ブロードウェイシアターライブシリーズの第一弾としてミュージカル「Allegiance(アリージャンス)~忠誠~」の上映がありました。2016年の公演を収録した映画です。ジャパンプレミア上映会で舞台挨拶付き。
12月29日までクラウドファンディング実施中。今回の上映会の費用以外では、2018年以降に全国を回るキャラバンプロジェクトのために使うそうです。
インスタ映えする(?)恵比寿。映画版「アリージャンス 忠誠」を見てきました。中盤以降がとても良かった。こまつ座「マンザナ、わが町」と同様、多くの人に見てもらいたい。 pic.twitter.com/c7Nhkhr4bv
— 高野しのぶ(しのぶの演劇レビュー) (@shinorev) 2017年11月12日
本日夜!BS1 国際報道2017 22:00-22:50にて「日系人俳優 ジョージ・タケイさん 不寛容な世界へのメッセージ」が放送されます!ジョージさんのメッセージをみなさまに届けたい!拡散をお願いいたします!https://t.co/TijkynP6mw
— Theater Live Japan (@TheaterliveJP) 2017年11月13日
≪あらすじ≫ こちらより
第二次世界大戦の勃発と共に物語の主人公のキムラ一家の様な日系人は「敵性外国人」と見なされ、ルーズベルト大統領による大統領令によって強制収容所に送られてしまう。強制収容所での厳しい暮らしの中でも”GAMAN”の精神で希望を失わず日々を耐えていた彼らにある日、忠誠心調査書(Loyalty Questionnaire)が配られアメリカへの忠誠を問われる、この忠誠書に対する考え方を巡って対立する家族、そして日系人コミュニティはそれぞれの道で自由を求めて戦いを始めるー
今作は日系アメリカ人家族キムラ一家を中心に希望、愛、そして赦しを描いた物語である。
≪ここまで≫
ここからネタバレします。
日系アメリカ人12万人が強制的に収容所に入れられます。財産は没収、職業も失います。軍に志願したい弟と、白人女性看護師との恋が生まれるあたりから面白くなりました。それまでは「舞台も客席も全体が一丸となって盛り上がろう!」というムードが私には苦手で、また、演出も洗練されているとは思えず、少々引いて見ていました。
中盤以降は前半よりさらに理不尽で、家族に、仲間に亀裂が入って反ばくし合うという残酷な展開に。広島への原爆投下シーンがしっかり描かれていたことに感動しました。日系アメリカ人の兵士たちは最も危険な前線に送りだされたとのこと。200人を助けるために800人が死亡したという戦場のエピソードもショックでした。
姉の死の報せを受け、50年振りに家族を思い出す弟(ジョージ・タケイ)。姉が遺した封筒(弟が表紙になったLIFEマガジン)によって亡き父との誤解も解け、姉の娘と再会するハッピーエンドでした。
≪上映後の舞台挨拶≫
登壇者:ジョージ・タケイ、ロレンゾ・シオーネ(プロデューサー)、エレナ・ワン(出演者、LA公演の姉役)、司会、通訳
「終戦から70年以上経過し、この史実を知らない人(アメリカ人含む)が増えている、二度とこのような過ちを繰り返さないために、この映画を広めたい(だから支援して欲しい)」というのが、この上映会の主旨のようです。2020年の東京オリンピックで世界中から日本に大勢の人々が集まるから、その時にできれば日本中でこの映画を上映したいともおっしゃっていました。
ジョージ・タケイさんが強制収容を体験した日系アメリカ人三世として、土曜日の日本語学校で学んだという日本語で話をしてくださいました。「この作品では国への忠誠、家族への忠誠、そして自分自身への忠誠という3つの忠誠が描かれている。国が間違うことはあるし、家族で生き方が違うこともある。そして自分は何者なのか…」。個人を問う物語なんですね。登場人物がそれぞれの道を選び、行動する姿は美しく、だからこそ衝突し、離別してしまう展開に説得力がありました。
プロデューサーの男性は「頭にではなく感情に訴える媒体としてミュージカルが最適だと思った」とも語られていました。タケイさんは「日系アメリカ人収容所の博物館はあるが、それは頭に訴えるもの。心から収容所の苦しみをわかってもらいたい」「この舞台は娯楽(entertain)であり啓蒙・啓発(enlighten)でもある」とも。
『アリージャンス』は来年にロサンジェルスでの上演が決まっており、姉役で出演する女優エレナ・ワンさんも登壇されていました(今回の上映作品にも出演)。アジア人がメインキャストを占めるミュージカルが高く評価され、長く上演されるのは、アメリカの舞台芸術界の懐の深さゆえでしょうか。私個人としても、これからも上演され続けて欲しいミュージカルだと思いました。
※司会進行について
「タケイさんの友人だ」と自称するMC(司会)の男性が、「皆さんが大ファンであるジョージ・タケイさんの登場です!」等と観客を煽るのは、観客を一個の集団として扱う不遜な態度に見えました(私はタケイさんのファンではりませんし、“有名スター”目当てでもありません)。「観客の皆さんを代表して私が言わせていただきます!(次に「タケイさんを尊敬します」といった発言が続く)」とも言っていました。「こんなスターがいる機会はそうはないですよ、写真を撮りたい人は急いでこちらへ!」などと観客に命令したりも。彼は終始、観客に対して上から目線の(そしてスターには媚びる)失礼な態度でした。
映画館での舞台上映といえば、私にとってはナショナル・シアター・ライヴ(NTLive)です。NTLiveの、観客それぞれが自律しているからこそ自由な鑑賞時間に慣れている者としては、不満が残る劇場空間でした。
≪出演(抜粋)≫
祖父、老いた弟:ジョージ・タケイ(スター・トレック, ヒーローズ)、
姉:レア・サロンガ(ミス・サイゴン,ムーラン,アラジン)、
弟:テリー・リアン(glee,アラジン)、
姉の恋人:マイケル・K・リー(宮本亜門版・太平洋序曲)、
白人女性看護師(弟の恋人):ケイティー・ローズ・クラーク
父:クリストファーレン・ノムラ
マイク・マサオカ:グレッグ・ワタナベ
演出:スタフォード・アリマ
脚本:マーク・アシート、ジェイ・クオ、ロレンゾ・シオーネ
作詞作曲:ジェイ・クオ
振付:アンドリュー・パレルモ
編曲・オーケストレーション:リン・シャンケル(Bare)
配給/宣伝:Theater Live Japan llc
2016年/アメリカ/2時間10分/DCP/カラー/5.1ch/日本語字幕/原題 Allegiance
アメリカ大使館後援
料金(税込):3,780円 ※ 別途手数料あり
発券用紙代108円 システム利用料216円
http://theaterlive.jp/
http://l-tike.com/cinema/mevent/?mid=305807
https://a-port.asahi.com/projects/Allegiance/
http://allegiancemusical.com/article/%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%AF%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%A7%E5%88%9D%E6%BC%94%E3%81%99%E3%82%8B/#MLG4GPcKvlYTcDAm.97
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