今月のメルマガでご紹介しておりましたワタナベエンターテインメントの『関数ドミノ』、初日を拝見。上演時間は約2時間弱、休憩なし。
面白かった~~~!!寺十吾さんの演出で、イキウメでの上演(2009年、2014年)とは違う側面に光が当てられたようで、登場人物の欲望が交錯するとてもスリリングな人間ドラマになっていました。あ~…なんか元気出た!
寺十悟さん演出、瀬戸康史君主演の「関数ドミノ」。最新版の戯曲は2014年版なんだけど、今回のは09年版。ということでしたが、09年版のストーリーを守りつつ、14年版のいいところも移植してとセコセコやってたら、なんかいい感じの最新2017年版ができちゃったよ。
— 前川知大 (@TomoMaekawa) 2017年8月18日
「関数ドミノ」14年版は絶望深め(安井順平ver)、17年版はやや希望残る(瀬戸康史ver)って感じですかね。あ、話自体は重いものじゃないです。
— 前川知大 (@TomoMaekawa) 2017年8月18日
「関数ドミノ」稽古はじまりました。
最初の本読み、いい感触だった。俳優皆ハマってたし、書き直したところもうまくいってる。14年のイキウメ版とはまた別のドミノとして完成しそう。— 前川知大 (@TomoMaekawa) 2017年9月1日
一週間ぶりに「関数ドミノ」の稽古場に。俳優やらない私としては、長塚くんに続き演出家の仕事を見れる貴重な機会。寺十吾さんのノート(いわゆる駄目出し)に耳を澄ます。微かな違和感を確実にキャッチしてて、流石です。俳優たちもそれに応えて。作だけの現場での収穫ってのがあるなー。
— 前川知大 (@TomoMaekawa) 2017年9月7日
≪あらすじ≫ 公式サイトより。
とある都市で、奇妙な交通事故が起きる。
信号のない横断歩道を渡る歩行者・田宮尚偉(池岡亮介)のもとに、速度も落とさず車がカーブしてきた。
しかし車は田宮の数センチ手前で、あたかも透明な壁に衝突したかのように大破する。
田宮は無傷、運転手の新田直樹(鈴木裕樹)は軽傷で済むが、助手席に座っていた女性は重傷を負ってしまう。
目撃者は真壁薫(瀬戸康史)と友人の秋山景杜(小島藤子)、左門森魚(柄本時生)の3人。
事後処理を担当する保険調査員・横道赤彦(勝村政信)はこの不可解な事故に手を焼き、関係者を集めて検証を始める。
すると真壁が、ある仮説を立てるのだった。
その調査はやがて、HIV患者・土呂弘光(山田悠介)、作家を目指す学生・平岡泉(八幡みゆき)、真壁の主治医・大野琴葉(千葉雅子)をも巻き込んでいく。
はじめは荒唐無稽なものと思われた仮説だったが、それを裏付けるような不思議な出来事が彼らの周りで起こり始める――。
≪ここまで≫
私はだいたいのあらすじを知っていたはずなんですが(超忘れっぽいので詳細は全く覚えておらず…)、登場人物の細やかな変化と熱い衝突ぶりに引き込まれ、没頭することができました。役人物としてその場に存在し、行動の動機もしっかり踏まえた交流があったと思います。演技の振れ幅が広く、切り替えもくっきり。意外な声や動きでアクセントをつけ、俳優それぞれの個性や特技も活用しています。
パンフレットの寺十さんの文章に、俳優一人ひとりについてのコメントがあったんです。俳優自身は気づいていないかもしれない才能、個性を短い言葉で的確に言い表されているように思いました。そのように俳優の持ち物(=ギフト)を見極めた演出だったのではないでしょうか。配役もとても良いと思いました。
真壁役の瀬戸康史さんが素晴らしかった!『陥没』ですっかり魅せられ、私の2017年上半期ベスト俳優(男性)だったんですが、今回はそれを超えたかも。ずるくてみっともなくて、ご自身は美形なのに“醜い”! 弱さをこびずにさらしてくださいました。役人物のクセを作ったのもいいですね。
山田悠介さんからも目が離せなかったです。柄本時生さんと白熱のやりとりも面白かった~♪個人的に、青木豪さん演出のDステ公演で好感を持っていたんです。今年6月のワンツーワークス『アジアン・エイリアン』でも説得力のある演技を見せてくださっていました。
新田役の鈴木裕樹さんにも驚かされました。鈴木さんは何か良からぬ考えにとりつかれているような、悪夢の中をさまよっているような不穏な空気を全身で表してくださっていました。何をしでかすかわからない怖さも良かったです。
保険調査員役の勝村政信さんは遊びが凄い(笑)。医師を演じる千葉雅子さんは東京新聞の望月衣塑子記者に見えることがありました。
ここからネタバレします。観る前に読まない方がいいですよ!
