【写真レポート】東京芸術劇場「野田秀樹を囲む記者懇談会「東京演劇道場」オーディション/ワークショップのご報告」01/25東京芸術劇場地下2階リハーサルルームL

 野田秀樹さんが芸術監督をつとめる東京芸術劇場は昨年、次世代の役者・芝居人のための修行の場「東京演劇道場」への参加者を公募しました(⇒告知エントリー)。

 野田さんがその経過と今後について、記者の質問に答えてくださいました。8歳から70代までの約1700人から応募があり、書類審査と5日間のワークショップを経て60名が選ばれたそうです。

野田秀樹さん
野田秀樹さん

 “道場”という名称に指針がはっきりと示されています。“学校”や“駆け込み寺”ではないわけですね。公立の劇場が基本的に無料で俳優の鍛錬の場を提供する試みであり、継続の方針もあって、喜ばしく思いました。

 以下に、野田さんのご発言をまとめました。

●オーディションの結果

 年齢、経験不問のオーディションに北は北海道から南は沖縄まで、約1700人(内訳:男性600人、女性1100人)の応募があり、その年齢幅は8歳~70代後半でした。まずは第一次審査(書類選考)で300人に絞られました。5日間のワークショップ・オーディションで第二次審査、第三次審査が行われ、60人が選ばれたそうです。合格した道場生60人の内訳は男性28名、女性32名、年齢幅は18歳~49歳とのこと。

 野田:(こんなにも多くの)迷える羊(役者)たちがいるんだと思った。5日間、念入りにワークショップをしたが、役者の真価は簡単にわかるものではないので、予定より多くなった。年齢に関係なく取ったが、30代が中心で20代も多い。NODA・MAPのアンサンブルの人も入っている。異分野のプロからの応募もあり、演出家も数名受かった。

●オーディションの内容

 野田:オーディションでは自分が若い頃に書いた戯曲のテキストを使った。NODA・MAPのアンサンブルのオーディションの内容は、知っている人がいるから、同じことはやらなかった(笑)。

 野田:色んな意見が欲しいので、オーディションにはノゾエ征爾さん、柴幸男さん、熊林弘高さん、黒田育世さん、井手茂太さん、近藤良平さん(発言順)にも見てもらった。最終的には自分の責任で選んだけれど、熊林さんの強い薦めで取った人は、今、東京キャラバンで活躍してくれている。人の意見は大切にしようと思った(笑)。

 野田:(今の俳優は)批評性を失っていることが多い。批評性は表現するのに一番大切なもの。言葉を3つ出して、それを批評精神をもって表現してもらった。たとえばマヨネーズ、マーガリン、友情等の言葉を「批判的に語れ」と。言葉でも身体でもいい。
 俳句を持ってきてもらって、「5~6人でその俳句を表現しろ」というのもやった。NODA・MAPのアンサンブル用のワークもした。今後もやっていく。

 野田:何をやっても面白い人は面白いし、つまらない人はつまらなくて、見ていて退屈。こちらが思いがけないものを拾ってくれたら、いいなと思う。ノゾエさんと熊林さんは自分とは違うところで引っ掛かってたみたいだけど(笑)。ただ、「この人がいい」という意見は、だいたい揃う。「イメージを共有する」という演劇の基本的な方法を使うのは、どんな演出家も同じ。

●「東京演劇道場」の今後

野田秀樹さん
野田秀樹さん

 野田:「東京演劇道場」(以下「道場」)は演劇のプラットフォームに、出会う場所に、なって欲しい。国内外の演出家を呼ぶことは約束した。出会う場として提供していきたい。「道場」に集う人が出会い、創作が始まってもいい。基本的にワークショップは無料。でも演出家によっては有料になる場合もあるかもしれない。

 野田:今年は3月に4日間ほどワークショップをやることが決まっていて、午前と午後に分けて30人ずつ参加できる。でもそれぞれに仕事もあるだろうから、来られる人だけ来ればいい。多い目に取ったので、全員が常に参加できるわけではない。自ずと能力次第になっていくと思う。いつまで在籍できるか等は決まっていない。

 野田:ワークショップは年に3回はやりたいと思うが、ワークショップをやるだけでは先がないので、来年か再来年を目指して、芝居を打てる形を作っていければいいなと思っている。道場生は自分たちでだけでやれるクオリティーを持っている人たちだから、場所だけ確保して使ってもらうこともある。出会って、作って、そこから生まれてくることが大事。演出家は私一人ではない。

 野田:「道場」では自分の若い時の作品を使おうかなと思っている。身体性と非常につながっている作品が多いから。若い人たちにはそれがいい気がする。(今の若い人の演劇は)全体的に日常会話の芝居が多い印象がある。演劇には肉体を使うものもあるんだよと(伝えたい)。

 野田:(創作する際は)ある程度の共通の方法、言葉を持っていないとダメなので、作品作りとは別にワークショップもやっておかなければいけない。僕のやり方だけが全てじゃないから、他の演出家の方法も取り入れると思う。

 野田:オーディションにはけっこうなエネルギーが要るので、毎年開催は難しいかもしれない。でも「道場」なのだから道場生は入れ変わっていかないとダメ。これから何度も重ねていきたい。

 野田:「道場」という名前はデザイナー(佐野研二郎さん)の提案だった。教える人のことは「師範」「師範代」と呼ぶかもしれない(笑)。「道場破り」という制度も作ろうかな(笑)。座学をやるかどうかは決まっていない。面白い人がいるならやるかも。

 以上です。
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