ドイツの児童文学書「Tschick(チック)」(作:ヴォルフガング・ヘルンドルフ)が、ロベルト・コアルさんにより戯曲化され、2011年にドイツで初演されました。小説の邦題は「14歳、ぼくらの疾走:チックとマイク」です。
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『チック』は今でもドイツで上演が重ねられている人気の舞台だそうです。今回の日本初演はドイツ生まれの小山ゆうなさんが翻訳、演出されました。初日の上演時間はカーテンコール込みで約2時間35分(途中休憩15分を含む)。
14歳の少年2人の夏休みのお話ですが、“単純明快な成長物語”や“青春の甘酸っぱい思い出”といったありがちな印象はあまりなく、現代社会の表と裏、光と影をきっちり描き、歴史を振り返りながら今を生きる人類に希望を持たせてくれるような、刺激的で面白いお芝居でした。公式サイトの作品解説などが充実していますので、どうぞ参考になさってください。
なんと、映画版『50年後のボクたちは』の上映が9月から始まるそうです。幸運な機会だと思います。舞台を観てから映画館へGO! ※舞台を観るまでは、映画の予告編を見ないことをお勧めします。
観た人の心に爽やかな感動を残す舞台『チック』、どうかお見逃しなく!
日本経済新聞、https://t.co/h9hTXvHZTE、毎日新聞https://t.co/WSam8wsbkx、読売新聞に劇評が掲載されました。
上演は8月25日19時、26日13時・18時、27日13時。 pic.twitter.com/zbhzc2dAJY— 世田谷パブリックシアター (@SetagayaTheatre) 2017年8月24日
↓2017/12/08加筆。
【受賞のお知らせ】今年8月上演『チック』翻訳・演出の小山ゆうなさんが、第10回小田島雄志・翻訳戯曲賞を受賞されました。おめでとうございます!
賞HP https://t.co/8g1DpPY4TZ
『チック』HP https://t.co/wXmEbsRnp5 pic.twitter.com/8OGVZ87j5v— 世田谷パブリックシアター (@SetagayaTheatre) 2017年12月6日
≪あらすじ≫ 公式サイトより。(俳優名)を追加。
少年2人の思い出の夏には、狂気と切なさがつまってる……
14歳の冴えない少年マイク(篠山輝信)は喧嘩ばかりの両親と、退屈な学校生活の毎日に出口のないような息苦しさを感じていた。だがある日そんな生活を一変させる出会いが彼に訪れた。それは転校生のチック(柄本時生)だ。彼はロシアからの移民で、風変りで問題児。チックは突然マイクの家を訪ねてくる。「乗れよ」チックが盗み出したオンボロなラーダ・ニーヴァに乗り込み2人はひと夏の旅に出る。
これまで見えていた世界とは全く違う新しい景色と、新しい出会いが彼らを待っていた!
