新国立劇場演劇・マンスリープロジェクト『おーい、救けてくれ!』06/23(金)18:30、06/25(日)17:00新国立劇場中劇場

 『君が人生の時』を上演中の劇場で観られる、無料のリーディング公演です。無料なのに照明、音響、大道具もそろっていて、いつもながら贅沢です。上演時間は約35分だったような(曖昧です)。6月25日(日) 17:00の回で千秋楽。

 昔、パルコ劇場で観たことがある戯曲です。今回ようやく意味がわかった気がします。

 出演者5人全員が新国立劇場演劇研修所の修了生です!これまでのマンスリー・プロジェクトのリーディング公演で初めてのこと(⇒講座とセットの企画はありました)。少女役の山﨑薫さん以外は『君が人生の時』にも出演中です。

ウィリアム・サローヤン〈1〉わが心高原におーい、救けてくれ! (ハヤカワ演劇文庫)
ウィリアム サローヤン
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 ≪作品解説≫ 公式サイトより
『君が人生の時』の作者、サローヤンの珠玉の一幕劇。1941年、アメリカで初演。人生を肯定する”劇詩人”が描く若者と孤独な少女の交流を描いた、奇跡のようなラブストーリー。
 ≪ここまで≫

 舞台中央に刑務所の鉄格子をおもわせるパネルが1枚建っています。その奥に腰掛け用の小さな四角い箱。左右にイスが2脚ずつ、計4脚。

 人間が人間を殺すための道具(銃)は、やっぱり存在しちゃいけないと思いました。素朴に、そう思えます。

 ここからネタバレします。

 ≪あらすじ≫ 2002年のパルコ劇場の公式サイトより
1908年カリフォルニアに生まれ、『君が人生の時』(The TIme of Your Life)で1940年ピューリッツァー賞を受賞した、ウィリアム・サローヤンのごく短い戯曲。
テキサスの田舎町の刑務所。独房に入れられ、誰にともなく「おーい、救けてくれ!」と叫ぶ若い男に、その刑務所で働く少女が物陰から声をかける。「淋しいの?」若い男は、少女を騙し、何とか脱獄をしようと試みる。世間知らずの少女は面白いように騙されてしまうのだが…。
世界の底からの脱出を夢見る二人の、滑稽で切ない、30分のラブストーリー。
 ≪ここまで≫

 上記には「若い男は、少女を騙し、何とか脱獄をしようと試みる」とありますが、今回の上演では若い男(野坂弘)が少女(山﨑薫)を騙しているようには見えなかったです。男は「君と出会えたこの幸運を生かして、サンフランシスコでギャンブルで勝てば、金持ちになって幸せになれる」と本気で信じているようでした。愚かさが切なさを増す効果になっています。

 婦女暴行の罪で投獄された男。彼は殴られて意識を失っている間に、十数マイル先の町の刑務所に収監されました。刑務所の料理人として働く17歳ぐらいの少女の父親は「背中に傷を負い政府から金をもらっているため」働いておらず、少女の給料を取り上げるダメ男でした。男は片方の靴の中に隠し持っていた80ドル(たぶん)を少女に渡し、「この町を出て行け、サンフランシスコで落ち合おう」と言います。

 男が関係を持った女(女房:二木咲子)とどうやって出会ったかを、女の夫(亭主:坂川慶成)に話す場面で、上手にあるジュークボックスが自動的に光って、音楽を奏でました。『君が人生の時』と重なる演出で良かったです。

 男に頼まれて少女が父親の銃を家に取りに行っている間に、男は亭主に銃で撃たれて死んでしまいました。女房は見知らぬ男を誘惑して家に誘い込み、関係を持った後で金を要求する娼婦まがいのことをしていたのです。亭主はそれがバレるのを恐れていた。女房への愛ゆえに男に立ち向かったのではなく、世間に醜聞が広まるのが嫌だっただけなのです。男にそれを指摘されて、亭主は銃の引き金を3回、引いてしまいました。

 亭主たちは男の遺体を刑務所から引っ張り出して去って行きました。少女はこの町ではないどこかに、行ったのかな。

 男と少女が相思相愛の幸せを謳歌するごくごく短い時間を、もっと華やかに、大っぴらに描いてもいいのではないかと思いました。

出演:山﨑薫 野坂弘 二木咲子 寺内淳志(ト書き) 坂川慶成
作:ウィリアム・サローヤン
演出:宮田慶子
無料、要予約
http://www.nntt.jac.go.jp/play/monthly/
https://formcreator.jp/answer.php?key=B6gdRf8DC2P%2BKg83W3efCQ%3D%3D

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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