東京芸術劇場『コドモ発射プロジェクト「なむはむだはむ」』02/18-03/12東京芸術劇場シアターウエスト

 こどもたちが書いた脚本を、岩井秀人さん、森山未來さん、前野健太さんが演劇作品にして舞台で上演してくださいました。今月のメルマガでお薦めNo.1としてご紹介していた舞台です。私が観た回の上演時間は約1時間20分。すっごく幸せな時間でした!

 ■舞台映像

 ■ドキュメンタリー番組がTV放映されます

 ≪作品紹介≫ 公式サイトより
予測不能な子供の閃きを元に、岩井秀人・森山未來・前野健太をはじめとする大人達が、右往左往しながら演劇作品に仕上げる、それが「コドモ発射プロジェクト」です。
野田秀樹の「子供の書いた台本をよってたかって演劇にすることはできないだろうか?」というアイディアから始まりました。
「ことば好き」の岩井、「からだ好き」の森山、「うた好き」の前野が集まり、 大人が描こうとしても描けない、子供が思い描く「世界」を立ち上げ、 大人も子供も楽しめる上質な舞台を目指します。
タイトルの「なむはむだはむ」は、ワークショップ中に子供達が生み出した、死者を弔うための言葉です。
 ≪作品紹介≫

 子供たちが書いた短編台本を9本上演するオムニバス形式ですが、その場で、全員が、全身で聴いて、全身で応えるライブ感が常にあるため、1本の作品のように感じました。

 子供は常に全力投球で(だから驚くほど急に寝落ちしたりする)、全方向にエネルギーを発していて、(大人にとっては)突拍子もないことをします(何が起こるかわからない)。それを舞台上で、大人がやって見せてくれたように思います。子供が作った脈絡のない物語はそのままに、プロの大人がその面白さをさらに引き出す演技、演出をして、スリリングで超~楽しい舞台作品にしてくださいました。

写真左から:前野健太、森山未來 撮影:引地信彦
写真左から:前野健太、森山未來 撮影:引地信彦

 3人のアーティストは「子供と対等にかかわること」をよくわかっていらっしゃると思いました。当然ですが子供は知識と経験においては大人に敵いませんので、そこは大人がサポートする必要があります。それを怠って大人同士の関係のように、環境の全てを同じ(対等)にするのは間違いなんですよね。子供が安心して大人のサポートを受け入れ、自由にのびのびと全力を発揮できたから、子供にしか生み出せない創作物ができあがったのだろうと思います。創作物に敬意を表し、大人(プロ)が本気を出すことも、常に全力で生きている子供たちと対等に向き合うことだと思います。子供は「大人ってすごい」と見直すことができるし、私は「アーティストは凄い、大人の勇気と優しさが素晴らしい」と思いました。

 音楽は全体的に悲しげな曲調(ブルース)が多かったですね。ちょっと意外でした(子供向けの音楽にはあきれるほど明るくてハッピーなものがよくあるので)かっこよく、情感を込めて歌うので、歌詞とのギャップが出てすごく可笑しかったです(笑)。

写真左から:岩井秀人、森山未來 撮影:引地信彦
写真左から:岩井秀人、森山未來 撮影:引地信彦

 ここからネタバレします。

 岩井さんが開演前の注意事項を観客に話すうちに、ゆる~く開幕。動きと擬音語を使った3人の即興セッションのようでした。

 スケートボード場にあるランプのような形状(ハーフパイプが正しいかも)の舞台美術で、客席は対面式です。私が座った劇場ロビー側の座席から見て中央から下手側にかけては、正方形の白い板が敷き詰められており、板は部分的に着脱可能になっています。上手側は黒い骨組みの状態で、「骨」や「手」をイメージさせます。舞台上の板を上手側に移動させて設置することもあります。出演者は空いた穴から出入りして、神出鬼没です。作品の理念を踏まえ、その実演を成功させた素晴らしいデザインだと思いました。

 最後の1本は抽選で決まり、誰が何を担当するのかもくじ引きで、おそらくパフォーマンスも即興でした。完成度は高くないですが、大人が子供に右往左往させられる姿をさらすという意味で、とても有効なアイデアだと思いました。自分の得意分野で余裕をかますのではなく、苦手なことをその場で必死でやってみせてくださいました。

写真左から:岩井秀人、森山未來 撮影:引地信彦
写真左から:岩井秀人、森山未來 撮影:引地信彦

 以下、出演者の名前は敬称略です。

・ろうじんとハムスター
 「若い老人がいました」で、岩井が「若い老人」を体で表そうとするのが可笑しい。

・むかしむかしおじいさんがいませんでした
 森山の「おじいさんがいなかった」演技(ダンス、表現)が素晴らしかった。弱く、でも、確かに、立って、反るほどに開いた両手を顔に被せて、少しずつその手を下方に移動させていき、体ごとばったりと倒れた。