≪ここまで≫
劇場の壁が露出した状態で、舞台中央には少し傾斜のある四角い台が置かれています。その上部には台の大きさよりも二回りほど小さい四角いパネルが吊り下がっており、台の上にいる俳優を、並行な位置関係の台とパネルで挟むような感じです。
舞台の上下(かみしも)には、ダイニングテーブルとイス、食器棚に洗濯機、ソファにスタンドライトなどの家財道具が雑然と置かれています。大きな果物と葉っぱが連なる綱なども劇場の壁に引っ掛けられており、俳優はそれらのさまざまな道具を場面ごとに取り出して使用します。
14歳の少年マイクが語り部となり、チックとの夏休みの冒険を、観客に話し掛けながら演じていきます。少年2人を演じる俳優以外は、複数の人物を演じ分けます。主に何もない四角い台の上で、大人の俳優が幼児から老人まで演じるので、ドイツの物語ですが、日本人である私自身のこととして受け取りやすいのだと思います。また、流行に疎い私でも耳にしたことがある最近のポップスが流れたり、有名スターの話題が出るので、身近に感じられます。まさに現代の話なんですね。
マイクは100年前、100年後について考え、語ったりしますので、観客も遥か昔と遠い未来へと思いを馳せられます。ある家族のあり方だけでなく、戦争や人種差別、移民問題など、過去の歴史と現在に言及しているのは、ドイツらしいところかもしれません。信頼できる戯曲だなと思いました。
現代社会の重いテーマがいくつも取り上げられていますが、マイクの独白で対象化してくれるし、変な重苦しさはありません。大人も子供も、今を懸命に生きる姿を元気に、魅力的に見せてくれます。コミカルな演出も盛りだくさんで、映像中継の工夫も効果的で楽しいです。
舞台『チック』公演直前対談!篠山輝信×特別ゲスト・成河「むちゃくちゃ面白い本に出会えた!観に行くのが楽しみです」
#チック
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#柄本時生
#小山ゆうなhttps://t.co/VkXH6rnCMG pic.twitter.com/5qSltNjxbu— エンタステージ (@enterstage_jp) 2017年8月9日
本日8/10(木)の毎日新聞 夕刊に演出 小山ゆうなさんのインタビューが掲載されています!『チック』の舞台であるドイツ出身の小山さんが作品の魅力を語っています。全文はこちらから。ぜひご一読ください。https://t.co/JIhUukvuyF … #チック #小山ゆうな
— 2017年『チック』公式 (@Tschick2017) 2017年8月10日
ここからネタバレします。 セリフなどは正確ではありません。
マイクの父は事業に失敗して破産していますが、家では偉そうに振る舞い、若い女性と不倫中。母はアルコール依存症でリハビリ施設への入退院を繰り返しています。母が入院し、父が浮気相手と旅行に出かけ、マイクは夏休み初日にほったらかしにされるのです(いわゆるネグレクト)。冒頭でその設定がわかった時点で、これは腹をくくって観なきゃなと思いました。
舞台中央の台は回転式で、俳優が手動で回し、場面転換します。最初は台と並行の位置にあったパネルですが、角度が変わって映像を映すスクリーンになります。
車を運転する2人は、客席中央、最前列の席に座ります。その様子をカメラで撮影してパネルに映写するのです。他の場面でも映像中継は多々あり、カメラの操作は俳優が行います。車の運転はやがて、舞台上のラジコンカーを操作する方法になりました。演劇ならではの凝った演出に何度もわくわく、ウキウキさせてもらいました。
不良のチックが盗んできた車に乗り、飲酒して無免許運転の旅に出ます。14歳なのに…。2人は人間の善意、自然の驚異に触れ、戦争の恐怖、他者の不注意による怪我、高速道路での他の車による交通事故などを経験します。「世の中の人間の99%は悪人だ」と父に教育され、テレビやニュースからも、そう思い込んできたマイクですが、旅が終わった時に「出会った人々は残りの1%の善人ばかりだった」と語ります。泣けちゃいました。
ゴミの山で出会った浮浪少女イザ(土井ケイト)と山に登り、3人は50年後に再び同じ場所で会う約束をしました。彼女は湖で体を洗い、髪を切って清潔になりました。また、マイクは彼女が親戚の家に行くための交通費を貸したのです。つまり、2人の少年の気まぐれで危険な旅が、1人の少女を救ったわけですね。
交通事故で怪我をして帰宅した2人は罪に問われ、裁判が始まります。語り部はマイクからチックにバトンタッチ。マイクは父の言いつけに背いて「2人で計画した旅行だ」と証言しますが、チックは「自分が無理やりマイクを誘ったのだ」と主張します。2人の友情が見える場面です。
