無言劇1時間50分。何度かうとうとしてしまったのですが、終盤は大丈夫でした。観られて幸運でした。
※レビューは2019/02/27に公開しました。
≪作品紹介≫ 公式サイト(http:// http://kyoto-ex.jp/2016-autumn/program/sankar-venkateswaran/)より
現代インドから太田省吾へ、沈黙劇の可能性を問いかける
2007年に亡くなった演出家、劇作家の太田省吾による「沈黙劇」は、没後10年を前に注目が高まりつつある。一切のセリフを廃し、極端に遅い動作を役者に課す沈黙劇は、社会的属性を剥ぎ取られた原初の人間を浮かび上がらせ、見る者に永遠につづく時間、超越的な宇宙に触れる契機を与える。世代の離れた日本の若手から海外の演出家まで、沈黙劇の新たな舞台化の試みが続いている。
シャンカル・ヴェンカテーシュワランは、「ケーララ州国際演劇祭」の芸術監督にして、インド最注目の演出家。彼が2011年に取り組んだ作品が、太田の代表作『水の駅』だった。
舞台上にぽつりと設けられた水飲み場。蛇口から細く流れ続けるひと筋の水。この「水の駅」をさまざまな人が訪れ、去っていく…。ごくシンプルなこの設定に、多民族、多言語国家のインド全土から集められた役者が対峙する本作は、これまで日本でつくられてきた沈黙劇とはまったく違った意味を帯びるだろう。太田省吾への21世紀インドからの新たなレスポンスとして、沈黙劇の可能性を問いかける。
≪ここまで≫
ここからネタバレします。私が想像したことなので、正確性は保証できません。
俳優はスローモーション…とは違う、非常にゆっくりとした、静止を含んだ動きをします。無言です。
人々は基本的に下手通路から上手通路へと移動。下手が上で上手が下へと向かう坂になっていて、中央にある四角いステージの真ん中に井戸があり、さびついた古い水道の蛇口がひとつ。蛇口から出た水が、細長いしずくの線となって丸い井戸に落ち続けます。落ちっぱなしの水の音が響き続けるので、あからさまにスローな動きをする俳優と対照的です。人間は時間を引き延ばすけれど、水は自然の時間を保っており、容赦なく、決して止まることなく過ぎ去る時間を現前化し続けます。
赤い靴を放り投げる老婆が、自分から大きな丸いかごに入ってうずくまったのは、死んじゃったのかな。赤い靴は『小町風伝』(太田省吾さんの戯曲)にも出てきていたような。
大勢の老若男女が下手から行進するように登場し、上手奥の粗大ごみのあたりに大集合。全員で下手客席側を見て、何やら驚いている様子。難民が新天地を見つけたのか、ノアの箱舟に乗っていた生き物たちが土地を見つけたのか。
体格のいい男性と豊満な女性が井戸の中に入って抱き合うのが官能的。でもどこか、互いに奪い合っているような空気も。
終盤、二キの彫刻のように丸みを帯びた大きな物体を背負った老年の男性が、ラジカセから流れるノリのいい音楽に合わせて歯磨きをするのがおかしかったな~。彼が上手に去っていくとき、下手からはオープニングで登場していた若い女性がやってきて、互いに見つめあってアイコンタクトをしていました。老人から若者へのバトンタッチ、輪廻転生、繰り返しのイメージ。最後は中央の水道と水だけに光が当たって終幕。流れ続ける水が主役でした。
出演:シアター ルーツ&ウィングス
作:太田省吾、演出:シャンカル・ヴェンカテーシュワラン
【発売日】2016/08/08
全席自由
[前売り]
一般 3,000円
ユース(25歳以下)・学生 2,500円
シニア(65歳以上) 2,500円
高校生以下 1,000円
ペア(前売りのみ) 5,500円
[当日]
前売り+500円(高校生以下は同額)
http://k-pac.org/?p=1199
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/76
http:// http://kyoto-ex.jp/2016-autumn/program/sankar-venkateswaran/
https://stage.corich.jp/stage/76822
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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