秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場『もう一人のヒト』09/10-09/22紀伊國屋ホール

 飯沢匡戯曲目当てで伺いました。ロビーで上演台本(1500円)を購入。

≪あらすじ≫ https://www.seinengekijo.co.jp/s/hito/hito.html
息子が戻ってくるなら
何様だろうが何だろうがなってやる。

あの傑作喜劇が再び今!

舞台は太平洋戦争末期の頃。
日本の敗色が濃かったが、国民は勝利を信じて疑わなかった。

そんな中、敗戦を見通しながらも対応に追われ動揺する皇族一家。
その一方、一人息子が召集され、悶々の日々を送る下町の靴職人。

この靴職人が屑屋に売り払った「あるもの」が一人の将軍の目にとまって…。
戦況はますます悪化し、米軍の空襲は日毎にその激しさを増してくる。
≪ここまで≫

 現行政権の弱点を武器にクーデターを計る筋立てです。手塚治虫作『アドルフに告ぐ』を思い出しました。

 ここからネタバレします。セリフは上演台本より。

 メインの登場人物である皇族は終戦の約1年前から、戦況が非常に悪化しており、日本がこのまま負けることを知っていました。沖縄戦が始まる前に、原爆が落ちる前に、なぜ負けを認めてくれなかったのか…。はらわたが煮えくり返る思いが、何度もよみがえります。

 軍人や皇族は「天皇陛下」「陛下」という言葉を発する度に必ず、背筋をピンと伸ばす姿勢になっていました。こんなに愚かしいこと強いられていた、もしくは自主規制で広まっていたことは、知っておくべきだと思います。肩から「大日本婦人会」のたすきを掛けた一般の女性たちが、素行のよろしくない隣人を責め立てる様子も忘れてはならないことですよね。赤紙が届いた人や家族を「おめでとうございます」と祝うルールも忌むべきものです。

 南朝の正統な天皇を拝し、クーデターを起こして日本を立て直したいと願う軍人は、とうとう日本刀を抜いて皇族とその息子を殺してしまいます。彼はその後、自害しました。なんと凄惨で、ばかばかしい死に方でしょうか。実際は戦後も生き延びた皇族を、作者(飯沢匡)は芝居のなかで殺しました。

 終戦後のバラックで学校教員が、図書館で借りてきた外国語の本を読みながら言います。「どうして、こんないい本があったのに馬鹿にして読まなかったのかと思いますよ、自分で自分の目をふさいでいたんだからな」と。彼をはじめとする市井の人々のセリフにも、戦争の姿がありありと現れていると思います。

第122回公演<飯沢匡没後25年記念>
出演:葛西和雄、藤木久美子、中谷源、広戸聡、吉村直、板倉哲、杉本光弘、島本真治、松永亜規子、中山万紀、清原達之、大山秋、岡山豊明、矢野貴大、星野勇二、山田秀人、安田遼平、片平貴緑、傍島ひとみ、沼田朋樹、池田咲子、松田光寿、津曲海七斗、秋谷翔音、渡辺尚彦、小竹伊津子
※一部ダブルキャストとなります。A:傍島ひとみ B:池田咲子
作=飯沢匡 演出=藤井ごう
美術=乘峯雅寛  照明=竹林功  音響効果=近藤達史
衣裳=宮岡増枝  舞台監督=青木幹友
宣伝美術=伊波二郎(絵) 小田善久(デザイン) 製作=福島明夫
7月16日(火)発売
一般=[前売り] 5,150円 [当日] 5,500円
U30(30才以下)=[前売り] 3,100円 [当日] 3,400円
中高生シート=1,000円(各ステージ限定10席・劇団のみ受付・前売りのみ)
※料金はすべて消費税8%込です。
◎全席指定席  ◎団体割引・障害者割引あり(劇団のみ受付)
◎車椅子でご来場の方は準備の都合上、必ず劇団までご連絡ください。
https://www.kinokuniya.co.jp/c/label/20190701100010.html
https://www.seinengekijo.co.jp/s/hito/hito.html
https://stage.corich.jp/stage/101610

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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