伊藤毅さんが脚本・演出を手掛ける青年団リンク・やしゃごの再演作を拝見しました。上演時間は約2時間。
具象美術のワンシチュエーションで繰り広げられる現代口語の会話劇で、障害を持つ人がいる家族とその周囲の人々を描く群像劇でした。
≪あらすじ≫ http://www.seinendan.org/link/2019/07/6960
兄弟２人暮らし。両親は既に亡くなっている。
知的障害者の兄と、
兄の世話を理由に法律家への夢を断念した弟。
２人は、同じ工場でアルバイトをして生計を立てている。
兄の誕生日。友人たちが集まるパーティーの場。
そこで兄を施設に入れる事が知らされる。
「彼は、かわいそうな人ですか」
≪ここまで≫
会話の端々から、少しずつ物語の背景となる情報を提示していくのが巧みな脚本でした。ぼやかして曖昧にしたり、触れることなく逃げたりせずに、人々の本気のぶつかり合いを描いたのが素晴らしかったです。音楽、音響が最小限だったことにも好感を持ちました。
無言の間（ま）が長い場面が少なくないのが気になりました。俳優が障害者を演じる演劇の嘘（お約束）を、どう受け取っていいのか、私は最後まで迷ったままでした。
やしゃご『アリはフリスクを食べない』①とてもとても良かった。途中で何度も呼吸を忘れそうになった。「障害者は可哀想な人ではない」「誰が間違っているとか合っているではない」をきちんと描いて、さらにその先にあるそれぞれの人間の黒いもの、にまで筆を伸ばしている。
— 徳永京子 (@k_tokunaga) September 9, 2019
やしゃご『アリはフリスクを食べない』②そしてその黒いものにも事情はあって、毒や悪ではくくりきれない。初演よりだいぶ書き直したという戯曲そのものにも力があるけど、俳優がみんな良くて、伊藤毅、演出力もかなりのものでは。
— 徳永京子 (@k_tokunaga) September 9, 2019
やしゃご『アリはフリスクを食べない』③今日の夜と明日の13時の回しかないけど、どうにか観てほしい。こんな言い方は超お節介ですが、新劇の劇団の制作で、ドラマが書ける若手を探していらっしゃる方、万難を排して行く価値ありです。こまばアゴラ劇場。
— 徳永京子 (@k_tokunaga) September 9, 2019
↓初演の公演情報
ここからネタバレします。間違いがあったらすみません。正確性は保証できません。
母が亡くなり（父は既にいない）、働きながらロースクールに通っていた歩は、グループホームに入っていた知的障害者の兄・智幸を引き取ることにした。彼は夢を諦め、兄とともに自動車の部品を加工する工場で働いている。智幸はてんかんの発作防止の薬や、睡眠薬を常用している。可愛らしい加奈子ちゃんが新しく入社し、週三回の勤務は楽しいようだ。大好きなのはドラえもん。
歩には結婚を前提に付き合っている恋人がいるが、彼女の両親は障害者である智幸との同居に反対だ。妊娠も判明し、二人は智幸を再びグループホームに入れることを決める。
智幸の36歳の誕生日パーティーで、会社の社長や同僚家族らが集まるなか、智幸のグループホーム行きが明かされた。幸福な祝祭ムードは張りつめ、歯に衣着せぬ論争の地獄へと一変する。歩とその恋人を責める者もあれば、擁護する者もある。
工場の経営者は「智幸は家族同然だ」と言うが、「これから智幸とずっと一緒に暮らすのは実の家族なのだ」と、歩の恋人が反論。すると「あなた（恋人）は後から来たでしょう（あつかましい）」とたばこ屋の娘が言い放つ。彼女は智幸と歩の幼馴染で、聴覚障害者の妹がいる。
歩とその恋人が「帰ってくれ」と言い、皆が退散する段になって、加奈子ちゃんが「智幸とセックスをする」と言い出した。両思いの二人はすでに性行為を行ったようだ。そそのかしたのは同僚の中年男性らしく（彼には右手がない）、加奈子ちゃんの母は社長に不信感を募らせる。事態はより複雑に修羅場化し、障害にまつわる諸問題があぶり出された。
同じアパートに住む他人が闖入者となって物語を展開させる仕掛けで、その他人を巻き込むのは同じ人物（会社の同僚）。
たばこ屋の娘が智幸に「結婚しようか？」と尋ねるが、智幸は「嫌だ！」と激しく拒否した。彼女なら智幸を守り続けられるかもしれないのだが、人間関係はままならない。
【出演】
城田歩（知的障害を持つ兄を引き取り、ロースクールに通う夢をあきらめた）：海老根理
城田智幸（歩の兄）：辻響平（かわいいコンビニ店員飯田さん）
歩の婚約者：幡美優
歩と智幸の幼馴染（たばこ屋の娘、妹が聴覚障害者）：舘そらみ
金属加工工場の社長：工藤さや
工場の経理（社長の恋人）：田山幹雄（モリキリン）
工場の同僚：黒澤多生
303号室の住人・三上：尾﨑宇内
智幸のグループホームの職員（吃音）：岡野康弘（Mrs.fictions）
加奈子：井上みなみ
加奈子の母親：木崎友紀子
303号室の住人・三上（終盤に登場）：緑川史絵
脚本・演出：伊藤毅
舞台監督：黒澤多生
舞台美術：谷佳那香
音響：泉田雄太
照明：伊藤泰行
制作：笠島清剛
スチール撮影：bozzo
宣伝美術：じゅんむ
芸術総監督：平田オリザ
技術協力：鈴木健介（アゴラ企画）
制作協力：木元太郎 （アゴラ企画）
企画制作：青年団リンク やしゃご／(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
主催：(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
協力：イマジネイション、かわいいコンビニ店員飯田さんMrs.fictions、モリキリン、舞台美術研究工房六尺堂、(有)レトル
助成：文化庁文化芸術振興費補助金（劇場・音楽堂等機能強化推進事業）｜独立行政法人日本芸術文化振興会
【発売日】2019/07/13
一般：予約当日共に 3,500円
★前半割：予約当日共に 3,000円
※日時指定・全席自由・整理番号付
※受付開始は開演40分前、開場は開演30分前から
※未就学児童はご入場いただけません
http://www.seinendan.org/link/2019/07/6960
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