チェルフィッチュ『三月の5日間 リクリエーション』12/01-20神奈川芸術劇場・大スタジオ

 岡田利規さんがご自身の2004年岸田國士戯曲賞受賞作を、若い俳優とリクリエーションされました。上演時間は約1時間半弱。素晴らしかったです。

 横浜公演の後、豊橋、京都、香川、名古屋、長野、山口とツアーがあります。2018年秋にはパリ公演も!どうぞお見逃しなく!

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三月の5日間[リクリエイテッド版]
岡田 利規
白水社
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 ≪作品紹介≫ 公式サイトより
活動20周年を節目に、代表作『三月の5日間』のリクリエーションに挑みます。初演から10年以上が経ち、若者像も、都市も、情報の速度も、戦争との距離も変わったいま、もはや“時代劇”とも呼べる本作が、全国オーディションによって選ばれた20代前半の俳優7人によって新たに生まれ変わります。

今はむかし、二〇〇三年三月の、イラク戦争が開戦した頃の東京を舞台にした芝居です。
このひとむかし前の戯曲を新しい仕方で、若い(かつ力強い)七人の役者によって上演します。
テキストも案外と大幅に書き換えて。
二〇一七年十二月の日本で『三月の5日間』が上演されることは何を引き起こすでしょう?
-岡田利規
 ≪ここまで≫ 

 すごく刺激的で、感動的で、幸せな時間でした~。2004年の初演、2006年の再演など、何度も拝見してきましたが、自分が年を取って時代も変わっていますから、毎度発見があり学びもあります。傑作戯曲であるとあらためて感じ入りました。
 レビュー⇒(私は今回で8回目のようです)

 いつもながらの岡田さんのハイセンスな演出にすげ~~~ってうなりながら、ちくちくとムカついたりも(笑)。あまりにさりげない、なのに注目せざるを得ない!そんなポイントが多い!!
 藤谷香子さん(FAIFAI)の衣装がまたキレッキレ!センス良すぎて参っちゃいますね、いつも!!
 舞台中央からぶら下がる四角い物体に英語字幕が映写されます。セリフが多いから量も多くて速い(笑)。字幕を出すことが前提になってる舞台美術ですね。照明、文字も込みで全体を楽しめました。

 今回の出演者の方々は透明度が高いことも私好みでした。ツイートにも書きましたが、若い俳優ほど私好みの柔軟で、繊細な演技を見せてくれることが多いんです。岡田さんの文章を読んで、その理由の1つがわかった気がしました。
 以下、当日配布パンフレットの岡田さんの文章より部分引用します。

 岡田:当たり前のことですが演劇を可能にする最大の条件は役者です。この上演の出演者はみな二十代です。僕は今回強く実感したのですがこの世代は見られることへのスキルが僕ら年長世代とは比較にならないほどすぐれています。さすがです。それは演劇の上演を感覚的な経験にしてくれるための超強力なスキルですから彼ら世代は演劇上演のクオリティをアップグレードしてくれるでしょう。頼りにしています!

 ものすごく納得しました…。私の娘も今回の出演者と同世代でして、外見へのこだわりが凄いんです(私が気にしなさすぎなのかもしれませんが)。自分が他者からどう見えるのか、どういう印象を持たれるのかを客観的に分析し、それをもとに結果を出してくるんですよね。その成果の精度が高い。手のひらのスマホでSNSから世界に直結して、常に自分を晒しているわけですから(友人、家族内だとしても)、感覚も鋭くなるし技術も磨かれるわけですよね。そして「自分自身をどう見せたいか」を研究しているから、「自分はこういう人間だ」という執着が薄い。これは俳優にとても向いている性質だと私は思います。

 ここからネタバレします。セリフなどは正確ではありません。

 2003年の3月、アメリカがイラクに宣戦布告をして戦争が始まりました。そんな時、渋谷のラブホで5日間の非日常を過ごしたミノベくんとユッキー、映画館で偶然会ったアズマくんとミッフィーちゃん、戦争反対デモに参加するヤスイくんとその友人(役名失念)らが登場します。