強がっていた真壁(瀬戸康史)が、自分を信じてついてきてくれている秋山(小島藤子)を呼び止めようとする演技は、ほんの二言ぐらいのセリフに真壁の心の底にあった思い(もしかしたら彼の本心)が溢れ出ていました。母を求める子供のように、誰かに甘え、すがる弱さが漏れ出ているようにも見え、笑い泣きしてしまいました。こういう演技が好き!
土呂(山田悠介)はHIV患者です。それを治したいがために、望みが何でも叶う能力を持つ“ドミノ”である(とされる)左門(柄本時生)に近づき、友達になろうとします。必死の猪突猛進を本気で見せてくれるから笑えるんですよね。笑わせようとしないのも私好みです。
新田(鈴木裕樹)の妻は事故で大けがを負い、意識不明のまま入院中です。その上、事故の保険金も下りるかどうかわからないという窮地にいます。追い詰められた人間の狂気的なふるまいは、実はドミノ(=真壁)に操られているためだった…とわかった時はハっとさせられました。
冒頭は、ぐしゃぐしゃになった車が舞台奥にあらわれます。光が当たり、煙がもくもく。それを見守る人々はシルエットです。無言の時間がけっこう長くとられていて、何やら事件が起こりそうな不穏なムードが一気に盛り上がりました。鵺的『奇想の前提』も面白かったので、寺十さんの演出作はまた観たいですね。
今劇場で「散歩〜」の舞台美術を立て込んでるんですが、大道具制作の人と話してたら関数ドミノも手がけたそうで、あの事故車の作り方聞いて震えた。廃車二台買ってきて、思いっきりぶつけたんだって。豪快。
— 前川知大 (@TomoMaekawa) 2017年10月24日
【#関数ドミノ】高野しのぶさんの「しのぶの演劇レビュー」にて劇評掲載いただきました!
ぜひチェックしてみてください。
明日は休演日となります。11日から東京残り8公演の上演となります。https://t.co/6Mb3qdVgHo pic.twitter.com/rBVldEYxUe— ワタナベ演劇公式 (@watanabe_engeki) 2017年10月9日
≪東京、北九州、大分、福岡、北海道2か所、兵庫≫
出演:瀬戸康史、柄本時生、小島藤子、鈴木裕樹、山田悠介、池岡亮介、八幡みゆき、千葉雅子、勝村政信
脚本:前川知大
演出:寺十吾
美術:原田愛
照明:中川隆一
音響:岩野直人
音楽:坂本弘道
衣裳:髙木阿友子
ヘアメイク:武井優子
演出助手:相田剛志
舞台監督:幸光順平/倉科史典
宣伝美術:山下浩介
宣伝写真:神ノ川智早
宣伝:櫻井麻綾
制作:加藤美秋
制作助手:藤田千賀子
制作デスク:西川陽子
プロデューサー:渡部隆
総合プロデューサー:渡辺ミキ
【発売日】2017/08/05
料金:7,500円(全席指定/税込) 未就学児童入場不可
http://kansu-domino.westage.jp/
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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