青少年施設の担当者と少年裁判補助員が、2人の保護者がネグレクトをしていたと説明し、チックはそれを評価していました。受け入れるに値する裁きが行われたのだなと思えました。ニックは青少年施設に留まることになります。
学校に戻ったマイクは、母と自宅のプールに沈んで、水面を眺めながら旅を振り返ります。息が出来ない孤独の時間はとても豊かで、私もマイクと一緒に深い思考に沈みこめるような気がしました。人生は豊かで、私の人生は私だけのものなのだと思いました。
マイクのセリフ量は膨大です。篠山輝信さんは観客一人ひとりに直接話しかける演技もしながら、回想の独白と、臨場感のある会話とを切り替え、文字通り八面六臂の大活躍です。全力で挑んでらっしゃる姿に好感を持ちました。チック役の柄本時生さんは自然に舞台に居る姿がかっこよくて、特に、マイクに自分がゲイであることを告白する場面の間(ま)の切実さは、胸に迫るものがありました。
土井ケイトさんは健康的な肢体から野生的なエロスが放射されるようで、浮浪児から魅力的な女性へと変身するイザ役にぴったり。マイクが恋する学校の人気者タチアーナ役やマイクの父の愛人役、チックの怪我を手当てする看護師役などの演じ分けもくっきりしていて良かったです。
マイクの母役のあめくみちこさんは憂鬱でふらふらした“アル中”役以外に、いわゆる良妻賢母的な田舎の女性や、カバのように太った(?)めちゃくちゃ親切なおばさん(言語セラピスト)なども演じます。演技の幅が広く観客へのアピールも優しくて、とっても素敵。マイクの父役の大鷹明良さんが、6歳の幼児役で登場したのが可愛らしいし、可笑しかっです♪ マイクの父の理不尽な暴力男っぷりも、今も戦争中と信じて武装している共産主義者の老兵士役も説得力がありました。
老兵士は「女性を愛することが人生で最も大切だ」と少年2人に説きます。そして「今を生きろ、カーペ・ディエム」と。「カーペ・ディエム」といえば映画「今を生きる」↓ですよね♪
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私が舞台から受け取ったこのお話の印象は、映画の予告編とはかけ離れたものでした。舞台をご覧になる方は、舞台を観るまで予告編はご覧にならない方がいいのではないかと、個人的には思います。
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— 映画.com (@eigacom) 2017年7月11日
柄本時生と篠山輝信がいざなう14歳の“ひと夏の冒険”!舞台『チック』稽古場レポート#柄本時生 #篠山輝信 #土井ケイト #あめくみちこ #大鷹明良#小山ゆうな#チック#世田谷パブリックシアターhttps://t.co/q97VN39sW5 pic.twitter.com/Zp51LAJ84x
— エンタステージ (@enterstage_jp) 2017年7月28日
※舞台写真は主催者よりご提供いただきました。
≪東京、兵庫≫
出演:柄本時生、篠山輝信、土井ケイト、あめくみちこ、大鷹明良
原作:ヴォルフガング・ヘルンドルフ
上演台本:ロベルト・コアル
翻訳・演出:小山ゆうな
【美術】乘峯雅寛 【照明】成瀬一裕 【音響】尾崎弘征 【衣裳】樋口藍
【ヘアメイク】馮啓孝 【演出助手】五戸真理枝 【舞台監督】髙橋良直
技術監督:熊谷明人
プロダクションマネージャー:福田純平
作家契約代理店:シアターライツ
広報:中野剛志 宇都宮萌 浅利瑠璃 杉田千尋
営業:竹村竜
票券:竹澤由美子
制作助手:田辺千絵美
制作:本橋歩
プロデューサー:浅田聡子
[主催]公益財団法人せたがや文化財団
[企画制作]世田谷パブリックシアター
[後援]世田谷区
[協賛]トヨタ自動車株式会社/東邦ホールディングス株式会社/Bloomberg
[協力]東京急行電鉄株式会社
【発売日】2017/05/27
全席指定
一般 6,500円
U24※1・高校生以下 3,250円
友の会会員割引 6,000円
せたがやアーツカード会員割引※4 6,300円
友達割引(高校生以下2枚) 6,000円
友達割引(高校生以下3枚)5 9,000円
親子ペア(一般1枚+高校生以下1枚)※5 8,800円
※未就学のお子様はご入場いただけません
https://setagaya-pt.jp/performances/201708tschick.html
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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