・ガイコツ
 野球観戦中のガイコツにホームラン・ボールが当たり、体(骨)がバラバラに。なぜか頭は八百屋に、体は海に散ってしまう。ガイコツは骨(体)を探す旅に出る。「ポーキーをのりで貼り付けてあばら骨にする」のだが、後ほどそれはお菓子のポッキーだとわかる。爆発音の「ボーン!」は「bone(骨)」だろうか。

・金にぼし銀にぼし
 おじいさんとおばあさんが、にぼしを食べ過ぎて太る話…?よく聞こえなかった。
 森山、岩井がギターで演奏し、前野が台本を早口で歌う。カラフルな照明で煽ってロックバンドのライブのよう。

・きこえてない
 (お話を忘れてしまった)
 森山の顔に白いロープをぐるぐる巻く岩井。

写真左から:岩井秀人、森山未來 撮影:引地信彦
写真左から:岩井秀人、森山未來、前野健太 撮影:引地信彦

・きょうりゅうのえいがかん
 恐竜が映画館に行ったけど、小さすぎては入れなかった。何千年もかけて人間が大きな映画館を作ったけど、その時には恐竜はもう絶滅していなかった。恐竜の代わりにゴジラが映画館に入って映画を見るけれど、喜ばず、地球はゴジラに破壊されてしまった。
 森山が歌いながら動く。岩井、前野がギター演奏しながらゆるく合唱。「入れなかった~」と真剣に悲しんで憂いを前面に出して歌うのが可笑しい。やがて森山がロープを回して縄跳びをはじめて、岩井が入ろうとするが、早すぎて「入れない」。

・長い毛
 男の臭い頭から1本の長い毛が抜けて、旅に出る。台所でスープの中に入ってしまい外に出られなず、食べられてしまう。
 舞台中央の天井から垂れ下がる白いロープは毛に見える。

・長い毛2
 人間の体から便とともに外に出た毛は海へと旅に出る。波に浮かぶ流木を見つけて船にした。「きとけ(木と毛)」のラブソング。上手で前野が船の歌を歌い、木と毛(岩井と森山)が抱き合う。
 美術の上下に設置された複数の滑車にロープを通し、ステージをロープで巻いた状態にする。船にも見えるし、波が立つ海にも見える。

 ・題名不明
 台本の束から前野さんが目をつぶって1つ選ぶ。歌、言葉、動きの担当を決めるためにくじ引きをする。歌:森山、言葉:岩井、動き:前野、となる。
 カメラで写真を撮ると、対象物が石になってしまう。家の中に動物がいっぱい出てくる。(お話は忘れてしまった)

 ■城崎での成果発表

 ■他の日のセットリスト

原案:こどもたち
つくってでる人:岩井秀人 森山未來 前野健太
そもそもこんな企画どうだろうと思った人:野田秀樹
舞台監督:谷澤拓巳
舞台美術・衣裳:山本貴愛
照明:松本大介
音楽:種石幸也
音響:中村嘉宏
演出助手:池田亮 (ゆうめい)
宣伝写真ヘアメイク:花岡真千子 (Magico)
宣伝美術:土谷朋子 (citron works)
宣伝写真:平岩享
宣伝映像:久世英之
フードデザイナー:佐藤亜里紗 (boxes Inc.)
制作進行:三好佐智子、坂田厚子 (以上quinada)
企画制作:東京芸術劇場/有限会社 quinada
主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
 東京都/アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
助成:平成28年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業
後援:豊島区
協力:ハイバイ 至福団 松本デザイン室 城崎国際アートセンター(豊岡市)
チケット一般発売日2016年12月17日[土]
指定・自由[整理番号付]
前半割(2月18日 – 2月26日) 4,000円 (当日 +500円)
一般(2月28日 – 3月12日) 4,500円 (当日 +500円)
子供 (高校生以下) 1,000円 (当日同額)
25歳以下 3,500円 (前売のみ)
65歳以上 3,800円 (前売のみ)
▶ 自由席は数量限定、前方のお席です。
出入りしやすい親子席もあります。
▶ 指定席は予め席を決めておきたい方におすすめです。
▶ 25歳以下と65歳以上割引チケットは劇場ボックスオフィスのみ取扱(枚数限定、入場時要証明書)
▶ 障害のある方は割引料金にてご鑑賞いただけます。
詳しくは劇場ボックスオフィスまでお問合せください。(要事前予約)
▶ やむを得ない事情により、出演者・演目等が変更となる場合があります。
http://hi-bye.net/namuhamudahamu/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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