ロロ『いつ高シリーズvol.4+vol.1-3一挙上演』03/04-12こまばアゴラ劇場

 ロロは三浦直之さんが作、演出、出演される劇団です。「いつ高シリーズvol.4+vol.1-3一挙上演」を3/7(火)の1日間で拝見しました。戯曲を無料公開するそうです(現在はvol.1とvol.2を公開中)。

 「CoRich舞台芸術まつり!2017春」の審査員として拝見しました(⇒102本中の10本に選出 ⇒応募内容)。※レビューはCoRich舞台芸術!に書きます。下記にも転載しました。※最終選考対象作品は『いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した』です。

 ここから全体的にネタバレしています。

●vol.1『いつだって窓際であたしたち』
 【出演】将門(朝の幼なじみ):亀島一徳 朝(将門の幼なじみ/彼氏は楽):島田桃子 瑠璃色(海荷の友達):森本華 白子(自殺未遂の噂):大場みなみ 茉莉(海荷の友達/ゴシップ好き):多賀麻美(青年団) シューマイ(戯曲では新名):新名基浩

 2年6組の教室。シューマイが自分の机の上にお弁当を置いて外に出て、戻って来たら、女生徒の白子が勝手に自分の席に座っていました。彼女はどうやら他のクラスの生徒で、お弁当をシューマイの机の引き出しに片付けて、机の上に突っ伏して寝ていたのです。下手でカーテン裏側に隠れてうわさ話をしている瑠璃色と茉莉は、白子のことを見て、「自殺未遂した子だ」と言います。瑠璃色と茉莉が白子の行為をなぜ疑問なく受け入れているのかがわからず、冒頭でつまづきました。

 シューマイの席に座った白子は、自分のバッグを机の横に掛け、バッグの中身を机の上に広げていました。他人(シューマイ)の席でこんなことするのって、かなり変わってます。奇異の目で見る人を他に置いても良かったんじゃないかな、と思ったり。

 昼休みなのですが、シューマイ以外は誰も昼食を取りません。不思議でした。もしかしたら食べ終わった後なのかもしれません。それにしては昼休みが長すぎるのではないかと思いました。
 下手の白いカーテンにくるまっているシューマイが、無言で動かないままでいる状態が長く続きました。それを周囲の生徒たちが無視して、何事も起こっていないかのように会話などを続けるのは、無理があると思いました。

 シューマイと白子が旅をするファンタジーが可愛らしかったです。
 前田亜季の南アルプス天然水のCMあり。

●vol.2『校舎、ナイトクルージング』
 【出演】将門:亀島一徳 朝:島田桃子 逆おとめ(音声好きのひきこもり):望月綾乃 楽(朝の彼氏/右足怪我/いつも満身創痍):大石将弘(ままごと/ナイロン100℃) おばけちゃん:北村恵(ワワフラミンゴ)

 『校舎、ナイトクルージング』は中野成樹+フランケンズで上演されたのを観たことがあります。

 夜中の1時に学校に忍び込み、真っ暗な廊下をテクテク、サクサクと歩く朝の後ろを、怖くて怯えている将門がついていく最初の場面。将門が朝の裾を掴んだので、朝は「裾を掴まないで」と言ったところ、将門が「あせんなよ(焦るなよ)」という返事をしました(セリフは正確ではないかもしれません)。朝が焦っているように見えなかったため、将門の「焦るな」という言葉がなぜ発せられたのかわからず、この作品でも、冒頭でつまづいてしまいました。戯曲を確認したところ、そのセリフはありませんでした。こまばアゴラ劇場の客席通路での演技だったので、今回のために付け加えられたのかもしれません。とても些細なことなのですが、私は作品の始まり方がどうしても気になってしまうタイプの観客です。

 映画「GO」の窪塚洋介と柴咲コウの物まねあり。「月光の囁き」が話題に上っていましたね。私は漫画を読みましたが映画は見ていません。

●vol.3『すれちがう、渡り廊下の距離って』
 【出演】太郎(海荷の元カレ):篠崎大悟 楽:大石将弘(ままごと/ナイロン100℃) 白子:大場みなみ 点滅(ラップ好き/彼女の田野辺とケンカ中 ※田野辺は登場しない):大村わたる(柿喰う客)

