イキウメ『獣の柱』05/14-06/09シアタートラム

 前川知大さんが作・演出される劇団イキウメの再演です(⇒初演レビュー)。再演と言っても脚本は改訂され、出演者も演出も変わってほぼ新作ですね。今月のメルマガでお薦めベスト3としてご紹介していました。

 がっつりSFに気持ちよく浸かり、人類の歴史、未来に思いを馳せる充実の時間でした。自分を絶滅した恐竜と重ねながら…。劇団ってありがたいなとしみじみ感謝。上演時間は約2時間15分、休憩なし。

 ※オーディションの参加者募集中です。6/7〆切(郵送のみ、持参不可)。

写真(左から敬称略):浜田信也、安井順平、村川絵梨(撮影:田中亜紀)
写真(左から敬称略):浜田信也、安井順平、村川絵梨(撮影:田中亜紀)

≪あらすじ≫ http://www.ikiume.jp/kouengaiyou.html
あらゆる都市に降り注いだ巨大な柱。
柱は人々にあきれるほどの祝福を与え、静寂のうちに支配した。世界は大きく変わった_。

ある日、アマチュア天文家の二階堂は、小さな隕石を拾います。
その隕石は、見る者に恐ろしいほどの幸福感をもたらしました。
夢中にし、思考を奪い、自分で目をそらすことはできません。
一人で見たら最後、死んでしまうまで見続けることになるのです。
そして、隕石が落ちた後、空からは巨大な柱が降り注ぎました。
それは人々にあきれるほどの祝福を与え、静寂のうちに人々を支配しました。
柱は人間に何を課し、何から解放したのか_。
≪ここまで≫

 朽ちたビルのような廃墟風の舞台美術で、演技の最中に家具を移動させ、さまざまな時間、場所に転換します。いろんな場所が混在するのは演劇のだいご味ですよね。プロローグの客席との不思議な会話(?)も楽しめました。構造や世界観をしっかりと立ち上げるためか、人物造形はやや類型的な気もしましたが、俳優さんの達者な演技で演劇的仕掛けの妙を積極的に味わえました。

 ここからネタバレします。

 詳しい目のあらすじはこちら: 2001年。隕石を見た人間は幸福を感じて静止状態となり、そのまま放置されると死に至るケースも出てきた。隕石の巨大版である「柱」が世界中に降り注ぎ、次々と地面に突き刺さる。電車、車の衝突や飛行機の墜落など、甚大な事故が多発して街はパニックに。「柱」は人口が多い都市を狙って落ちるようになり、1年後には日本はほぼ壊滅状態となる。2050年には人類は激減し、日本のある地域では、「柱」は「みはしらさま」と呼ばれ、畏れられる存在に。柱を見ても幸福にならず、静止もしない若者が育ち、彼らが新しい世界を築いていく。

 旧態依然の組織や行き過ぎた懐古趣味は良くないと思いながらも、古き良き時代を愛で懐かしむ気持ちも否定する気にはなれないし、複雑な心持ちは常に自分の中に残り続けますね。「柱」が地球から愚かな人類へのメッセージなのだとすると、「幸福な安楽死」は優しく厳しい贈り物かもしれません。やるせないし、悲しいですが、親から子へ、孫へとバトンタッチされていく希望も信じられました。

※舞台写真は主催者よりご提供いただきました。
≪東京都、大阪府≫
出演:浜田信也、安井順平、盛隆二、森下創、大窪人衛、村川絵梨、松岡依都美、薬丸翔、東野絢香、市川しんぺー
脚本・演出:前川知大
[ドラマターグ・舞台監督] 谷澤拓巳 [美術] 土岐研一[照明] 佐藤啓 [音楽] かみむら周平 [音響]青木タクヘイ
[衣裳] 今村あずさ [ヘアメイク] 西川直子 [振付] 下司尚実 [演出助手] 須藤黄英
[宣伝美術] 鈴木成一デザイン室 [Photo] Danila Tkachenko [舞台写真] 田中亜紀
[票券] 宍戸円 [制作部] 坂田厚子 谷澤舞 [プロデューサー] 中島隆裕
[助成] 文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)
公益財団法人セゾン文化財団
[主催] エッチビイ株式会社
提携:公益財団法人せたがや文化財団 世田谷パブリックシアター
後援:世田谷区 TOKYO FM
運営協力:サンライズプロモーション東京
【発売日】2019/03/10 全席指定
一般 5,000円
友の会会員割引 4,700円※1
せたがやアーツカード会員割引 4,900円※2
※1 友の会会員につきましてはこちらをご参照ください。
※2 せたがやアーツカード会員につきましてはHPをご参照ください。
※開演後は本来のお席にご案内できない場合がございます。あらかじめご了承ください。
※未就学児はご入場いただけません。
http://www.ikiume.jp/kouengaiyou.html
https://stage.corich.jp/stage/98932

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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