ホリプロ/TBS/東宝/WOWOW『ミュージカル「生きる」』10/08-10/28赤坂ACTシアター

 黒澤明監督の映画「生きる」が新作ミュージカルに。演出は宮本亜門さん、脚本・作詞は高橋知伽江さん、作曲&編曲はジェイソン・ハウランドさんです。上演時間は約2時間15分、途中休憩20分を含む。

生きる[東宝DVD名作セレクション]
東宝 (2015-02-18)
売り上げランキング: 803

 
 「いったい、どんなミュージカルに…??」と恐る恐る観に行きましたところ、気楽に鑑賞できて、シンプルに感動させられました!ストンと終わるラストが特に素晴らしい♪ 私が拝見したのは鹿賀丈史さん主演版です。

 カーテンコールでは宮本亜門さん、高橋知伽江さん、ジェイソン・ハウランドさんが舞台上で挨拶されました。今日の指揮はジェイソンさんでした。

≪あらすじ≫ 公式サイトより
役所の市民課の課長・渡辺勘治は、早くに妻を亡くし、男手一つで息子の光男を育てあげ、息子夫婦と同居している。

そんなある日、渡辺に胃がんが見つかり、自分の人生が残りわずかであることを知る。疎遠になりつつある光男にそのことを打ち明けられない渡辺は、自らの生涯を振り返り、意味あることを何一つ成し遂げていないことに気づき愕然とする。

現実逃避のため、大金をおろして夜の街に出るも、金の使い道がわからない。彼は30年間真面目一筋を貫き、自分の金で酒を飲んだことすらなかったのだ。そんな時、居酒屋で売れない小説家に出会う。渡辺の境遇に興味を持った彼は、“人生の楽しみを教えてやろう”と宣言し、盛り場を二人で何軒もはしごする。しかし渡辺の心は一向に晴れず、虚しさばかりが募る。

翌日、役所の後輩・小田切とよが渡辺の元を訪ねる。渡辺は、はつらつとしたとよの初々しさに触れるうちに、自分の人生になかったものを見出すようになる。そしてついに、わずかな余生でなすべきことを、見つけるのであった・・・。
≪ここまで≫

 不勉強ながら原作映画は未見です。またミュージカルも門外漢で専門的なことは全くわからないのですが、音楽が聴きやすく、物語もメッセージも明瞭で、死期の迫ったある老人の人生を通じて「生きる」ことのど真ん中を描いていたと思います。

 公職者と警察とヤクザの癒着、大っぴらな汚職、手柄の横取り、世間の心無い噂、父子の不理解などの暗い側面だけでなく、夢を叶えるために声を上げ、行動を起こすことの大切さ、小さな声が社会に変化を及ぼす喜びなども、今に通じるものだと感じました。

劇場外壁の巨大ポスター
劇場外壁の巨大ポスター

 ここからネタバレします。

 役所を辞めた若い女性・とよに影響されて、勘治が新しい人生を生きると決心する展開には、素直に感動しました。
 助役とヤクザが悪だくみをしている料亭にまで勘治が入り込んだのには笑いました。トボけてていい!
 勘治と小説家の暗躍で、「公園が欲しい」という主婦たちの望みが叶うのも嬉しいですね。現政権に対しては、どんなに声を上げても無視され、過ちをうやむやにされることが多いと感じているので、余計にまぶしく見えます。

 父・勘治の葬儀の後、息子の光男は小説家に連れられて、公園に行きます。ブランコには父の幻影が。ブランコの椅子に残された父の帽子に、光男が手を伸ばしたところで終幕。余計な説明なしに、絵で示したのが鮮やかでした。

 映画のテーマ曲「ゴンドラの唄(歌詞:いのち短し恋せよ乙女~)」が全体とマッチしていました。

黒澤明 没後20年記念作品 ダイワハウス presents ミュージカル「生きる」
【出演】渡辺勘治(ダブルキャスト):市村正親、渡辺勘治(ダブルキャスト):鹿賀丈史、渡辺光男:市原隼人、小説家(鹿賀出演回):新納慎也、小説家(市村出演回):小西遼生、小田切とよ(市村出演回)&渡辺一枝(鹿賀出演回):May’n、小田切とよ(鹿賀出演回)&渡辺一枝(市村出演回):唯月ふうか、助役:山西惇
川口竜也(ヤクザの組長など)、佐藤誓(冒頭に登場する慢性胃炎の患者など)、重田千穂子(主婦など)、治田敦 松原剛志 上野聖太 高原紳輔 俵和也 原慎一郎 森山大輔 安福毅 飯野めぐみ あべこ 彩橋みゆ 五十嵐可絵 可知寛子 河合篤子 森加織 森実友紀
原作:黒澤明監督作品「生きる」
作曲&編曲:ジェイソン・ハウランド
脚本・歌詞:高橋知伽江
演出:宮本亜門
美術:二村周作 照明:佐藤啓 音響:山本浩一 衣裳:宮本まさ江 ヘアメイク:小沼みどり 映像:上田大樹 振付:宮本亜門 前田清美 米島史子 音楽監督補:鎮守めぐみ 指揮:砂本典子 歌唱指導:安崎求 殺陣:西村陽一 翻訳:鈴木小百合 通訳:鈴木なお 演出助手:伴・眞里子 舞台監督:加藤高
S席13,000円/A席9,000円/B席4,000円 U-25(25歳以下当日引換券)¥6,500(全席指定・税込)
プレビュー公演:S席12,000円/A席8,000円/B席3,000円
http://www.ikiru-musical.com/
http://hpot.jp/stage/ikiru2018
http://www.tbs.co.jp/act/event/ikiru2018/
https://stage.corich.jp/stage/94192

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガ↓も発行しております♪

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台

   

バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