 右足がまだ完治していない楽に、太郎がぶつかって、楽が転んで「痛い!」と叫びます。そこで太郎はすかさず「ごめん!」と大きな声で言いました。初対面同士なのに、なぜ「すみません」ではなく「ごめん」なのか、不思議でした。その後も2人は当然のようにため口で話します。なぜ同級生だとわかったのかしら。後のシーンで楽が白子と出会った時、学年を確認して、敬語からため口に直すやりとりがあったため、また謎が深まりました。

 vol.2に続いて登場した大石将弘さんの演技が良かったです。

●vol.4『いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した』
★CoRich舞台芸術まつり!2017春・最終選考対象作品
 【出演】瑠璃色:森本華 茉莉:多賀麻美(青年団) 海荷(太郎の元カノ):田中美希恵(範宙遊泳)

 “いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校”を舞台にしたロロの「いつ高シリーズ」は4作目を数え、これまでの3作と合わせて一挙上演されました。4作とも上演60分と上演前のセッティング10分の計70分です。3/7の追加公演の日にvol.1~vol.4を連続で拝見したので、高校演劇の大会を鑑賞するような体験にもなりました。

 作・演出の三浦直之さんがこのシリーズと高校演劇の説明をして、セッティングの指示を出し、開幕します。高校生らしいカジュアルな制服姿の俳優が「長い方のベンチ出しまーす」「新校舎側のパネル出しまーす」などと言って大道具を運んで設置するため、舞台がどのような場所なのかのヒント(ベンチがある、校舎がある等)が得られます。そこは高校演劇とは違うところでしたね。

 30歳ぐらいの男女が17歳前後の高校生を演じるという“無理”が前提になっています。そのまま受け入れられれば良かったのですが、私には俳優がかまととぶっているように見えて、残念ながら素直に物語を楽しめませんでした。また、顔の表情で状況説明をする演技が多く、たとえば「噂が好き」といった役柄の特徴が信じられませんでした。行動のもととなる動機が見えづらいこともありました。

 登場するのは放課後の中庭でコイバナをする女子高生3人だけですが、vol.3までの話も出てくるので、登場人物がもっと大勢いるように感じられました。

 戯曲はvol.1とvol.2が公式サイトで無料公開されています。挿絵が可愛らしいですね。

 ここからネタバレします。

 放課後。太郎と別れて傷心中の海荷と、その友達の茉莉(噂好き)と瑠璃色(絵が好き)が中庭のベンチに腰掛けています。正面に見えるのはvol.3の舞台だった渡り廊下。「偶然通りがかった男子を好きになれば?」という茉莉と瑠璃色のアイデアに、海荷も乗って、渡り廊下を通る男子の品定めを始めます。やがてグンジョー君とジャム君(だったかな?)が好きな人候補に。

 脚注を読む限り、出演者それぞれが好きな漫画、映画、音楽などがそのまま戯曲に反映されているようです。「スマホを持っている高校生が、なぜそんな昔の話を…?」と何度も不可解に思いましたが、“~~第三高等学校”には今と昔が混在しているのだと解釈しました。私事ですが、フィリックスガムは幼い頃によく食べていました(30年以上前・笑)。

高校生に捧げる新シリーズ・いつ高シリーズ
「いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校」
脚本・演出:三浦直之
美術協力:中村友美
舞台監督協力:本郷剛史 岩澤哲野
照明協力:井坂浩(青年団)
音響協力:池田野歩 
衣裳協力:藤谷香子(FAIFAI)
演出助手:中村未希(恥骨)
宣伝イラスト:西村ツチカ
デザイン:佐々木俊+郡司龍彦
広報:浦谷晃代(Diet-chicken)
当日運営:有上麻衣(青年団)
制作:奥山三代都
制作統括:坂本もも
助成:公益財団法人セゾン文化財団 アーツカウンシル東京
提携:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
企画制作・主催:ロロ さんかくのまど
チケット発売日 2017年1月22日
一般:2,800円 学生:2,300円 高校生以下:無料
親子ペア割引:1,000円引き(親御様の一般料金が1000円引きになります) 当日券:各500円増し
4演目セット券 一般:8,000円 学生:6,000円 *枚数限定・要予約
*全席自由・日時指定
*4演目セット券は、vol.1-vol.4までお得な価格でご覧いただけるチケットです。全演目同じお席でご覧いただけますが、各回入れ替えのお時間は、一度ロビーにてお待ちいただきますのでご了承ください。
*高校生以下、親子ペアチケット、4演目セット券は枚数限定、劇団のみお取り扱いです。
*未就学児はご入場いただけません。
*学生・高校生以下のお客様は受付で学生証をご提示ください。
*車椅子でご来場のお客様は事前にご連絡ください。
*開演後はご入場いただけない場合がございますのであらかじめご了承ください。
http://www.komaba-agora.com/play/3521
http://lolowebsite.sub.jp/ITUKOU/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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