『コペンハーゲン』は1998年ロンドン初演、2000年にトニー賞を受賞したマイケル・フレインさんの戯曲で、新国立劇場で2度上演されています(演出:鵜山仁)⇒過去レビュー。今回は小川絵梨子さんが上演台本・演出を手掛けるシス・カンパニーの公演で、段田安則さん、宮沢りえさん、浅野和之さんという豪華キャスト。
上演時間は約2時間10分(途中休憩15分を含む)だったかと…。新国立劇場で観た時より短縮されています。台本がカットされてるんでしょうね。いつもながら有料パンフレット(700円)が充実。載っていた地図でコペンハーゲンの位置、デンマークとドイツの距離などを確認できてとても良かったです。
宮沢りえさんが素晴らしかった!登場した瞬間から引きつけられ、ひとこと発した瞬間に「誰?!」と驚いたほど。声がNODA・MAPなどで観る時と全然違うんですよね~。役人物として舞台に居るからこそ、ですよね。さすがです。
段田安則・宮沢りえ・浅野和之が『コペンハーゲン』で白熱の“演技バトル” | SPICE-エンタメ特化型情報メディア+スパイス https://t.co/QsvXH03MiZ pic.twitter.com/JCxiOjIcu3
— SPICE[舞台情報メディア]/e+ (@spice_stage) 2016年6月4日
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『コペンハーゲン』の戯曲、ハヤカワ演劇文庫で本編がp9 〜p159 、作者あとがきがp161〜p227。あとがきの分量と内容がすごいわ。あとがきのメインは1941年の事とその後の史実について。すっごい読み応えで面白い!莫大な取材と緻密な論考を踏まえての戯曲だって事がよくわかる。
— もえぎ (@moegi0404) 2016年6月21日
⇒CoRich舞台芸術!『コペンハーゲン』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
1941年秋のある日。ドイツの物理学者ハイゼンベルク(段田安則)は、かつて師と仰ぎ、共に研究に従事した デンマーク人の物理学者ボーア(浅野和之)とその妻マルグレーテ(宮沢りえ)に会うために、デンマークの首都 コペンハーゲンを訪れた。コペンハーゲンは、ナチス・ドイツの占領下にあり、ユダヤ系であるボーアはナチスの 監視下にある。また、ナチス・ドイツ政権の下で、原爆開発チーム「ウラン・クラブ」の一員となっていたハイゼンベ ルクにも、当然、自由な行動は許されないのは明らかだ。そんな中で、わざわざボーアを訪ねたハイゼンベルク の真意とは? 連合国に通じているであろうユダヤ系のボーアの動向を探るためなのか? もしくは、ボーアをナチス側に引きこむためなのか? または、ドイツの原爆開発を自ら阻止する思惑か? お互いの真意を探り合うような会話は、現在から、過去の出来事もフラッシュバックのように現われ、そして・・・。
≪ここまで≫
私には珍しく、幕が開く前にパンフレットで予習をしました。3回目だけど完全に忘れてるし…。それが功を奏しました。原子、電子といったミクロの粒子を扱う量子力学では、粒子を観測した結果については語れるけれども、粒子がどうなっているかについては語れない(語らない=沈黙)んですね。観測した瞬間とその前とでは状態が変わっていて、前にどういう状態だったのかがわからないから。「電子はあらゆる場所に同時に存在する」「光子は右と左に同時に進む」なんてこともあるそうです(パンフレット掲載の吉田彩「観測されなかった会話」より)。
ボーアとハイゼンベルクという粒子を、ボーアの妻マルグレーテが観測するという風に観られるので、粒子のありかたと3人の関係を重ねられるのがすごく面白いんですよね。
1941年という時代で、ボーアの母はユダヤ人でハイゼンベルクはドイツ人…というのもスリリング。
ただ、白状しますと、1幕の終盤からうとうとしまいました…。段田安則さんと浅野和之さんが会話して、宮沢さんが見守るだけ(セリフを言わない状態)になると、セリフが届いてこないというか、何を言ってるのかわからなくなって…舞台と私との心の距離が離れてしまうのです。結構がんばったつもりなんですけど…(自分比)。
ここからネタバレします。
ボーアが師匠でハイゼンベルクが弟子です。「2人は親子のような関係だから、俳優の年齢差があった方がいいんじゃないか」と一緒に観劇した友人が言っていて、ちょっと納得でした。浅野さんと段田さんだとほとんど対等に見えるんですよね。
3人はたびたび黙り込んで、沈黙が訪れます。すかがず「沈黙」というセリフが発せられるんですが、私はもうちょっと無言の間が長い方が好みかもしれません。上滑りしていった印象ですね。演技の仕方にもよるんでしょうけど。
シンプルな抽象空間でした。舞台奥中央に向かって上がるほんの数段ほどの階段があり、のぼった先は闇へと続く出入り口です。奥から手前に向かって放射線状に演技スペースが広がり、床面全体の形は三角形。とても細い柱が2本1組で複数個所に建てられて、空間を区切っていました。道具は一人掛けの小さなベンチ型のイスが数脚と、上手奥に、飲み物を置く腰までの高さの棚がある程度です。
下手には、最上部に小さな電球が取り付けられたポールが1本、立っています。簡素なランプ・スタンドですね。電球はちょうど人の頭の高さあたりにあります。ほんのりオレンジ色の光がポっと灯って消えるのが、原子炉に見えたり、ささやかな命の明滅に見えたりしました。ボートから落ちて溺死してしまったボーア夫妻の息子(19歳)の命も想像できました。
今ちょうど読んでいる本(↓)にもボーアとハイゼンベルクが登場し、コペンハーゲンの1日のことも言及されていました。ボーアは人格者でもあったから多くの科学者に慕われていたんですね。
シス・カンパニーの公演は公式サイトの解説も充実してます。いつもありがたいです。
【出演】:段田安則、宮沢りえ、浅野和之
脚本:マイケル・フレイン(Micheal Frayn) 翻訳:小田島恒志 上演台本・演出:小川絵梨子
美術:伊藤雅子
照明:原田保
衣装:前田文子
音響:加藤温
ヘアメイク:宮内宏明
舞台監督:瀬崎将孝
プロデューサー:北村明子
提携:公益財団法人せたがや文化財団・世田谷パブリックシアター
後援:世田谷区
企画・製作:シス・カンパニー
7,800円 トラムシート4,000円(各公演前日19:00まで・先着順)
※小学生未満のお子様はご入場いただけません。
http://www.siscompany.com/copen/
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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