アン・ラト(unrato)『LULU』02/28-03/10赤坂RED/THEATER

 『チック』(http://shinobutakano.com/2017/08/14/6366/)の翻訳、演出で高く評価された小山ゆうなさんが、ヴェデキント作『ルル』の上演台本と演出を手掛けます。小山さんは2020年7月に新国立劇場演劇部門で演出をされます(同劇場ラインナップ発表会のレポート:http://shinobutakano.com/2019/01/18/11534/)。タイトルロールは霧矢大夢さんです。約2時間15分、15分休憩込み。

 ↓こりっちでカンタン予約!しかし前売り完売でした。チケットぴあにて公演前日23:59まで「公演当日引換券」の販売あり。

≪あらすじ≫ CoRich舞台芸術!(https://stage.corich.jp/stage/96966)より
町で拾った少女ルルを連れ帰り育てたシェーンは、彼女に惹かれながらも官僚の令嬢と婚約し、ルルは老ゴル博士に嫁がせる。
カメラマンのシュヴァルツのスタジオ。若き妻、ルルを撮影させるゴル。シュヴァルツ、シェーンの息子で劇作家のアルヴァ、画家のゲシュヴィッツはルルに出会い、魅了されていく。
ルルはシュヴァルツと愛し合うようになるが、その現場を目撃したゴルは怒りでショック死する。
ルルはシュヴァルツと結婚。しかし、真面目すぎるシュヴァルツに飽き始めるルル。そこへ、ルルの父親を名乗るシゴルヒがやってきて金をせびり、シェーンはルルの過去の秘密を暴露。絶望したシュヴァルツは自殺する。
シェーンは、息子のアルヴァに舞台を書かせ、ルルを踊り子として出演させ成功する。そして、ルルは権力者であるシェーンの妻の座を手に入れる。
だが、奔放な関係を続けるルルに逆上したシェーンはピストルを突きつけ、逆にルルに殺されてしまう。
ルルを求めるゲシュヴィッツは、シェーン殺害の罪で収監されたルルのため、自らルルと入れ代わり救い出す。
逃亡の果てに娼婦となったルルは4人の客をとる。
その4人目の客が切り裂きジャックだった…。
≪ここまで≫

 ヴェデキントのこの有名古典を観るのはたぶん3度目(過去レビュー→12)。少し古風な翻訳のおかげか、台詞を慎重に味わえました。意外なことに会話に飛躍が多く、今も生き残る古典ならではの厚みなのかもとポジティブに捉えられました。突飛なやりとりの背景を演技で埋めて、スムーズな流れを作ってくれていたからだと思います。

 ここからネタバレします。「だ・である調」です。

 サーカスのテントや見世物小屋を思わせるカラフルな電球が舞台額縁を飾る。支配人的な存在(中村彰男)が語り部の役割を果たし、男優が舞台四隅の椅子に座って、舞台を眺めている。複数役を演じる出演者は道具を移動して場面転換要員にもなる。劇中劇でルルの悲劇を俯瞰し、寓話的に見せる趣向は私好みだった。

 綿シャツ、スーツ、モダンなドレス等、いまどきの衣装とデジタルカメラ、ノートパソコンなどの小道具で、古典のファムファタールが現代に降臨する。ルルの衣装が素晴らしい!おそらく霧矢さんが着こなせるからこそのスタイリング。体のラインがはっきりと出る、奇抜な色使いのおしゃれで艶やかなデザインは、ルルの人生の変転も伝えていた。

 ほぼ何もない黒い舞台の奥には、引き戸とそれを覆う白いカーテン。カーテンは映像が映し出されてスクリーンにもなる。ルルたちの旅(逃避行)の道程が動画で説明されたのはわかりやすかった。
 可動式の黒色の大きな円形の山車はテーブルになり、人が乗ったり寝たりできる台にもなる。お立ち台のイメージも担う。

 下手にキーボード、打楽器などの生演奏(女性一人)あり。隣席の知人が言っていたのだが、私も少々、デジタルな音が耳についた。劇場に響く効果音も、俳優がたまにマイクを使ってしゃべる声も、当然だが人工的な機械音の風合いが強い。LED照明も然り。舞台上の俳優たちとまだ噛み合っていないのかもしれない。

 ルルに魅せられた男たちは次々に破滅していくが、霧矢さん演じるルルはあくまでも自分の望みに忠実な、素直で率直な人物のようで、女性ならではの性的な魅力を振りまいているようには見えなかった。男性たちが勝手に彼女を妖艶な女性だと決めつけ、それを彼女に強いたのだと解釈できる気がする。その意味では、全体的に男優の演技が物足りなかった。奴らは欲望丸出しで、無防備かつ乱暴に彼女に近づき、散々むさぼった末に、裏切られたと被害者面をして、身勝手に捨て去る(ジャック・ザ・リッパー以外)。それをむき出しにして欲しかった。そうすれば、私は彼らをあわれに思い、もっと愛せた気がする。

 型を演じるあまり(説明を重視しすぎて)、感情やその場の反応に真実味を感じづらいことがあった。いい声で台詞を言うことに腐心し過ぎて、あまり臨場感が感じられない俳優がいた。たとえばルルに夢中な振りをしたり、彼女に裏切られて落ち込んでいるように装ったり、芝居を俯瞰する態度でしか居られなかったり。
 役柄を自分で作り出して、その人物として舞台に立ち、相手役や空間と交流することを最優先にしながら、客席にも意識を開いた状態で、作品を俯瞰する視線も持ち続ける…そんな演技を観たいと思っている。

【出演】
霧矢大夢:ルル
広瀬彰勇:シェーン(編集長)/ジャック
多田直人:シュヴァルツ(カメラマン)/ロドリーゴ(軽業師)/ヒルティ(大学講師)
山本匠馬:アルヴァ(シェーンの息子、劇作家)
紫城るい:マルタ・ゲシュヴィッツ(伯爵令嬢)
霜山多加志:ゴル(医科部長)/フニダイ
中村彰男:シゴルヒ/猛獣使い/カスティ=ビアーニ(公爵)/クンク=ポンティ(某国の皇太子)
【作】 フランク・ヴェデキント
【翻訳】 楠山正雄
【上演台本・演出】 小山ゆうな
ドラマトゥルク:丸山達也
音楽:松田眞樹
美術:乘峯雅寛
照明:松本大介
音響:尾崎弘征
映像:神之門隆広
衣裳:早川和美
ヘアメイク:国府田圭
振付:前田清美
演出助手:藤嶋恵
舞台監督:齋藤英明
宣伝デザイン:吉田電話
宣伝写真:宮田浩史
制作:筒井未来
プロデュース:田窪桜子
企画・製作:アイオーン/unrato
一般¥7800(プレビュー¥6500) 学生¥5000
※2/28・3/1はプレビュー公演 ※未就学児童入場不可
http://ae-on.co.jp/unrato/2018/11/27/%E9%9C%A7%E7%9F%A2%E5%A4%A7%E5%A4%A2%E4%B8%BB%E6%BC%94%E3%80%8Elulu%E3%80%8F%E4%B8%8A%E6%BC%94%E6%B1%BA%E5%AE%9A%EF%BC%81/

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