欠かさず通っているナショナル・シアター・ライヴ。今月はシェイクスピアの『お気に召すまま』です。昨年と今年に1度ずつ観た戯曲なので、自分はどう受け取るのかな…と少々不安があったのですが、杞憂でした。素晴らしかった…!!大がかりな場面転換で泣いてしまったよ…!パンフレット600円を購入。
≪あらすじ≫ 公式サイトより
弟に領地を奪われ、アーデンの森で暮らす元侯爵。その娘ロザリンドもまた、現侯爵である伯父に追放され、従妹シーリアとともにアーデンの森へ。ロザリンドに恋をしていたオーランドも訳あってアーデンの森へ行き、そこで身を守るために男として生きるロザリンドと出会う――。男装した娘と騎士の恋の駆け引きを牧歌的雰囲気で描いた、シェイクスピアの人気喜劇。『三文オペラ』でロリー・キニアの相手役を務めたロザリー・クレイグが、“男装の麗人”ロザリンドに扮する。森を斬新に表現したリジー・クラチャンの舞台美術にも注目!
≪ここまで≫
長い独白の間にコロコロと気持ちが変化します。それが鮮やか!ロザリンドがフレデリック公爵に追放される場面は、彼女の悲痛さがくっきり出ていて、シーリアがロザリンドと一緒に家を出て行くとサラリと言った時には、胸にグっと来ました。まさかこの場面で感動させられるとは…!
歌が上手い…合唱が美しい…。恵み豊かだけれど命を奪われる危険もある“森”の神秘、大自然の驚異が美術、照明、歌のアンサンブルで表現されていました。
英語圏の方々にとってシェイクスピアのセリフは“古語”なのだろうと思います。「外国人は予習しなくてもシェイクスピアを楽しめるからいいよね」と英語圏の観客が言っていた…という話を聞いたことがあります。翻訳はありがたいですよね。目の前で今を生きている俳優が、古い言葉をしゃべっている。その時点で現実からかけ離れた、ちょっと不思議な状態になりなす。英国人がシェイクスピア戯曲を現代風にしたり、新解釈したりするのは、虚構の層をもう1段つけ加える演劇的行為になるのかな~などと考えました。もう“お手の物”という感じ。
開演前にはナショナルシアターで過去に上演されたシェイクスピア作品を振り返る映像があり、休憩時間にはロザリー・クレイグさん(ロザリンド役)とパッチ―・フェランさん(シーリア役)、マーク・ベントンさん(タッチストーン役)とポール・チャヒーディさん(ジェイクス役)のインタビュー映像が流れました。
ここからネタバレします。
最初は、デスクが並ぶ事務所で人々が黙々と働いているという、現代社会を思わせる舞台美術でした。それが“アーデンの森”へと変貌するのですが、なんと、デスクとイスが紐でつながっていて、次々と天井に向かって吊りあがっていくんです。宙に浮く灰色の無機質な家具たちが、深い森の木々となりました。異世界の扉が開き、現実がぐしゃぐしゃに崩壊してしまったかのような、過激な場面転換です。照明と音響、歌の効果で荘厳さも伝わってきました。ダイナミックかつドラマティックな仕掛けに感動し、震えながら涙しちゃいました。演出のポリー・フィンドレイさんは『宝島』でも美術、転換が凄かったです。
結婚の神ハイメンは登場せず、羊飼いにそのセリフを言わせていました。そういえば後半は、羊飼いがずっと下手手前に居たようなんです(未確認ですが)。つまり羊飼いこそが森の魔術師で、彼の魔法によって人々が改心したり、幸福になっていった…と解釈できるんですよね。そういえばロザリンドとシーリア、そして道化のタッチストーンが森で最初に出会ったのは羊飼いで、彼のおかげで住む家も食べ物にもありつきましたよね。武装してやってきた高慢なフレデリック公爵も、森の入り口で隠遁者と出会い、心変わりします。それも森の魔法(神の化身である羊飼いの仕業)だと考えると、大・大・大・大・大団円も素直に受け入れられます。
NTLive『お気に召すまま』面白かった〜。『宝島』に続いてポリー・フィンドレイ演出たっぷり楽しい。賑やかなコーラス、ワクワクする舞台美術。前半のカラフルな町から、後半の陰影豊かな森へのセット転換が目を見張る。シーリア役パッツィー・フェランは相変わらずキュート!字幕は松岡和子さん pic.twitter.com/Rt3VRp21QS
— じんこzzz (@zzztot) 2017年10月13日
2015年のNTLive『宝島』の時も舞台美術に圧倒されたけど『お気に召すまま』もそう来たか!って見せ方で、おぉ〜〜っと興奮した。衣装もかわいくて、目に美味しい嬉しい。 pic.twitter.com/lZGfdx976B
— じんこzzz (@zzztot) 2017年10月13日
NTLive『お気に召すまま』きれいな声で歌う男性だな〜って聞き惚れてたら『レ・ミゼラブル』のクールフェラック役フラ・フィーだったぁぁぁぁぁ pic.twitter.com/1tNl0JB4EF
— じんこzzz (@zzztot) 2017年10月13日
上映時間:約180分(休憩含む) ※公式サイトでは200分となっています。
初演劇場:ナショナル・シアター(オリヴィエ)@ロンドン
プレビュー:2015年10/26~11/2 公演期間:2015年11/3~2016年3/5
【出演】
オーランドー:ジョー・バニスター
オリヴァー:フィリップ・アルディッティ
ロザリンド:ロザリー・クレイグ(『三文オペラ』)
シーリア:パッツィ―・フェラン(『宝島』)
タッチストーン:マーク・ベントン
フレデリック公爵:レオ・リンガー
前公爵:ジョン・ラム
フィービー:ジェマ・ローレンス
ジェイクス:ポール・チャヒーディ
アダム:パトリック・ゴッドフリー
コリン:アラン・ウィリアムス
シリヴィアス:ケン・ヌス
他
作:ウィリアム・シェイクスピア
演出:ポリー・フィンドレイ(『宝島』)
舞台美術:リジー・クラチャン
衣装:クリスティーナ・カニンガム
照明:ジョン・クラーク
音楽:オーランド・ゴフ
振付:ジョナサン・ゴダード
音響:キャロリン・ダウニング
料金:一般3,000円 学生2,500円
http://www.ntlive.jp/asyoulikeit.html
http://ntlive.nationaltheatre.org.uk/productions/52844-as-you-like-it
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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