KAAT神奈川芸術劇場『キャサリン・ウィールズ劇団(スコットランド)「ホワイト WHITE」』08/07-09神奈川芸術劇場・大スタジオ

 「KAATキッズ・プログラム2018」をようやく1作品、拝見できました。スコットランドのキャサリン・ウィールズ劇団による『ホワイト WHITE』です。素晴らしかった~!(たぶん一人で)ダダ泣きしちゃってた!!

 『キッズ・サマー・パーティー』は子ども連れじゃないので行けず、『不思議の国のアリス』も『ニュー オーナー ー幸せを探してー NEW OWNER』も公演期間中に関東に居なかったので観られなかったのです…(涙)。↓新作『グレーテルとヘンゼル』は8/18から始まります。

≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
まっしろな世界は夢いっぱい!

スコットランドを代表する児童青少年演劇の創作団体、キャサリン・ウィールズ劇団。1999年に芸術監督ジル・ロバートソンによって設立されて以来、27のオリジナル作品を発表し、23カ国で公演を行っています。『ホワイト WHITE』はそんな彼らの作品の中でも最もツアーを重ねている代表作です。

 鳥の歌とおうちでいっぱいの「ホワイト」の美しく不思議な世界へようこそ。夜にはキラキラと光ります。鳥の世話をして、卵を守る2人の友だち。世界は明るく、秩序があって、白い。ただ、木の上の上の方ではすべてが白いわけではないようで。色が現れる。始めは赤、そして黄色、そして青……。
≪ここまで≫

 荷物と靴を預けて、柔らかで優しい印象の白一色の空間に入り、ベンチシートに腰掛けます。全体のデザインは乙女チック、森ガール系、ドリーミー…といった感じでしょうか。板付きの若い男優は、ここは誰も危害を加えない/与えられない、安全で安心していい場所なのだと、子どもたちにわからせる演技をしていました。

 2016年の相模原障害者施設殺傷事件(津久井やまゆり園で19名が殺害された大量殺人事件)について、神奈川県が発信しているメッセージに呼応する内容で、素直に、感動しました。KAATという神奈川県立劇場の仕事に心から感謝します。

20180808_white2

 「津久井やまゆり園事件 この悲しみを力に、ともに生きる社会を実現します

 ともに生きる社会 かながわ憲章

 一 私たちは、あたたかい心をもって、すべての人のいのちを大切にします
 一 私たちは、誰もがその人らしく暮らすことのできる地域社会を実現します
 一 私たちは、障がい者の社会への参加を妨げるあらゆる壁、いかなる偏見や差別も排除します
 一 私たちは、この憲章の実現に向けて、県民総ぐるみで取り組みます

 平成28年10月14日 神奈川県」

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。英語上演、字幕なしでした。

 周囲を白い幕で囲まれた舞台には木製の可愛らしい鳥かごがたくさん。白い衣装に身を包んだおじいさんと若者の男優2人は、こまめに掃除をしています。空から降ってくる白い卵の世話をするのが彼らの日課のようです。卵は女の子、男の子、双子など。すると、赤い卵が降ってきた!

 厳格なおじいさんに従って、若者はいつもどおり、色のついたものを捨てるゴミ箱に赤い卵をポイします。でも彼は皆がお昼寝している間に、こっそり赤い卵を救い出して、空いている鳥かごに入れました。「僕が面倒みるから安心して!」と語り掛けると、赤い卵は風変わりな声で鳴きます。鳴き声も白い卵たちとは違うんですね。

 やがて空間の中にある道具が色づき始めます。ホウキは青、牛乳(?)は水色、帽子は緑、紫など。赤い卵が画一的だった世界に影響を及ぼしているんですね。戸惑い、怒りの表情さえ浮かべるおじいさんに対して、若者は「僕は赤が大好きなんだ」と告白します。

劇場1階の大きなディスプレイに表示されるポスター
劇場1階の大きなディスプレイに表示されるポスター

 キャサリン・ウィールズ劇団はスコットランドが拠点です。題名および空間の白(ホワイト)は「白人」とも解釈可能です。赤い卵の鳥かごは外側も内側も真っ赤になり、白い卵が入っている鳥かごも、開いてみると内側がピンク、緑、黄色などに変わっていました。外見が白でも中身はカラフルかもしれませんよね、人間がそうであるように。

 若者に続き、おじいさんもおそるおそる「実は私は、オレンジ色が大好きなんだ!」とカミングアウトし(笑)、「アイ・ラブ・カラー!」と多様性を謳歌するラストを迎えます。ゴミ箱からカラフルな紙吹雪が吹き出して、客席に舞いました。男優2人と客席の子供たちが紙吹雪で自由に遊んで終幕。

 人種、性差などについて考えなくても、英語がわからなくても、演技と表情で意味が伝わるので、子供たちは大いに楽しんでいるようでした。小学校低学年以下の子供たちに合っているように思いますが、大人の私もボロ泣きしましたので(笑)、親子はもちろん、大人にもオススメです。

降ってきた紙吹雪
降ってきた紙吹雪

≪福岡、神奈川≫
KAATキッズ・プログラム2018
出演:キャサリン・ウィールズ劇団【スコットランド(イギリス)】
作:アンディ・マンレー 演出:ジル・ロバートソン
主催:KAAT神奈川芸術劇場
後援:神奈川県教育委員会 横浜市教育委員会
一般:2018年05月26日(土)
(全席自由・税込) 
おとな(中学生以上)2500円
こども(2歳以上小学生以下)1,000円
おやこ(おとな1名+こども1名)3,000円
http://www.kaat.jp/d/white

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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