道産子男闘呼倶楽部『漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)』04/05-09 SPACE雑遊

 道産子男闘呼倶楽部は北海道出身の俳優である犬飼淳治さん、津村知与支さん、粟野史浩さんが立ち上げたユニットです。今回は犬飼さんと津村さんが出演し、同じく北海道出身のニシオカ・ト・ニールさんが作・演出、そして出演をされていました。上演時間は約1時間30分弱。

 「CoRich舞台芸術まつり!2017春」の審査員として拝見しました(⇒102本中の10本に選出 ⇒応募内容)。※レビューはCoRich舞台芸術!に書きます。下記にも転載しました。 

≪作品紹介≫ CoRich舞台芸術!より
【「漢達の輓曳競馬」上演にあたって】
2015年12月の旗揚げ第0回公演「ツインベッド~カルカッタの眠れない夜~」に続く道産子男闘呼倶楽部公演第2弾は、札幌出身の女傑ニシオカ・ト・ニール(カミナリフラッシュバックス総長)による新作「漢達の輓曳競馬(おとこたちのばんえいけいば)」です。
今回も前回に引き続き、部長・犬飼、副部長・津村の2人芝居でお届けします。
40過ぎの中年に差し掛かった男優2人と新進気鋭女流作家との性別・世代を超えた道産子同士による化学変化。
道産子男優2人が舞台上で前回以上に熱く熱く火花を散らします。
更に今回は、公演2本目にして早くも故郷北海道、札幌シアターZOOでの公演も敢行。
今更になって、とことん生き急ぐ、攻め倒す道産子男闘呼倶楽部です。
前回に引き続き、作・演出、出演者、チラシデザイン、宣伝写真、そして東京公演劇場・スペース雑遊のオーナーが北海道出身という道産子布陣で臨みます。
今回が正真正銘の第1回公演。
道産子男闘呼倶楽部公演「漢達の輓曳競馬」漢字だらけの直球勝負?です。
≪ここまで≫

 北海道出身者で結成された道産子男闘呼倶楽部の今公演は、作・演出のニシオカ・ト・ニールさんも、会場であるSPACE雑遊のオーナーも北海道出身というこだわりぶりです。開場中の客入れ時間が心なしかアットホームで、好感をもって幕開きを迎えることが出来ました。舞台との心の距離が近くなったせいか、中年独身男性2人のダメっぷりが早い段階から可愛らしく見えて、進んで声を出して笑えることもありました。

 出演者の犬飼淳治さんも津村知与支さんも舞台でよく拝見する俳優で、演技が達者であることは織り込み済みでした。お二人がいつもより魅力的に見えたのは、女性であるニシオカ・ト・ニールさんが男性像を俯瞰して描いてくださったからではないかと思います。熱さも冷静さも、かっこよく見えるところで止めると、ナルシスティックになって鼻に付くものです。弱さ、愚かしさを過剰と言えるほどにさらけ出す演出に、俳優が本気で応えたから、性別を超えて人間の地力が溢れ出たのではないでしょうか。現代口語の会話劇に演劇的な大仕掛けも用意されていて、お芝居ならではの楽しみを味わえました。

 ここからネタバレします。

 北海道の大学を卒業して今は東京で求職中の金平(津村知与支)は、嫌々ながら清掃のアルバイトをしています。ある日、浮浪者と思われるむさくるしい男性が金平の仕事場の近くに居座っていたため、注意をすると、なんと高校時代の同級生の内藤(犬飼淳治)でした。2人で飲みに行き、金平は「自分は大企業に勤めていて、恋人もいる」と嘘をつきます。気のいいホームレスの内藤は金平の話を素直に信じるので、金平は大卒の自分よりオツムが弱そうな内藤を気に入ります。

 金平が一人暮らしをしている部屋に内藤が転がり込み、2人の共同生活が始まりました。内藤は会社の金を横領したという濡れ衣を着せられ、前科(たぶん求刑1年、執行猶予3年)があるため再就職ができません。米粒に筆で絵や文字を書いた「コメッセージ」という商品を路上で販売しています。内藤は金平に1泊200円を支払い、家政婦役を買って出て、パソコンの使い方も覚えて、着々と成長していきます。

 やがて内藤に20歳以上年下の恋人ができました。報告された金平は大きなダメージを受け、立場が完全に逆転します。金平の取り乱しっぷり、そしてそれを隠そうとする慌てっぷりがなんとも情けなくて滑稽です。「ダブルデートをしよう」と誘う内藤の純朴さが、かえって残酷に映ります。そして金平は、ハローワークの窓口の女性に「彼女になってくれ」と迫り、警察沙汰を起こすまでに追い詰められるのです。2人の男性を徹底的に対照させるのが効いています。
 
 とうとう金平は内藤に、何もかもぶっちゃけて告白します。そのあたりから、舞台上に並べられていた漫画や服などの家財道具を、2人の俳優が自分たちで片づけ始めました。しっかり建てられていた棚がキュっとたたまれるのは、ちょっとしたイリュージョンでしたね。何もない空間に立つ2人は、金平と内藤であり、津村さんと犬飼さんでもありました。ありのままの個人として舞台上に立つ人は強いです。そして強さは美しさだとも思います。

 題名の「輓曳(ばんえい)競馬」については、最後の最後に一言のセリフでしか出てきませんでした。そういえば賭け事もしない2人でしたね。馬が引くソリの重さは、40代独身男性のプライド、または人生そのものなのかもしれません。重荷を捨て、解放された彼らの前途は洋々とは言い切れませんが、覚悟が決まった笑顔が清々しかったです。

 部屋にずらりと並ぶ漫画は「マカロニほうれん荘」「銀牙-流れ星銀-」「ドラゴンボール」「三国志」など、40代の私が懐かしいと感じるものが多く、比較的新しい「トリコ」もありました。“男子”らしい感じです。「BEATLESの青版LPなら2万円で売れる」的な話題も懐かしかったですね。

 ニシオカ・ト・ニールさんがハローワークの窓口の女性と、金平の清掃バイト先の乱暴な同僚を演じていらっしゃいました。全然違うタイプの女性を演じ分け、アクセントとしても効果的だったと思います。

≪東京、北海道≫
出演:犬飼淳治(札幌出身)、津村知与支(登別出身)、ニシオカ・ト・ニール(札幌出身)
脚本・演出:ニシオカ・ト・ニール(札幌出身)
照明 野中千恵(RYU CONNECTION)/美術 加藤ちか/音響 青蔭佳代/舞台監督 田渕正博/舞台監督助手 鳥越勇作/宣伝美術 小島達子(札幌出身)/宣伝写真 星野麻美(札幌出身)/受付票券 椿組(外波山文明、瀬山英里子、鳥越勇作、山中淳恵、岡村多加江、木下藤次郎)/制作 道産子男闘呼倶楽部・小島達子・外波山文明
【発売日】2017/03/07
東京 SPACE雑遊 公演
3500円(全公演整理番号付き自由席)
※マークの公演回・割引3000円
学生・養成所生 3000円(全公演共通)

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