生:学生証など在学証明書類
ユース・シニア:運転免許証など年齢が確認できる書類
障害者:障害者手帳
失業保険対象者:ハローワークカードなど
*全席自由席・日時指定・整理番号付
*未就学児はご入場いただけません。
https://whey-theater.tumblr.com/
http://stage.corich.jp/stage/87716
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