ブス会*『男女逆転版・痴人の愛』12/08-19こまばアゴラ劇場

 ペヤンヌマキさんの新作に安藤玉恵さんが主演されます。「ペヤンヌマキ×安藤玉恵生誕40周年記念ブス会*」とのこと。上演時間は約1時間40分弱。

 原作は谷崎潤一郎作「痴人の愛」です。Kindle版↓は無料です。青空文庫もあります。

痴人の愛
痴人の愛

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(2017-09-28)

≪あらすじ≫ 公式サイトより
「小鳥を飼うような心持」で女給の少女「ナオミ」との同棲を始めた平凡な主人公・譲治。二人の主従関係が逆転していく様を描き、1924年の発表から約100年の時を超えて未だ読まれ続ける不朽の名作、谷崎潤一郎の『痴人の愛』を、現代に置き換え男女逆転させて描くブス会版『痴人の愛』。
仕事人間の40歳独身女性の“私”は男性に対して独自の理想を持つようになる。それは未成熟な少年を教育して自分好みの男に育て上げるというもの。ある日“私”は美しい少年ナオミと出会い、「小鳥を飼うような心持」で同棲を始める。人見知りで垢抜けない少年だったナオミは次第にその美貌を利用して奔放な振る舞いを見せるようになり“私”はナオミに翻弄され身を滅ぼしていく…。
≪ここまで≫

 木製で和のムードの舞台装置です。イメージは鳥籠でしょうね。下手奥でチェロの生演奏(浅井智佳子)あり。「痴人の愛」はずいぶん昔に読んだことがあります。

 吹き出し笑いをしながら楽しみました。舞台を現代にし、一人称の<私>が女性に変わったことで、今と未来について色々考えられました。妊娠、出産、子育てと、その年齢的リミットという、現代女性にかけられた呪いは重いと感じます。ナオミを入れる鳥籠に、作った本人も囚われています。鳥籠はすなわち現代社会であり、自分の脳内でもあるのだろうと思いました。

 ここからネタバレします。セリフなどは正確ではありません。

 たぶん平成24年から約5年間のお話。<私>(安藤玉恵)は学習院の女子校に通い続けた大学教員。専門は西洋美術。母の遺産に手を付けず、地味に、まっとうに生きてきた40歳の女性です。バーで拾った15歳の少年ナオミ(福本雄樹)と、駒場に借りた一軒家で暮らし始めます。<私>はナオミに一流大学に受かって立派な人間になってもらいたかったのですが、素行の悪い彼が進学したのは音楽の専門学校。音楽の才能もないことがわかります。

 とても印象に残ったのが<私>のこのセリフ。「私の愛は、男の器が小さいと知ったゆえに消えるほど、幼稚でも単純でもなかったのです」(正確ではありません)。そうなんですよね…愛はとても理不尽。ナオミをアクセサリーのように所有していたはずが、それほど輝いていないとわかっても、執着はやめられない。

 ナオミは男女を問わず恋人を何人も作って、<私>を裏切り続けました。<私>はとうとう堪忍袋の緒が切れて彼を追い出すのですが、ナオミは性懲りもなく再び戻って来ます。彼の(意図的に露出させた)裸の上半身を見た<私>は態度を翻し、「なんでもするからここに居て」と懇願します。「そんなに言うなら居てやるよ」と開き直ったナオミは、「20歳(ハタチ)から見たら45歳はおばさんだよ、ババアのくせに色気づいてんじゃねえ、気持ち悪い」などと言い放ち、<私>は思わず彼を押し倒して殺そうとします。やがて倒れたナオミが勃起していることを発見し、そのまま犯します。

 その後、<私>は45歳で出産し、48歳で3歳のナオミを育てている場面で終幕します。<私>は「今度はまともなナオミとして、自分のお腹から生まれてきてほしい」という意味のセリフも言っていました。<私>にとって、20歳のナオミとの性行為は快楽目的ではなく、生殖のためだったんですね。とても現代的だと思います。今は精子バンクもありますしね。

 <私>は29歳の時に妻子持ちの不倫相手がいて、「5年後も一緒にいたら子供を作ろう」と言われましたが、1年後の<私>が30歳の時には別れていました。不倫アルアルですね。でも45歳の時には、愛の結晶としての子供ではなく、自己肯定感を満たしてくれる所有物としての子供を求めたわけです。なんとも、考えさせられます。

 山岸門人さんが、<私>とナオミが初めて出会ったバーのマスター(オネエ言葉でゲイだとわかる)や、慶應大学のサラブレッドのギタリスト浜田、<私>の同僚などを兼任。下手奥の女性チェロ奏者を、ナオミの若い恋人と見立てるのが良かったです。

 学習院、慶應、グッチなどの固有名詞から色んな想像をするけど(そしてかなり笑えたけど)、今の私の感覚で合っているのかしらん。

ペヤンヌマキ×安藤玉恵 生誕40周年記念ブス会*
出演:安藤玉恵、福本雄樹(唐組)、山岸門人、浅井智佳子(チェロ演奏)
脚本・演出:ペヤンヌマキ 原作:谷崎潤一郎『痴人の愛』
美術:田中敏恵 / 照明:伊藤孝(ART CORE) / 音響:中村嘉宏 / 舞台監督:村田明、土居三郎
演出助手:奈良悠加 / 小道具:小林麗子 / イラスト:Cato Friend / 宣伝美術:冨田中理(Selfimage Products)
WEB:rhythmicsequences / 宣伝写真:宮川舞子 / 広報:黒澤友子
制作:半田桃子、横井佑輔 / 制作助手:榎本靖、岩田博之 / 制作協力:木下京子、黒澤友子
企画協力:山田恵理子 主催:ブス会*
【発売日】2017/10/14
一般シート(入場整理番号付自由席) 前売4000円/当日4500円
ブスシート(入場整理番号付自由席/1~2列目ベンチ席) 前売4000円/当日4500円
プレビュー公演 一般シート・ブスシート共に 前売3800円/当日4300円
上映会(入場整理番号付自由席) 前売・当日共に 1500円
http://busukai.com/
http://stage.corich.jp/stage/87804

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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