PARCO&CUBE 20th. present『人間風車』09/28-10/09東京芸術劇場プレイハウス

 後藤ひろひとさんが1997年に発表されたホラー・ファンタジーを河原雅彦さんが演出。脚本が一部改訂された2017年版です。上演時間は約2時間25分(休憩なし)。

 私はパルコ劇場での2000年版、2003年版を拝見していまして、加藤諒さんが演じるサム役は、阿部サダヲさん(2000年)、河原雅彦さん(2003年)でした。14年振りの上演でキャストは一新されています。

≪あらすじ≫ 公式サイトより
 売れない童話作家の平川が披露する奇想天外な童話に、近所の子供たちは大はしゃぎ。けれども、童話の登場人物や題名はレスラーの名前、テーマも”三流大学出身より高卒の方がまし” だから、子供の親からはクレームばかり。
 公園に集まる子供たちの中には、へんてこ童話の主人公になりきって現れる奇妙な青年・サムがいた。
 ある日、平川はひょんなことからTVタレントのアキラと知り合う。その出会いは平川の作風にも大きな変化をもたらしていくのだが…
≪ここまで≫

 美術はカラフルなおとぎ話の世界。周り舞台で場面転換します。音響も照明も派手な娯楽作ですね。

 「懐かしいな~!」というのが前半の感想でした。おそらく昔のネタを敢えて残してるんでしょうね。20代(もしかしたら30代も?)以下の人は知らないだろうと思われる固有名詞もいっぱい。現代向けのアップデートもされていました。

 主演の成河さんが演じる平川役は絵本作家で、自分が創作した物語をいくつも語ります。彼のセリフは情景が伝わってくるんです。やっぱり上手いですよね。ぼけ・つっこみの落としどころも心得ていらして、安心です。

 タレントのアキラ役のミムラさんは舞台出演が2度目だそうですが、繊細な心情を丁寧に伝えてくださるし、身体表現においてもチャレンジをされていて、とても良かったです。またストレートプレイで拝見したい女優さんだと思いました。

 ここからネタバレします。これからご覧になる方は読まないでくださいね!セリフなどは正確ではありません。

 突然、あっけらかんとハッピーでバカっぽい雰囲気が一変して、ホラー・テイストになってからが、やっぱり面白いですよね。特に残酷な殺りくシーンは、演劇なのだから嘘だとわかっているのだけれど、恐ろしいです。でも同時に、スカっとしている自分もいるんですよね…。自分が望んだ復讐を、そのまま他人がやり遂げくれるわけで。

 平川の新作を盗んで自分の本として出版してしまった国尾(良知真次)が、「俺はこれからどうやって生きていけばいいんだ!?」とのたうち回って苦しむところが、特に印象深かったです。人間は他人を騙せても、自分自身は騙せないし、ごまかせないんですよね。自分の悪事や罪を消し去る(=リセットする)ことはできないから、生き続けることがまるで「罰」のようになっていくのかもしれません。

 山際刑事(堀部圭亮)は「死にたくても死ぬ勇気がなかった。死ぬまで生きてみようと決めた」と、平川に吐露していました。平川の物語に従って沢山の人を殺してしまったサムは、“背中の翼を心に返して”この世を去ります。それで終幕しなかったのが、パルコ劇場で上演された時とは違っているようです。ごく親しい人々を惨殺する物語を作った平川は、その記憶から逃れることができない。それを背負って、死ぬまで生きるしかないのだと、暗示されているように受け取りました。

≪「人間風車」主な登場人物≫ 公式サイトより

平川(成河)
売れない童話作家。近所の子供たちに奇想天外な童話を披露するのが日課。アキラとの出会いが作風にも大きな変化をもたらしていく。

アキラ(ミムラ)
仕事に恵まれていないタレント。小杉がディレクターを務める番組でレポーターや司会を務めている。平川の純朴さとその物語に心惹かれる。

サム(加藤諒)
平川の童話を楽しみに公園に現れる風変わりな青年。近所の子供達に交じって話を聞き、後日その童話の登場人物になりきって現れ、平川らを驚かせる。

小杉(矢崎広) 
TV局のディレクターで平川の大学時代の友人。アキラに好意を寄せ番組に起用しているが、振り向いてもらえない。私利私欲のためなら狡猾で手段を選ばない。

則明(松田凌)
公園で平川の話を聞く子供たちのリーダー的存在。にくらしさ満点だが、平川の話す童話にはいつも目を輝かす。

蒲田(今野浩喜)
刑事。山際の部下で、いつも振り回されている。殺人事件を捜査することになる。 

のん(菊池明明)
公園に平川の童話を聞きに来る女の子。

中野(川村紗也)
TV局のアシスタントディレクターで小杉の部下。現場でアキラが心を許す唯一の人物。

かっつん(山本圭祐)
公園に平川の童話を聞きに来る男の子。

古谷(小松利昌)
平川が応募した童話賞の選考委員。

紺野(佐藤真弓)
近所の親たちのリーダー的存在。子供に悪影響のある平川を毛嫌いしている。

山際(堀部圭亮)
連続殺人を捜査するベテラン刑事。過去の事件の辛さを抱えながらも、ブラックなウィットとユーモアに富んだ発言をする。

国尾(良知真次)  
平川の童話作家仲間で、数少ない大人の友達。平川と対照的に現実的な思考の持ち主で、 “売れる童話”を書いている。

≪東京、高知、福岡、大阪、新潟、長野、仙台≫
出演:成河、ミムラ、加藤諒、矢崎広、松田凌、今野浩喜、菊池明明、川村紗也、山本圭祐、小松利昌、佐藤真弓、堀部圭亮、良知真次
脚本:後藤ひろひと 演出:河原雅彦 美術=石原敬 音楽=和田俊輔 照明=大島祐夫 音響=大木裕介 映像=大鹿奈穂 衣裳=髙木阿友子 ヘアメイク=河村陽子 殺陣指導=前田悟 演出助手=元吉庸泰 舞台監督= 榎太郎 安達徳仁 宣伝美術=東學 北窓優太 宣伝写真=?忠之 宣伝衣裳=宮本真由美 宣伝ヘアメイク=西岡達也 岩下倫之 制作=佐々木悠(キューブ) 藤野和美 宣伝広報=米田律子(キューブ) プロデューサー=尾形真由美(パルコ) 高橋典子(キューブ) 製作=井上肇(パルコ) 北牧裕幸(キューブ) 企画・製作=パルコ キューブ
【発売日】2017/06/08
入場料金(全席指定・税込) 
S席8,900円
A席7,800円
U-25チケット5,000円(観劇時25歳以下対象、当日指定席引換、要身分証明証/チケットぴあ、パルステ!にて前売販売のみの取扱い)
※未就学児のご入場はお断りいたします。
http://www.parco-play.com/web/play/ningenfusha/
http://www.parco-play.com/web/program/ningenfusha/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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