 最初に出てきたミノベくんが女性だったので、いきなり男女の性差を超えました。ラブホに行くのは男女じゃなく女女、男男でもいいですものね。ふわふわ、ゆらゆらと揺れながら、でも目的を持ってしっかり舞台に居る若者たちは、彼ら彼女ら自身でありながら、何かが入り込む余地のある“枠”のようでもあり、私がとても好きな状態をキープしていました。共演者に対しても、客席に対しても、心身が解放された状態と言いましょうか。風通しが良く、体が透き通っているように見える(感じる)のです。私はいつもそんな俳優を観たいと思っています。

 「私終わった、火星に行きたい」と言うミッフィーちゃんが登場する前から、既に宇宙や時間を超えた世界のイメージが立ち上がっていました。これも俳優と演出の仕業だと思います。感情や言葉の意味から体が解放されているように見えますが、時には直結することもある。その操作というのか、存在の仕方が自在だと思いました。芯(感情、心、イメージ、意味など)を太くしてあるから、表面(体や動き)が自由なのではないでしょうか。

 ヒット曲(SMAP「世界に一つだけの花」)や“アンミラ”という固有名詞が耳に入り、あぁこれは古典なんだな、目の前にいる俳優たちは知らない時代の話なんだなと確かめました。それでいてまぎれもない現在である。演劇で古典を上演する時の醍醐味だと思います。

 コンドームを2ダース使うほどセックスしまくった男女のエピソードで、その2人には裸もキスもないのですが、他の女性がへそ出しルックをしてくれていて、これがまあ、エロイのなんのって! これ見よがしとさりげなさのバランスが憎い!
 床には白い直線が数本描かれていてシャープな印象です。そのうちの1本を俳優がおもむろに、ペリペリっと剥がした!なんだ貼ってるだけなんだ!…こういう演劇の嘘をバラすような仕草を盛り込むセンスも凄い。

 ミノベ君は「横に寝てる女、誰だよ!と思って、誰かわからなかったレイ・コンマ何秒かは、手を出さなかった俺、えらい。俺は人間だ」等と言います。対してユッキーには「地面にあった物体を犬かと思ったら人間だった。自分が人間を人間だと思っていなかった瞬間があったことに耐えられず、吐いた」と言わせるんですね。2人を対照させていることが、とてもはっきりと伝わりました。人間に向けて爆弾を落とす兵士も、ディズニーストアの客に血だらけの子供の写真を見せつける“意識高い系”デモ参加者も、「相手を人間だと思っていない」のだなと思いました。

≪神奈川・豊橋・京都・香川・名古屋・長野・山口≫
出演:
朝倉千恵子(ミッフィーちゃん)
石倉来輝(男性、映画館でミッフィーちゃんと出会ったアズマくん、ヤスイくん)
板橋優里(最初のミノベ君、アメリカ大使館の近所に住む、デモに文句を言う人)
渋谷采郁(最初のユッキー)
中間アヤカ(へそ出しルック)
米川幸リオン(男性、デモで花粉症発症)
渡邊まな実(最後のユッキー 赤いコート、筒状灰色マフラー、毛皮の肩掛けバッグ)
脚本・演出:岡田利規
舞台美術:トラフ建築設計事務所
技術監督:鈴木康郎
照明:大平智己(ASG)
音響:牛川紀政
衣裳:藤谷香子(FAIFAI)
英語翻訳:アヤ・オガワ
宣伝写真:小林健太
宣伝美術:牧寿次郎
主催:KAAT神奈川芸術劇場
企画制作:株式会社precog
(全席自由席・整理番号付・税込) 
前売一般 3,500円
当日一般 4,000円
U24(24歳以下)1,750円
高校生以下 1,000円
※U24、高校生以下チケットは前売りのみ/チケットかながわのみでの取扱/枚数限定、要証明書
※車椅子でご来場の場合は、事前に以下のチケットかながわにお電話ください。
※未就学児童のご入場はご遠慮いただいております。託児サービスのある回をご利用ください。
https://chelfitsch20th.net/
http://stage.corich.jp/stage/87417

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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