DULL-COLORED POP『アンチ・フィクション』07/16-07/26シアター風姿花伝

 谷賢一さん作・演出・主演の一人芝居です。私は初日のライブ配信を自宅で拝見。上演時間は約70分弱。10分の休憩後に谷さんのトークがあり、全体で約1時間40分でした。家のテレビで母と観たので、時間的にはほどよい感じでした。7月末までアーカイブ映像が見られます。

≪あらすじ≫
 もともと一人芝居をやるつもりではあったけど、このコロナ禍で、何を書いていいのかわからない。悩んで悩んで、七転八倒する。
≪ここまで≫

 70代の母と同居しているせいもあるとは思いますが、私はおそらく“過剰”にウイルスにおびえているタイプで、昔のように容易に「フィクションに浸ることができない」状態である自覚があります。だから劇作家が「今、何を書けばいいのか」と悩むことにも、必死で挑んでみて「やっぱり書けない」と壁にぶち当たることにも、立場は全く違いますが、共感しました。作家が書けなくて悩むという物語は山ほどありますが、この作品はそこで終わらず、本当(事実)と嘘(虚構)が共存する演劇の妙味を味わわせてくれます。カーテンコールの前の暗転の時に、「あぁ、これだ、これだよ…(じわ~ん)」と満足できました。

 ここからネタバレします。セリフなどは正確ではありません。

 谷さんが観客も使う劇場中央の通路を駆け下り、舞台へ。“台本通りの前説”から始まり、音響、照明のオペレーションも谷さんが担当。上演中に上手側のデスクの上でスイッチを操作されていました。

 コロナ禍で台本が書けないと苦しむ姿を、文字通り“赤裸々”に見せます。本人による過去の自分の実況中継のよう(笑)。谷さんは同居家族にかなりの…それはもう、とても私には書けないほどの、ひどい迷惑をかけながら、執筆仕事に向き合っていらっしゃいます(笑えない…)。「これが作家だ!」と○○○を履いて、すがすがしく叫ぶ姿はまばゆい。

 谷さんが月9万円で維持しているシェアハウス(?)のエピソードはどこまで事実かわかりませんが、脱法ドラッグ(?)で見えていなかったものに気付いたり、説教くさいユニコーンに追いかけられたりする、奇想天外な展開に引き込まれました。ぶっ飛んだ物語(虚構)は私に驚きと疑問(「なぜ?」と問う気持ち)をくれます。

 ある出来事と、その後で起きた出来事を「だから」でつなげられれば、人間は「原因があっての結果なのだ」と受け入れられますが、「だから」でつなげられない場合は混乱する…と谷さんは言います。コロナ禍でそういう、到底受け入れられない理不尽が多発しているんですよね。事実がすっかり虚構を凌駕する世の中でも、作家は物語を書き続けられるのか。

 谷さんはユニコーンから逃げるうちに穴に落ちますが、折れそうな木につかまり命拾い。でも足は蛇に絡まれ、底では竜が大きな口を開けています。絶体絶命のピンチ! そこに、ポタポタと天から水が落ちてきた。その水を口に入れると、とても甘い…。谷さんは必死でぶら下がりながら、その露を求めて上を向きます。「それが人生だ」というユニコーンの声が聞こえ、谷さんはデスクに向かい、再び執筆へ。終演後のトークで谷さんは、「自分への戒めだ」とおっしゃっていたように記憶しています。

 今思うと、シェイクスピア戯曲や中原中也の詩の引用(ユニコーンが話す)も、人間が発する言葉を味わうという演劇の基本的な楽しみでしたね。谷さんがミュージカル俳優のように踊ったり、「Fly me to the moon」を歌ったり、飽きさせない工夫も多々ありました。舞台奥を覆う布には妻からのLINEのメッセージが映写されます。シェアハウスとそこに暮らす人々の動画、そしてしゃべるユニコーンと、徐々に写真から動画へと変わっていき、作中の映像の比率を上げていく構成もよかったと思います。

 谷さんの岸田國士戯曲賞、鶴屋南北戯曲賞受賞作『福島三部作』はこちら。

 『演劇』を含む戯曲集も発売されたばかりです。

↓2020/07/26加筆

作・演出・出演:谷賢一
映像出演:大原研二
舞台監督:竹井祐樹
照明:松本大介
音響:佐藤こうじ
映像:松澤延拓
制作:德永のぞみ
【発売日】2020/06/13
一般 3000円/当日 3500円
高校生以下 1000円(前売・当日ともに/枚数限定)
【 ライブ配信日時 】
7月16日(木)19:30、7月26日(日)13:00
1.7月16日(木)19:30:ライブ配信&アーカイブ視聴チケット(初日)
https://v2.kan-geki.com/live-streaming/ticket/1
2.7月26日(日)13:00:ライブ配信&アーカイブ視聴チケット(千秋楽)
https://v2.kan-geki.com/live-streaming/ticket/2
各3,000円
http://www.dcpop.org/vol22/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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